先日、マイクロソフトのセミナーに挨拶を依頼され、おうかがいしました。セミナーでは実に面白いお話を聞くことができました。話をされたのは内田和成先生です。内田先生はボストンコンサルティンググループ(BCG)の元日本代表、現在はシニアヴァイスプレジデントを務めています。経営コンサルタントのほかに、早稲田大学大学院商学研究科などの大学で講師として活躍されております。
内田さんは「異業種格闘技」というものについて話しました。異業種格闘技とは、異なる事業構造を持つ企業が異なるルールで同じ顧客ないし市場を奪い合う競争を意味するそうです。既存のプレーヤーに対する新規参入者については、大前研一さんのアタッカー企業や一橋大学教授の竹内弘高先生のグリーン・ フィールド・コンペティターなどが知られています。
内田さんは異業種格闘技について、銀行を例にして説明しました。最近の学生は新生銀行に口座を開設し、セブン&アイ・ホールディングスのセブン銀行でお金を引き出す人が多いといいます。セブン銀行は流通業からの新規参入者です。既存の企業から遠く離れた業種から参入しました。この点を内田さんは指摘します。
ところで、新生銀行やセブン銀行の魅力はどこにあるのでしょうか。学生はATMで引き出す金額が1千円から5千円くらいの少額の場合が多いのです。したがって、たとえ105円でも学生にとって手数料は大きな金額となります。学生にとって、新生銀行を使うのはリーズナブルな行為なのです。
他方、セブン銀行はコンビニエンスストアなどにATMを設置しているので、街中のいろいろな場所でお金を引き出すことができます。コンビニでお金を引き出して、同じ店で買い物をする。銀行ATMと消費の場所が一体化しているといえます。しかも、いつでもあいているので、利用者からすると非常に便利です。
セブン銀行は通常の銀行のような、預金者から調達した資金を企業に貸し付けて、その利ざやで稼ぐというモデルを採っていません。利用者がお金を引き出すときの、手数料が利益の源になっています。たとえ、一回の手数料が少額でも店舗数が多いので、大きな手数料収入になります。
その一方で、2007年10月にイオン銀行が開業しました。ショッピングセンターでのATM設置だけでなく、スタッフが対面で応対するサービスも展開するようです。サービス業で培ったノウハウは銀行のサービスには負けない。イオン銀行は対面などのサービスで勝負したいと言っているそうです。セブン銀行とイオン銀行、同じ流通業界からも、全く異なるビジネスモデルとコンペティティブ・エッジを持って参入をしています。内田さんは自分の業界にも照らして考えてみることをすすめていました。(岩崎 卓也)
2008/07/26
2008/07/22
ポイント制のメリット、デメリット
経営者の多くは、従業員の失敗に対してパニッシュしない組織が望ましいと言います。私もその考えに賛成です。しかし、実現には人事評価制度について工夫が必要です。少なくとも、減点評価は適さないでしょう。前回、私はこちらのブログで、従業員の評価はポイント制にしたらどうか、という話を書きました。ポイント制は加点評価の最たるものです。加えて、ラジオ体操のハンコのような手軽さもあります。カードがハンコで一杯になったら褒美がもらえる点も、評価結果と報酬の関係をわかりやすくしています。
しかしながら、ポイント制を実施するにあたり2つ注意点があります。一つはポイント制には部門特性の問題が出てくるのです。企業の中にはルーチンワークに従事している部署があります。ここでは目の前のことをミスしないで、時間内に効率よく進めていくことが大切になります。すると、加点よりも減点のほうが評価しやすくなります。例えば、ハンバーガーショップで、マニュアル通りに作業をしている人に対して、ハンバーガーを一つ作る毎に「良くできた」と声をかけ、ハンコを押すのはおかしなことでしょう。むしろ、遅刻した、服装が汚い、手洗いを怠ったなど、減点する要素のほうが目に付きやすいのです。ルーチンワークは褒めるのが難しく、パニッシュのチャンスが多くなります。
もう一つはハンコが少ない人に対する処遇をどうするのか、という問題があります。生産現場ではとかく、しっかりと仕事する人としない人に分かれがちです。優秀な人はたくさんハンコがもらえてうれしいものです。しかし、たいして仕事をしない人も必ず出ます。カードにハンコが埋まっていかない人を、そのまま放置しても良いのか。放置したとしても、ハンコが少ない人なりに考え、ハンコをたくさんもらおうとして気働きをするようになるのか。処遇をどうするのか、意見が分かれるところです。評価方法はいろいろあります。が、いずれにしろ、評価は絶対評価にならないのです。ポイント制も相対評価の域を出ず、ベストとは言えないかもしれません。それでも、褒めたことが形に残る点など、現行制度と比べるとベターなのではないかと思います。(岩崎 卓也)
しかしながら、ポイント制を実施するにあたり2つ注意点があります。一つはポイント制には部門特性の問題が出てくるのです。企業の中にはルーチンワークに従事している部署があります。ここでは目の前のことをミスしないで、時間内に効率よく進めていくことが大切になります。すると、加点よりも減点のほうが評価しやすくなります。例えば、ハンバーガーショップで、マニュアル通りに作業をしている人に対して、ハンバーガーを一つ作る毎に「良くできた」と声をかけ、ハンコを押すのはおかしなことでしょう。むしろ、遅刻した、服装が汚い、手洗いを怠ったなど、減点する要素のほうが目に付きやすいのです。ルーチンワークは褒めるのが難しく、パニッシュのチャンスが多くなります。
もう一つはハンコが少ない人に対する処遇をどうするのか、という問題があります。生産現場ではとかく、しっかりと仕事する人としない人に分かれがちです。優秀な人はたくさんハンコがもらえてうれしいものです。しかし、たいして仕事をしない人も必ず出ます。カードにハンコが埋まっていかない人を、そのまま放置しても良いのか。放置したとしても、ハンコが少ない人なりに考え、ハンコをたくさんもらおうとして気働きをするようになるのか。処遇をどうするのか、意見が分かれるところです。評価方法はいろいろあります。が、いずれにしろ、評価は絶対評価にならないのです。ポイント制も相対評価の域を出ず、ベストとは言えないかもしれません。それでも、褒めたことが形に残る点など、現行制度と比べるとベターなのではないかと思います。(岩崎 卓也)
2008/07/19
関係が上手くいく人は
アメリカにはユニークな心理学者がいるものです。ジョン・M・ゴットマンという人は家庭内の人間関係について研究している学者です。35年間、何千組もの夫婦を調べ、科学的な分析を重ねてきました。夫婦はどうしたら長続きして、どのような夫婦が離婚するのかを調査しているのです。HBR誌のシニア・エディターがゴットマン氏にインタビューしました。今号、2008年8月号「パートナーシップの心理学」という記事がそうです。
ゴットマン氏が何年も使っているテストに「ペーパー・タワー・タスク」というものがあります。これは対象となる夫婦に紙やセロハンテープなどを渡して、紙の塔を協力して作ってもらうのです。長続きする夫婦は短時間でペーパー・タワーをこしらえてしまうそうです。逆に、幸福な結婚生活を送っていない夫婦は時間がかかるといいます。
ゴットマン氏は職場の人間関係と夫婦関係は違うと言います。とはいえ、このインタビュー記事を読む限り、ゴットマン氏の研究は職場の人間関係にも応用できることがわかります。良好な人間関係を築くには「イエス」という言葉が大切です。以前、今号の『オンラインRPGは「協働する組織」の実験場』という論文の解説でも書きましたが、すぐその場でその行為に対してポジティブな評価をすることが大事なのです。職場でも夫婦でも、何かあったら、その場で褒めることが大切なのです。ゴットマン氏は塩が入った瓶にたとえ、瓶に「イエス」という言葉をたくさん詰めておき、塩を振るように、できる限り「イエス」を示すのだといいます。
随分前のことになりますが、人事制度をどう改定したらよいか、という意見を求められたことがあります。そのとき、従業員の評価はポイント制にしたらどうかと提案しました。仕事上でよいことをしたら、ハンコが一個もらえるのです。一定のポイトンがたまると、何かもらえます。ポイントは積み上げていくわけだから、全部が加点評価になります。ゴットマン氏は同じことを言っています。あなたのパートナーに、イエス、イエスと、ことあるごとに言いなさい。加点評価をすすめています。
ただし、言葉は心に残りますが、形には残りません。100回褒めてもらったけど職場での評価はCだった、ということがあります。どんなに褒めてもらっても、結果がA評価になるとは限りません。ハンコは100個押してもらったら、必ず何かもらえるのです。褒める、ポイントをもらうというのはプロセスです。言葉とハンコ、どちらがフェアなプロセスなのかといえば、言葉よりもハンコの数のほうだと思うのです。夫婦ならば、言葉によって褒めてもよいでしょう。が、職場で同じ加点評価をするなら、ポイント制の方がよいのではないか、などと思いながら論文を読みました。(岩崎 卓也)
▽2008年8月号のご注文はこちらからできます
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690808
ゴットマン氏が何年も使っているテストに「ペーパー・タワー・タスク」というものがあります。これは対象となる夫婦に紙やセロハンテープなどを渡して、紙の塔を協力して作ってもらうのです。長続きする夫婦は短時間でペーパー・タワーをこしらえてしまうそうです。逆に、幸福な結婚生活を送っていない夫婦は時間がかかるといいます。
ゴットマン氏は職場の人間関係と夫婦関係は違うと言います。とはいえ、このインタビュー記事を読む限り、ゴットマン氏の研究は職場の人間関係にも応用できることがわかります。良好な人間関係を築くには「イエス」という言葉が大切です。以前、今号の『オンラインRPGは「協働する組織」の実験場』という論文の解説でも書きましたが、すぐその場でその行為に対してポジティブな評価をすることが大事なのです。職場でも夫婦でも、何かあったら、その場で褒めることが大切なのです。ゴットマン氏は塩が入った瓶にたとえ、瓶に「イエス」という言葉をたくさん詰めておき、塩を振るように、できる限り「イエス」を示すのだといいます。
随分前のことになりますが、人事制度をどう改定したらよいか、という意見を求められたことがあります。そのとき、従業員の評価はポイント制にしたらどうかと提案しました。仕事上でよいことをしたら、ハンコが一個もらえるのです。一定のポイトンがたまると、何かもらえます。ポイントは積み上げていくわけだから、全部が加点評価になります。ゴットマン氏は同じことを言っています。あなたのパートナーに、イエス、イエスと、ことあるごとに言いなさい。加点評価をすすめています。
ただし、言葉は心に残りますが、形には残りません。100回褒めてもらったけど職場での評価はCだった、ということがあります。どんなに褒めてもらっても、結果がA評価になるとは限りません。ハンコは100個押してもらったら、必ず何かもらえるのです。褒める、ポイントをもらうというのはプロセスです。言葉とハンコ、どちらがフェアなプロセスなのかといえば、言葉よりもハンコの数のほうだと思うのです。夫婦ならば、言葉によって褒めてもよいでしょう。が、職場で同じ加点評価をするなら、ポイント制の方がよいのではないか、などと思いながら論文を読みました。(岩崎 卓也)
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2008/07/16
スポーツの理論とビジネス
ビジネスをスポーツにたとえて解説する人がいます。話を聞いていて、違和感をおぼえることがありませんか。ビジネスとスポーツには異なる部分があります。両者を同じように語っても、あてはまらない部分が出てしまいます。
種目によりますが、スポーツは個人の力が具体的に見えます。キーとなるプレーヤーが肝心な場面で満塁ホームランを打ったから勝てたというように、決定打というものがあります。が、ビジネスでは個人による決定打はあまりありません。
人事面でも、スポーツチームと企業とは異なります。社員にはプロスポーツ選手のような、シーズンごとの契約見直しが必要だという意見があります。要するに、「実力のない者は去れ」という考えをする人がいるのです。もちろん、この考え方が適している組織もあります。が、従業員を辞めさせないという、今の日本の組織は生物学的に見ても良くできていると私は思います。
ダメだと言われている人を遊ばせておきながら進める。これは必ずしも悪いことだとは言えません。細胞組織の何パーセントかは何もしない細胞でできています。身体の組織が正常に保っているのは、その何もしない細胞があるからだといわれています。全員が優秀な選手である必要はないのです。バスケットでは、精鋭ばかりを集めたドリームチームで戦っても、必ずしも上手く行くとは限りません。野球も同じです。4番バッター、スター選手だけでチームを作っても、優勝できないでしょう。
スポーツのたとえ話はわかりやすい。が、スポーツの本質はビジネスとは違うのです。ゲームも同じです。現実世界のビジネスは失敗した後、容易にリセットできないことが多いし、人は敵に攻撃されたら痛みを感じます。今号、2008年8月号の『オンラインRPGは「協働する組織」の実験場』という論文を前回こちらのブログで紹介しました。この論文は非常に面白かったのですが、私は全部を信じることはできないと伝えたのは、このような理由からです。この論文は従業員のトレーニングとして、協力のあり方をビジュアルに見せるという点では意味があると思います。が、ゲームの考え方をすべてビジネスに応用できるわけではありません。
執筆者の一人、トーマス・マローン教授はMITのスローン・スクール・オブ・マネジメントの教授です。余談になりますが、彼の息子さんは「週刊少年ジャンプ」で連載している『NARUTO -ナルト-』のファンだといいます。
マローン教授が来日したとき、あるパーティでご一緒したことがあります。乾杯の挨拶でマローン教授は、息子さんがナルトの情報交換をするために、つたない翻訳機にかけて、日本語で日本人とコミュニケーションをとっている、と言っていました。来日の際には秋葉原で買い物をしたそうです。そのおかげで今、秋葉原に一番詳しいアメリカ人は自分ではないか、とジョークを言っていました。この論文の依頼者がIBMということに加え、息子さんがナルトファンだということで、マローン教授はゲームに興味を抱いたのではないか。私はそのように思いました。(岩崎 卓也)
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種目によりますが、スポーツは個人の力が具体的に見えます。キーとなるプレーヤーが肝心な場面で満塁ホームランを打ったから勝てたというように、決定打というものがあります。が、ビジネスでは個人による決定打はあまりありません。
人事面でも、スポーツチームと企業とは異なります。社員にはプロスポーツ選手のような、シーズンごとの契約見直しが必要だという意見があります。要するに、「実力のない者は去れ」という考えをする人がいるのです。もちろん、この考え方が適している組織もあります。が、従業員を辞めさせないという、今の日本の組織は生物学的に見ても良くできていると私は思います。
ダメだと言われている人を遊ばせておきながら進める。これは必ずしも悪いことだとは言えません。細胞組織の何パーセントかは何もしない細胞でできています。身体の組織が正常に保っているのは、その何もしない細胞があるからだといわれています。全員が優秀な選手である必要はないのです。バスケットでは、精鋭ばかりを集めたドリームチームで戦っても、必ずしも上手く行くとは限りません。野球も同じです。4番バッター、スター選手だけでチームを作っても、優勝できないでしょう。
スポーツのたとえ話はわかりやすい。が、スポーツの本質はビジネスとは違うのです。ゲームも同じです。現実世界のビジネスは失敗した後、容易にリセットできないことが多いし、人は敵に攻撃されたら痛みを感じます。今号、2008年8月号の『オンラインRPGは「協働する組織」の実験場』という論文を前回こちらのブログで紹介しました。この論文は非常に面白かったのですが、私は全部を信じることはできないと伝えたのは、このような理由からです。この論文は従業員のトレーニングとして、協力のあり方をビジュアルに見せるという点では意味があると思います。が、ゲームの考え方をすべてビジネスに応用できるわけではありません。
執筆者の一人、トーマス・マローン教授はMITのスローン・スクール・オブ・マネジメントの教授です。余談になりますが、彼の息子さんは「週刊少年ジャンプ」で連載している『NARUTO -ナルト-』のファンだといいます。
マローン教授が来日したとき、あるパーティでご一緒したことがあります。乾杯の挨拶でマローン教授は、息子さんがナルトの情報交換をするために、つたない翻訳機にかけて、日本語で日本人とコミュニケーションをとっている、と言っていました。来日の際には秋葉原で買い物をしたそうです。そのおかげで今、秋葉原に一番詳しいアメリカ人は自分ではないか、とジョークを言っていました。この論文の依頼者がIBMということに加え、息子さんがナルトファンだということで、マローン教授はゲームに興味を抱いたのではないか。私はそのように思いました。(岩崎 卓也)
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2008/07/12
ゲームの世界での協働
今号、2008年8月号には『オンラインRPGは「協働する組織」の実験場』という論文を掲載しました。オンラインRPG(role-playing gameロールプレイングゲーム)には、全世界からコンピュータネットワークを介して何人もの人が集まります。参加者同士でパーティを組み、冒険、戦闘などの試練を乗り越え、目的の達成を目指します。オンラインRPGの世界では、理想のコラボレーションが実現しているといいます。
この論文は面白いです。しかし、全部をそのまま納得するのには疑問符がつきます。論文の執筆者もオンラインRPGはファンタジーの世界だということは承知しており、〈ゲームだからといって、頭から馬鹿にしないで欲しい〉と前置きしています。
とはいえ、この論文が提示するロジックはきちんと成り立っています。オンラインRPGには、リアルの世界とは違う独特の環境があります。それにより、リーダーシップ、インセンティブ、リスク・テイキングなどの面で、理想のコラボレーションが実現できる。これは近未来のビジネス環境のワーク・スタイルを垣間見ることになる、といいます。
具体的にいうと、オンラインRPGでは今まで誰とも付き合ったことのない人たちとパーティを組むので、「あ、うん」が通じません。チームのメンバーは自分の持っているスキルと相手のスキルをお互いに認めあわないと、バトルが上手く行かない環境におかれます。この場合、人によって得意技が違います。ので、オンラインRPGでは比較的たやすく状況に応じてリーダーが変わるようなこともあります。しかも、リーダーはみんなから選ばれるのではなくて、自然発生的に出てくるのです。
インセンティブの与え方についても、現実の会社とは違います。リーダーはバトルが終わった瞬間に褒美を上手く分けます。剣、薬などのアイテムやお金が仕事に応じて配分されるわけです。昔から心理学で言われていますが、褒めることが大事なのではなくて、すぐその場でその行為に対してポジティブな評価をすることが大事なのです。
しかし、企業では、少なくとも半年くらい経ってからでないと報酬に反映されないのが一般的です。組織ではポジティブな評価を有形なもの、特に金銭的なもので、すぐにあげるわけには行きません。できないから、褒めるという形で代替しています。オンラインRPGでは、いい仕事をすれば、その場でアイテムがもらえます。確かに、理想的です。なるほどと思いました。
この論文はリアルな世界に役に立つものです。が、「企業文化があれば」という条件がつきます。環境が整っていなければ、いくらツールを入れても効果は低いでしょう。そこをこの論文ではごまかしています。この論文は面白いけれど、全部納得できないと冒頭で申し上げたのはそのごまかしているように見える部分があるからなのです。(岩崎 卓也)
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この論文は面白いです。しかし、全部をそのまま納得するのには疑問符がつきます。論文の執筆者もオンラインRPGはファンタジーの世界だということは承知しており、〈ゲームだからといって、頭から馬鹿にしないで欲しい〉と前置きしています。
とはいえ、この論文が提示するロジックはきちんと成り立っています。オンラインRPGには、リアルの世界とは違う独特の環境があります。それにより、リーダーシップ、インセンティブ、リスク・テイキングなどの面で、理想のコラボレーションが実現できる。これは近未来のビジネス環境のワーク・スタイルを垣間見ることになる、といいます。
具体的にいうと、オンラインRPGでは今まで誰とも付き合ったことのない人たちとパーティを組むので、「あ、うん」が通じません。チームのメンバーは自分の持っているスキルと相手のスキルをお互いに認めあわないと、バトルが上手く行かない環境におかれます。この場合、人によって得意技が違います。ので、オンラインRPGでは比較的たやすく状況に応じてリーダーが変わるようなこともあります。しかも、リーダーはみんなから選ばれるのではなくて、自然発生的に出てくるのです。
インセンティブの与え方についても、現実の会社とは違います。リーダーはバトルが終わった瞬間に褒美を上手く分けます。剣、薬などのアイテムやお金が仕事に応じて配分されるわけです。昔から心理学で言われていますが、褒めることが大事なのではなくて、すぐその場でその行為に対してポジティブな評価をすることが大事なのです。
しかし、企業では、少なくとも半年くらい経ってからでないと報酬に反映されないのが一般的です。組織ではポジティブな評価を有形なもの、特に金銭的なもので、すぐにあげるわけには行きません。できないから、褒めるという形で代替しています。オンラインRPGでは、いい仕事をすれば、その場でアイテムがもらえます。確かに、理想的です。なるほどと思いました。
この論文はリアルな世界に役に立つものです。が、「企業文化があれば」という条件がつきます。環境が整っていなければ、いくらツールを入れても効果は低いでしょう。そこをこの論文ではごまかしています。この論文は面白いけれど、全部納得できないと冒頭で申し上げたのはそのごまかしているように見える部分があるからなのです。(岩崎 卓也)
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2008/07/09
ブルー・オーシャン戦略におけるフェア・プロセス
次号、2008年8月号に「フェア・プロセス:協力と信頼の源泉」という論文を掲載します。執筆したのはブルー・オーシャン戦略のチャン・キム教授とレネ・モボルニュ教授のおふたりです。この論文は1997年に書かれたもので、その頃はまだブルー・オーシャン戦略はありませんでした。
この論文はどうしたら人は協力するようになるのかを調査したものです。この内容を鵜呑みにすれば、人はフェアなプロセスを経た結論であるならば、たとえ自分の意に沿わないものでも、拒否することはないそうです。程度はあるが甘んじて受け入れるのだといいます。
では、どのようなものがフェアなプロセスになるのでしょうか。この論文では「エンゲージメント」が重要だとしています。エンゲージメントというのは、日本語に訳しづらいのですが、約束といってもいいし、参加の奨励といってもいい。ようするに、コミュニケーションをしっかりすることが重要だということです。この論文を読み進めていくと、フェアプロセスは手間がかかることだというのがわかります。したがって、企業ではおざなりに、そして中途半端にされがちなことだといえます。
フェアプロセスをどう実行するか、これが課題です。わが身を振り返っても、相手に対して上手く説明できないこともありました。ものごとは常に表と裏があって、アンビバレンスです。何が間違っているのか、なぜこちらのほうがいいのか。一つのことを語るにも何通りもの言い方があり、何通りもの解釈が成り立ちます。厳密に突き詰めていくと、どちらかの妥協が必要になるのだと思います。
この妥協することへの納得感は年齢と経験によって違います。私はこの論文を読んで思ったのは、妥協することにインセンティブが必要なのではないかということです。どんなにフェアなプロセスを踏んでも、物事は一元的では解決できません。どうしても多元的になる。したがって、平行線をたどることもあれば、どこかで妥協して受け入れさせる場面が出てくることもあります。結論を納得するにはギブアンドテイクというか、何らかのインセンティブが必要なのではないかと思いました。
ただし、この論文ではどうしたらいいのかというところまで書いてありません。そこまで教えてくれたら、より良い論文になるのになぁ、と思いました。
補足になりますが、このフェアプロセスというのは、ブルー・オーシャン・ストラテジーにおいても、大事なツールです。フェアプロセスは民主主義ではありません。アイデアの一番いいものに対して、個人ではなく組織、あるいはチームがコミットメントを傾けるためのツールなのです。ブルー・オーシャン戦略は最終的には他部門の人などが協力して新製品開発をする過程に至ります。部門の代表者が出てきて利害調整をしている現状があります。しかし、この調整をするからイノベーションが生まれてこないのであって、フェアプロセスを入れることで利害を脇におくことができます。
この論文を読んで、ブルー・オーシャン戦略はよく設計されていると改めて思いました。(岩崎 卓也)
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▽ご注文はこちら
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690808
この論文はどうしたら人は協力するようになるのかを調査したものです。この内容を鵜呑みにすれば、人はフェアなプロセスを経た結論であるならば、たとえ自分の意に沿わないものでも、拒否することはないそうです。程度はあるが甘んじて受け入れるのだといいます。
では、どのようなものがフェアなプロセスになるのでしょうか。この論文では「エンゲージメント」が重要だとしています。エンゲージメントというのは、日本語に訳しづらいのですが、約束といってもいいし、参加の奨励といってもいい。ようするに、コミュニケーションをしっかりすることが重要だということです。この論文を読み進めていくと、フェアプロセスは手間がかかることだというのがわかります。したがって、企業ではおざなりに、そして中途半端にされがちなことだといえます。
フェアプロセスをどう実行するか、これが課題です。わが身を振り返っても、相手に対して上手く説明できないこともありました。ものごとは常に表と裏があって、アンビバレンスです。何が間違っているのか、なぜこちらのほうがいいのか。一つのことを語るにも何通りもの言い方があり、何通りもの解釈が成り立ちます。厳密に突き詰めていくと、どちらかの妥協が必要になるのだと思います。
この妥協することへの納得感は年齢と経験によって違います。私はこの論文を読んで思ったのは、妥協することにインセンティブが必要なのではないかということです。どんなにフェアなプロセスを踏んでも、物事は一元的では解決できません。どうしても多元的になる。したがって、平行線をたどることもあれば、どこかで妥協して受け入れさせる場面が出てくることもあります。結論を納得するにはギブアンドテイクというか、何らかのインセンティブが必要なのではないかと思いました。
ただし、この論文ではどうしたらいいのかというところまで書いてありません。そこまで教えてくれたら、より良い論文になるのになぁ、と思いました。
補足になりますが、このフェアプロセスというのは、ブルー・オーシャン・ストラテジーにおいても、大事なツールです。フェアプロセスは民主主義ではありません。アイデアの一番いいものに対して、個人ではなく組織、あるいはチームがコミットメントを傾けるためのツールなのです。ブルー・オーシャン戦略は最終的には他部門の人などが協力して新製品開発をする過程に至ります。部門の代表者が出てきて利害調整をしている現状があります。しかし、この調整をするからイノベーションが生まれてこないのであって、フェアプロセスを入れることで利害を脇におくことができます。
この論文を読んで、ブルー・オーシャン戦略はよく設計されていると改めて思いました。(岩崎 卓也)
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2008/07/05
協力の難しさ
次号、2008年8月号は「協力する組織」というコンセプトで特集を組みます。協力はさまざまな言葉で表現されてきました。たとえば、コラボレーション、チームワーク、そのほか、クロスファンクショナルチームなどがあります。なぜ協力するのか。協力は現状を改革するようなアイデア、技術、オペーレーションにつながるところに意味があると思います。つまり、組織として成長していくために、一人の力よりも多人数の智恵が集まったほうが良いということです。
最近、集団的知性(Collective Intelligence、集合知)を使った取り組みを耳にします。ハリウッドではどの映画が当たるのか、専門家と一般の人たちを比較して予測するようなことがあるそうです。
N(母数)を多くしていく中で、もっと良いアイデアが出てくるのではないかと考える人もいます。協力に関する研究はありますが、まだ結果は多く出ていません。ビジネス雑誌、書籍でも協力をテーマにしたものは数として少ないといっていいでしょう。次号のように協力を大きく取り上げることは意外とチャレンジングだったと思っています。
協力はことのほか難しい。中間管理職以上の方の中には、実感されている人が多いと思います。理由はたくさんあります。
もともと、企業はアダム・スミスのピンの製造の話に始まるように、分業で成り立っています。ピラミッド組織の上に向かって、出世をしていく形になります。ふるいにかけられていくわけですから、成功した場合、誰が成功したのかということが話に出てきます。皆はチームのおかげです、と言いますが、誰かが最終的な褒美にあずかるのです。そのチームが社内で勝って優位に立つということは、誰かが劣位に立つことになります。部門間の協力が必要だとはいえ、見えざる敵を助することになると、他部門との協力は難しくなります。
また、組織の中で、相性の問題はそんなに昔ほど今は重要な要素ではないと思いますが、そういうこともあります。
これまで、企業は協力の難しさに対して、逃げてきたのではないでしょうか。目的の前にチームメンバーは皆平等なんだ、職位も経験も関係ない、と言いながらごまかしていた部分があると思います。自由にアイデアを話し合って、優れたアイデアを採用していく。わかりやすいのですが、現実にはそのプロセスを作るのはむずかしいのです。
当たり前のことですが、ビジネスの世界はエンピリカルとシチュエーショナルです。経験があるということは大きなパワーになります。社内でも一セクションで物事が解決するわけではないので、社内的な交渉力も必要になってきます。そういったときに、経験の浅い人が自由に発言ができたとしても、採用される可能性は相対的には低くなってしまいます。協力をすることは本当に難しい。総論賛成で、各論の部分でぶつかり合うテーマだと思います。その中で、次号では協力することをテーマにした論文をいくつか紹介します。(岩崎 卓也)
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2008年8月号は7月10日(木)発売予定です。
最近、集団的知性(Collective Intelligence、集合知)を使った取り組みを耳にします。ハリウッドではどの映画が当たるのか、専門家と一般の人たちを比較して予測するようなことがあるそうです。
N(母数)を多くしていく中で、もっと良いアイデアが出てくるのではないかと考える人もいます。協力に関する研究はありますが、まだ結果は多く出ていません。ビジネス雑誌、書籍でも協力をテーマにしたものは数として少ないといっていいでしょう。次号のように協力を大きく取り上げることは意外とチャレンジングだったと思っています。
協力はことのほか難しい。中間管理職以上の方の中には、実感されている人が多いと思います。理由はたくさんあります。
もともと、企業はアダム・スミスのピンの製造の話に始まるように、分業で成り立っています。ピラミッド組織の上に向かって、出世をしていく形になります。ふるいにかけられていくわけですから、成功した場合、誰が成功したのかということが話に出てきます。皆はチームのおかげです、と言いますが、誰かが最終的な褒美にあずかるのです。そのチームが社内で勝って優位に立つということは、誰かが劣位に立つことになります。部門間の協力が必要だとはいえ、見えざる敵を助することになると、他部門との協力は難しくなります。
また、組織の中で、相性の問題はそんなに昔ほど今は重要な要素ではないと思いますが、そういうこともあります。
これまで、企業は協力の難しさに対して、逃げてきたのではないでしょうか。目的の前にチームメンバーは皆平等なんだ、職位も経験も関係ない、と言いながらごまかしていた部分があると思います。自由にアイデアを話し合って、優れたアイデアを採用していく。わかりやすいのですが、現実にはそのプロセスを作るのはむずかしいのです。
当たり前のことですが、ビジネスの世界はエンピリカルとシチュエーショナルです。経験があるということは大きなパワーになります。社内でも一セクションで物事が解決するわけではないので、社内的な交渉力も必要になってきます。そういったときに、経験の浅い人が自由に発言ができたとしても、採用される可能性は相対的には低くなってしまいます。協力をすることは本当に難しい。総論賛成で、各論の部分でぶつかり合うテーマだと思います。その中で、次号では協力することをテーマにした論文をいくつか紹介します。(岩崎 卓也)
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2008年8月号は7月10日(木)発売予定です。
2008/07/02
脳科学は面白い
前回、ソニーCSLのシンポジウムで講演したソニー社長 中鉢さんについて書きました。このシンポジウムでは、ほかにソニーCSLに所属する北野宏明氏、茂木健一郎氏などがパネルディスカッションに登場しました。
北野宏明さんは弊社刊行『したたかな生命』(共著)の著者でもあります。なかでも印象に残ったのは、製薬業界の話です。現在、製薬メーカーの多くは新薬開発にかかる投資を2倍に増やしているといいます。他方、新薬開発で創薬が生まれるのは1/2になったそうです。1/4、効率が悪くなっているのです。
製薬業界には2010年問題があります。大型医薬品の特許が切れ、医薬品メーカーの利益が減ってしまうと懸念されています。しかも、R&Dの回収率が悪くなったという現状があります。今、CSLでは創薬をLinuxのようなオープンイノベーションの形で開発しようと取り組んでいるといいます。全く新しい開発のスタイルを試みているようです。
茂木健一郎さんも登場しました。茂木さんの話も面白かったです。鏡に映る自分の姿を自分だと認識できるかどうか。もちろん、人間はできます。が、イヌやネコはできません。多くの動物の中で、自分だと認識できる動物はそんなに多くないそうです。脳科学は面白いですね。できれば、いつかDHBRでも脳に関する特集を組みたいと思いました。
話は変わりますが、脳の話といえば、2008年3月号に「一流人材のつくり方」という論文があります。この論文では、「女性はチェスが弱い」という説を覆すことになる実験をしています。女性は空間把握ができないから地図が読めない、チェスで勝てないなどと言う人がいます。この論文では、執筆者が自分の娘にチェスを徹底的に教え込みました。その結果、娘は3人とも女性チェス・プレーヤー世界ランキングで10位以内に入ったといいます。男女で脳は違うといわれています。が、本当はそんなに大きく変わらないのかもしれない。私はこの論文を読んでそう感じました。(岩崎 卓也)
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▽バックナンバー 「DHBR」2008年3月号はこちらから
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北野宏明さんは弊社刊行『したたかな生命』(共著)の著者でもあります。なかでも印象に残ったのは、製薬業界の話です。現在、製薬メーカーの多くは新薬開発にかかる投資を2倍に増やしているといいます。他方、新薬開発で創薬が生まれるのは1/2になったそうです。1/4、効率が悪くなっているのです。
製薬業界には2010年問題があります。大型医薬品の特許が切れ、医薬品メーカーの利益が減ってしまうと懸念されています。しかも、R&Dの回収率が悪くなったという現状があります。今、CSLでは創薬をLinuxのようなオープンイノベーションの形で開発しようと取り組んでいるといいます。全く新しい開発のスタイルを試みているようです。
茂木健一郎さんも登場しました。茂木さんの話も面白かったです。鏡に映る自分の姿を自分だと認識できるかどうか。もちろん、人間はできます。が、イヌやネコはできません。多くの動物の中で、自分だと認識できる動物はそんなに多くないそうです。脳科学は面白いですね。できれば、いつかDHBRでも脳に関する特集を組みたいと思いました。
話は変わりますが、脳の話といえば、2008年3月号に「一流人材のつくり方」という論文があります。この論文では、「女性はチェスが弱い」という説を覆すことになる実験をしています。女性は空間把握ができないから地図が読めない、チェスで勝てないなどと言う人がいます。この論文では、執筆者が自分の娘にチェスを徹底的に教え込みました。その結果、娘は3人とも女性チェス・プレーヤー世界ランキングで10位以内に入ったといいます。男女で脳は違うといわれています。が、本当はそんなに大きく変わらないのかもしれない。私はこの論文を読んでそう感じました。(岩崎 卓也)
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2008/06/28
ソニー社長 中鉢氏の意外な一面
先日、ソニーコンピュータサイエンス研究所(Sony CSL)の創立20周年記念シンポジウムに行きました。CSLはコンピュータサイエンスに関する研究を行う場として1988年2月に設立されました。所長は元慶應義塾大学教授の所 眞理雄氏です。
シンポジウムではソニーの社長 中鉢良治氏が1時間ほど講演しました。私は中鉢さんの講演を聞くのは初めてです。非常に面白い方だと感じました。
講演では学生の頃の話がありました。第一次石油ショックの頃、中鉢さんは東北大学大学院の学生で、工学研究科博士課程にいました。当時は学生運動が盛んで、マル経が流行っていたのです。今でいう産学連携なんてけしからんと言われていました。学を企業という資本主義の手先が汚すとはなにごとだ、という時代だったのです。
私は中鉢氏が何を話すのか、興味深く聞いていました。彼は修士のときに結婚したといいます。しばらく、奥さんのご実家に住んでいたそうです。
「今だから、言いますけど、いやでいやでしょうがなかったんですよ」
早く家を出たいと思っていた。そんな中、博士号を取りソニーに内定が決まりました。ソニーなら横浜に工場がある。これで仙台から抜けられる。わくわくして入社しました。ところが、言い渡された配属先は仙台です。しかも、同期では中鉢さん一人だけでした。なぜ、自分だけが仙台に残らなくてはならないのだ? 実は、担当教授が「中鉢君はまだ若いし、これから物入りだし。じっくり研究させてあげたいから、自宅から通ったほうがいいだろうと」
教授はソニーの人事部長と旧知の知り合いだったので、言ったようです。
「この時、私は産学連携は良くないと思いました」
などと、冗談めいて言っていました。もちろん、産学連携が悪いと言っているわけではありません。講演では産官学連携の重要性をアピールしていました。が、そのときは「やられた」と思ったそうです。
そのほか、朝日新聞の夕刊に出ていた夏目漱石の話などが続きます。結局、最後の5分になり、
「随分時間がおしてまいりましたが、今日の本題です」
と言うではないですか。そこで初めて「21世紀の科学と技術」という講演のテーマが出てきました。中鉢さんは思いのほか、面白い人でチャーミングな人だなって思いました。これが私の6月に得た大きな収穫です。(岩崎 卓也)
シンポジウムではソニーの社長 中鉢良治氏が1時間ほど講演しました。私は中鉢さんの講演を聞くのは初めてです。非常に面白い方だと感じました。
講演では学生の頃の話がありました。第一次石油ショックの頃、中鉢さんは東北大学大学院の学生で、工学研究科博士課程にいました。当時は学生運動が盛んで、マル経が流行っていたのです。今でいう産学連携なんてけしからんと言われていました。学を企業という資本主義の手先が汚すとはなにごとだ、という時代だったのです。
私は中鉢氏が何を話すのか、興味深く聞いていました。彼は修士のときに結婚したといいます。しばらく、奥さんのご実家に住んでいたそうです。
「今だから、言いますけど、いやでいやでしょうがなかったんですよ」
早く家を出たいと思っていた。そんな中、博士号を取りソニーに内定が決まりました。ソニーなら横浜に工場がある。これで仙台から抜けられる。わくわくして入社しました。ところが、言い渡された配属先は仙台です。しかも、同期では中鉢さん一人だけでした。なぜ、自分だけが仙台に残らなくてはならないのだ? 実は、担当教授が「中鉢君はまだ若いし、これから物入りだし。じっくり研究させてあげたいから、自宅から通ったほうがいいだろうと」
教授はソニーの人事部長と旧知の知り合いだったので、言ったようです。
「この時、私は産学連携は良くないと思いました」
などと、冗談めいて言っていました。もちろん、産学連携が悪いと言っているわけではありません。講演では産官学連携の重要性をアピールしていました。が、そのときは「やられた」と思ったそうです。
そのほか、朝日新聞の夕刊に出ていた夏目漱石の話などが続きます。結局、最後の5分になり、
「随分時間がおしてまいりましたが、今日の本題です」
と言うではないですか。そこで初めて「21世紀の科学と技術」という講演のテーマが出てきました。中鉢さんは思いのほか、面白い人でチャーミングな人だなって思いました。これが私の6月に得た大きな収穫です。(岩崎 卓也)
2008/06/25
軽い商品と重い商品を量る単位の違い
戦略や組織を考えるにあたり、人事施策から考えることは正しいとは言えません。とはいえ、固有名詞によって事業の成否が決まる側面はあることも事実です。新規事業を始めようとするとき、リーダーが誰かによって、「上手くいく」「いや、心配だ」、などと言われることがあります。組織は事業の特性に合わせて作っていくべきです。が、範囲の経済が働くよう、事業が何であれ、一律にあてはめようとするケースを目にすることがあります。範囲の経済、制度の効率を上げていくための人事施策をやっている限り、ビジネスは成長しないのではないでしょうか。
新日鉄では一時期半導体を製造していました。半導体の製造部門、鋼鉄の製造部門、二つの組織が同じ会社の中に存在していることになります。物ごとをトン当たりで見ている組織と、半導体のようにグラムで見ている組織が共存しているのです。トンとグラムでは設備が違います。利益率も異なります。求められている知識、スキル、人脈も関係者のロビー活動の方向性も全部違います。両者が並存し、給与体系、福利厚生、人事もみんな同じにするのはありえないことです。
それでも、一律に当てはめようとしてしまうものです。半導体は技術の最先端を行く物です。ライフサイクルは短い。その市場に、鉄鋼という既存の制度を流用し当てはめてしまう。トンの世界で作られた制度をグラムの世界に持っていくのには無理があります。柔軟に変えていく努力をしないと成長はないのでしょう。ただ、実行しようと思っても、就職というより就社という価値観が残っている組織ですと、難しい物があります。適材適所の人事制度と、それに合わせた給与体系に変えていくことが必要です。ただ、どう折り合いを付けていくのかは大変なことなのだと思います。(岩崎 卓也)
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▽一冊からお求めになれます。2008年7月号(6月10日発売)
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新日鉄では一時期半導体を製造していました。半導体の製造部門、鋼鉄の製造部門、二つの組織が同じ会社の中に存在していることになります。物ごとをトン当たりで見ている組織と、半導体のようにグラムで見ている組織が共存しているのです。トンとグラムでは設備が違います。利益率も異なります。求められている知識、スキル、人脈も関係者のロビー活動の方向性も全部違います。両者が並存し、給与体系、福利厚生、人事もみんな同じにするのはありえないことです。
それでも、一律に当てはめようとしてしまうものです。半導体は技術の最先端を行く物です。ライフサイクルは短い。その市場に、鉄鋼という既存の制度を流用し当てはめてしまう。トンの世界で作られた制度をグラムの世界に持っていくのには無理があります。柔軟に変えていく努力をしないと成長はないのでしょう。ただ、実行しようと思っても、就職というより就社という価値観が残っている組織ですと、難しい物があります。適材適所の人事制度と、それに合わせた給与体系に変えていくことが必要です。ただ、どう折り合いを付けていくのかは大変なことなのだと思います。(岩崎 卓也)
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2008/06/20
チャンスは大変さを厭わない会社の上に
トムソンコーポレーションという巨大メディア企業があります。2007年にロイター通信を買収した会社です。子会社にトムソンファイナンシャルという金融関係の会社があります。主な事業内容はトレーダーやファンドマネジャー、金融機関の各職向けの情報サービスの提供です。ライバルはブルームバーグなどです。
2008年7月号では「B2Cの手法でB2B事業を伸ばす」という論文で、トムソンを紹介しています。B2Cの手法でB2B事業を伸ばすためのバリュー・プロポジションを開発した話が掲載されています。トムソンのサービスはB2Cのように思えますが、最終的に利用料を支払っているのは企業ですからB2B事業になります。トムソンは金融情報事業の会社です。他の事業者からすると、トムソンの事例は参考にならないように思われるかもしれません。しかし、この論文は素晴らしいことを言っています。
トムソンはどのようにして、B2B事業を伸ばしたのでしょうか。それは、従来の常識的なセグメンテーションをやめたところに、新しい収益の機会を見出しました。一般のビジネス書や雑誌では、セグメンテーションは顧客別、チャネル別、地域別というのがもっぱらです。コトラーの本では、セングメンテーションは地理的セグメンテーション、人口統計的セグメンテーションのほか、ライフスタイルやロイヤルティなども要因として示しています。が、トムソンはエンドユーザーのところに行き、エンドユーザー別のセグメンテーションを導入しました。
消費材を売っているP&Gなどは、お客様=エンドユーザーです。キッチンなどを調査することで、自社製品がどのように使われているか、把握しやすいといえます。それでも、メーカーにとって、エンドユーザーを把握することはたやすくありません。
トムソンはエンドユーザーがどのように自社商品である情報を利用しているのか、わかりませんでした。そこで、徹底調査し、細かいセグメンテーションによって分けるようにしました。この論文では、ファンドマネジャーの仕事を例にあげています。ファンドマネジャーの行動を、「調査と分析」「トレーディング前」「トレーディング」……、という行動に分けるのです。すると、それぞれの中で、違うニーズが出てくるというものです。詳細は本論にゆずりましょう。
営業の現場で、顧客別、売上別という従来のセグメンテーションを越えて、アクティビティ(行動)別に見る。これをエンドユーザーに対して実施するのは非常に困難なことでしょう。しかし、これから先、大変な時代が来ようとしているのであって、大変な作業を厭わない企業が利益のチャンスを見出せるようになるのでしょう。この論文で紹介されているトムソンがいい例だと思うのです。(岩崎 卓也)
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▽一冊からお求めになれます。2008年7月号(6月10日発売)
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2008年7月号では「B2Cの手法でB2B事業を伸ばす」という論文で、トムソンを紹介しています。B2Cの手法でB2B事業を伸ばすためのバリュー・プロポジションを開発した話が掲載されています。トムソンのサービスはB2Cのように思えますが、最終的に利用料を支払っているのは企業ですからB2B事業になります。トムソンは金融情報事業の会社です。他の事業者からすると、トムソンの事例は参考にならないように思われるかもしれません。しかし、この論文は素晴らしいことを言っています。
トムソンはどのようにして、B2B事業を伸ばしたのでしょうか。それは、従来の常識的なセグメンテーションをやめたところに、新しい収益の機会を見出しました。一般のビジネス書や雑誌では、セグメンテーションは顧客別、チャネル別、地域別というのがもっぱらです。コトラーの本では、セングメンテーションは地理的セグメンテーション、人口統計的セグメンテーションのほか、ライフスタイルやロイヤルティなども要因として示しています。が、トムソンはエンドユーザーのところに行き、エンドユーザー別のセグメンテーションを導入しました。
消費材を売っているP&Gなどは、お客様=エンドユーザーです。キッチンなどを調査することで、自社製品がどのように使われているか、把握しやすいといえます。それでも、メーカーにとって、エンドユーザーを把握することはたやすくありません。
トムソンはエンドユーザーがどのように自社商品である情報を利用しているのか、わかりませんでした。そこで、徹底調査し、細かいセグメンテーションによって分けるようにしました。この論文では、ファンドマネジャーの仕事を例にあげています。ファンドマネジャーの行動を、「調査と分析」「トレーディング前」「トレーディング」……、という行動に分けるのです。すると、それぞれの中で、違うニーズが出てくるというものです。詳細は本論にゆずりましょう。
営業の現場で、顧客別、売上別という従来のセグメンテーションを越えて、アクティビティ(行動)別に見る。これをエンドユーザーに対して実施するのは非常に困難なことでしょう。しかし、これから先、大変な時代が来ようとしているのであって、大変な作業を厭わない企業が利益のチャンスを見出せるようになるのでしょう。この論文で紹介されているトムソンがいい例だと思うのです。(岩崎 卓也)
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2008/06/17
中国ミドル市場を制する者が世界を制す
企業が成長をどこに求めるかといったとき、大きな市場に行くのが一般的でした。あるいは、成長の可能性が高いと言われている市場に進出しようとも考えます。今、中国ではミドル市場が急成長しています。中国市場は今後どうなっていくのでしょうか。市場は品質、価格などにより、ハイエンド、ミドルエンド、ローエンドに分けることができます。2008年7月号の「中国ミドル市場を制する者が世界を制す」では、中国はミドルエンド市場が狙い目だといっています。ここを制する企業がグローバルになるというのです。なぜでしょうか。
この論文ではミドル市場のことを「グッドイナフ・セグメント」と呼んでいます。グッドイナフとは「ここで充分いける」といった意味合いがあります。中国の市場は外資がハイエンドを攻めて、内資である中国の企業はローエンドに行きました。それはしかたのないことです。中国は市場における歴史が浅いから、テクノロジーも人材もない。ローエンドに行くしかなかったのです。ところが、最近の中国は低価格でありながらハイエンドに近い品質と技術力を提供できるまでに成長してきました。内資がミドルエンド市場に格上げしたともいえます。ハイアールやレノボなどの中国企業がジャンプアップして、メインプレーヤーになりつつあるのです。
中国、内資が主要プレーヤーになる前の段階で叩いておかねばいけないという考えもあります。これは、日本のかつてアメリカ市場に進出したときと、重なるところがあります。当時、アメリカの自動車メーカーはミドルとハイエンドを占めていました。日本はミドル市場に入りシェアを広げたのです。そして、アメリカ市場で無視できない存在に育っていったという歴史があります。そのときの日本企業には教訓がありません。なぜなら勝者でしたから。勝ったことによる教訓はあるけれど、負けたことで学ぶ次に勝つための教訓がないのです。
この論文では、中国をただの生産拠点とするのではなく、一つのマーケットとして見ようと考えているのです。この部分は非常に大事です。これはインドにもいえるのではないでしょうか。インドはまだ物流の制約などがありますが、いずれは解消されていく中でインドにおいても、中国と同じことが言えると思います。日本は今のところ中国でも、インドでも、ハイエンドに入り込んでいるはずです。しかし、ハイエンドにずっと居続けるわけに行かないのです。中長期的にはミドルエンド市場、ここをどういう形で攻めていくのか。すでに、考えている企業もあるとは思いますが、忘れてはいけない点なのです。(岩崎 卓也)
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この論文ではミドル市場のことを「グッドイナフ・セグメント」と呼んでいます。グッドイナフとは「ここで充分いける」といった意味合いがあります。中国の市場は外資がハイエンドを攻めて、内資である中国の企業はローエンドに行きました。それはしかたのないことです。中国は市場における歴史が浅いから、テクノロジーも人材もない。ローエンドに行くしかなかったのです。ところが、最近の中国は低価格でありながらハイエンドに近い品質と技術力を提供できるまでに成長してきました。内資がミドルエンド市場に格上げしたともいえます。ハイアールやレノボなどの中国企業がジャンプアップして、メインプレーヤーになりつつあるのです。
中国、内資が主要プレーヤーになる前の段階で叩いておかねばいけないという考えもあります。これは、日本のかつてアメリカ市場に進出したときと、重なるところがあります。当時、アメリカの自動車メーカーはミドルとハイエンドを占めていました。日本はミドル市場に入りシェアを広げたのです。そして、アメリカ市場で無視できない存在に育っていったという歴史があります。そのときの日本企業には教訓がありません。なぜなら勝者でしたから。勝ったことによる教訓はあるけれど、負けたことで学ぶ次に勝つための教訓がないのです。
この論文では、中国をただの生産拠点とするのではなく、一つのマーケットとして見ようと考えているのです。この部分は非常に大事です。これはインドにもいえるのではないでしょうか。インドはまだ物流の制約などがありますが、いずれは解消されていく中でインドにおいても、中国と同じことが言えると思います。日本は今のところ中国でも、インドでも、ハイエンドに入り込んでいるはずです。しかし、ハイエンドにずっと居続けるわけに行かないのです。中長期的にはミドルエンド市場、ここをどういう形で攻めていくのか。すでに、考えている企業もあるとは思いますが、忘れてはいけない点なのです。(岩崎 卓也)
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2008/06/14
成長余力を残したコア事業の見切り
前回、ストール・ポイント(成長の壁)について解説しました。今月号の「売上げが止まる時」では、売上げを増やしてきた企業の多くはストール・ポイントにあたり、減収に転じていることが書かれています。その原因の一つには、「成長余力を残したコア事業の見切り」があります。事業の見切りをどのようにつけるのか。関係者が自身の経験と知識を持ち寄り、無手勝流に取り組んでも結果は見えています。事実に基づく的確な診断がなければ良い結果は出ません。
今号、2008年7月号の「業績改善の事業診断法」、「過当競争市場のポジショニング戦略」は、「成長余力を残したコア事業の見切り」に関連した論文です。消費材メーカーとして優秀だといわれているP&Gは、新商品などを通して常に新たな消費製品を提供して、シュリンクさせないようにしています。その結果、常に右肩をあがりで来ているのです。「もうだめだと」思っても、まだまだ成長の余力があるのか。それとも、見切りをつけたほうがいいのか。どう見極めるのかがこの2つの論文のテーマです。具体的で、役に立つ内容になっています。
「業績改善の事業診断法」では、業績改善の体系的な方法を紹介しています。「経験曲線」「ABC」(活動基準原価計算)、「ROA/RMSチャート」「SNAPチャート」「NPS」(推奨者の正味比率)、「プロフィット・プール・マップ」「モデルTチャート」「RAPIDモデル」などのツールを紹介しています。
「過当競争市場のポジショニング戦略」は、タイトルどおりポジショニングに関する論文です。競争が厳しい市場ではポジションを体系的に分析するツールが必要です。「価格/便益ポジショニング(PBP)・マップ」というものをこの論文では紹介しています。これは価格と便益の関係に基づいてポジショニング戦略を立案できるツールです。携帯電話のモトローラの事例などをもとに具体的な解説があります。携帯電話市場、中型車市場などのPBPマッピングが載せられており、わかりやすい内容になっています。(岩崎 卓也)
今号、2008年7月号の「業績改善の事業診断法」、「過当競争市場のポジショニング戦略」は、「成長余力を残したコア事業の見切り」に関連した論文です。消費材メーカーとして優秀だといわれているP&Gは、新商品などを通して常に新たな消費製品を提供して、シュリンクさせないようにしています。その結果、常に右肩をあがりで来ているのです。「もうだめだと」思っても、まだまだ成長の余力があるのか。それとも、見切りをつけたほうがいいのか。どう見極めるのかがこの2つの論文のテーマです。具体的で、役に立つ内容になっています。
「業績改善の事業診断法」では、業績改善の体系的な方法を紹介しています。「経験曲線」「ABC」(活動基準原価計算)、「ROA/RMSチャート」「SNAPチャート」「NPS」(推奨者の正味比率)、「プロフィット・プール・マップ」「モデルTチャート」「RAPIDモデル」などのツールを紹介しています。
「過当競争市場のポジショニング戦略」は、タイトルどおりポジショニングに関する論文です。競争が厳しい市場ではポジションを体系的に分析するツールが必要です。「価格/便益ポジショニング(PBP)・マップ」というものをこの論文では紹介しています。これは価格と便益の関係に基づいてポジショニング戦略を立案できるツールです。携帯電話のモトローラの事例などをもとに具体的な解説があります。携帯電話市場、中型車市場などのPBPマッピングが載せられており、わかりやすい内容になっています。(岩崎 卓也)
2008/06/11
好調企業の売上げが止まるのはなぜか
今号、2008年7月号で非常に面白いと感じた論文があります。「売上げが止まる時」というタイトルで、執筆はマシュー・S・オルソン氏です。コーポレート・エグゼクティブ・ボードというアメリカの研究機関でエグゼクティブ・ディレクターを務めている方です。こちらの研究機関が発行するレポートは、日本の大手企業も購読していたと聞いています。
企業の多くは「ストールポイント」を経験するものです。ストールポイントというのは、日本語に訳すと「成長の壁」、減収に転じていく点を意味します。どんな企業にも必ずあります。売上高は事業の拡大とともに右肩で上がっていくものです。が、ある時点で減収に転じると、右肩下がりの傾向が続き、もう一度、増収に転じるのに非常に苦労しています。この論文でいう減収とは外的要因である為替の問題などによるものではありません。戦略上のミスによってストールポイントを迎えてしまったケースを指します。
コーポレート・エグゼクティブ・ボードの調査によると、戦略上の理由でストールポイントに直面した企業は、その原因を4つに分類できるといいます。ひとつは良くいわれる『成功の罠』です。成功すると驕ってしまい、周りを見なくなりがちです。脇が甘くなってしまうのです。そのほか「イノベーション・マネジメントの失敗」「成長余力を残したコア事業の見切り」「人材不足」、合計4つがあげられています。これらはよくある話です。でも、ここにあげられた結論は企業の業績を悪化させる極めて最大公約数だという気もします。
この論文は4つの原因の解説とともに、企業の事例を紹介しています。リーバイスでは、1985年、MBOにより株式の非公開化に踏み切りました。当時のCEO、ロバート・ハースは変革するには非上場にする必要があると判断したのです。それで、再生を果たすのですが、1996年をピークに業績を悪化させてしまいます。ストールポイントに当たったのです。ストールポイントは企業の病気みたいなところがあって、治すのが厄介です。リーバイスの例は極端かもしれませんが、そのほか、ダイムラーやトイザらスなど、ストールポイントを経験した企業は多数あります。
『ビジョナリー・カンパニー』というベストセラーになった本があります。著者のジェームズ・コリンズは、ビジョナリー・カンパニーとして、いろいろな会社をあげました。その中で、一社だけあげるとしたらどの会社ですか? という質問に、3M(スリーエム)をあげました。この3Mですら、ストールポイントを経験しています。その後、業績を低迷させていることがこの論文でも指摘されています。
この論文は過去半世紀の優良企業、およそ500社を調査しています。なかなか細かく分析がなされており、秀逸な論文だと思いました。(岩崎 卓也)
企業の多くは「ストールポイント」を経験するものです。ストールポイントというのは、日本語に訳すと「成長の壁」、減収に転じていく点を意味します。どんな企業にも必ずあります。売上高は事業の拡大とともに右肩で上がっていくものです。が、ある時点で減収に転じると、右肩下がりの傾向が続き、もう一度、増収に転じるのに非常に苦労しています。この論文でいう減収とは外的要因である為替の問題などによるものではありません。戦略上のミスによってストールポイントを迎えてしまったケースを指します。
コーポレート・エグゼクティブ・ボードの調査によると、戦略上の理由でストールポイントに直面した企業は、その原因を4つに分類できるといいます。ひとつは良くいわれる『成功の罠』です。成功すると驕ってしまい、周りを見なくなりがちです。脇が甘くなってしまうのです。そのほか「イノベーション・マネジメントの失敗」「成長余力を残したコア事業の見切り」「人材不足」、合計4つがあげられています。これらはよくある話です。でも、ここにあげられた結論は企業の業績を悪化させる極めて最大公約数だという気もします。
この論文は4つの原因の解説とともに、企業の事例を紹介しています。リーバイスでは、1985年、MBOにより株式の非公開化に踏み切りました。当時のCEO、ロバート・ハースは変革するには非上場にする必要があると判断したのです。それで、再生を果たすのですが、1996年をピークに業績を悪化させてしまいます。ストールポイントに当たったのです。ストールポイントは企業の病気みたいなところがあって、治すのが厄介です。リーバイスの例は極端かもしれませんが、そのほか、ダイムラーやトイザらスなど、ストールポイントを経験した企業は多数あります。
『ビジョナリー・カンパニー』というベストセラーになった本があります。著者のジェームズ・コリンズは、ビジョナリー・カンパニーとして、いろいろな会社をあげました。その中で、一社だけあげるとしたらどの会社ですか? という質問に、3M(スリーエム)をあげました。この3Mですら、ストールポイントを経験しています。その後、業績を低迷させていることがこの論文でも指摘されています。
この論文は過去半世紀の優良企業、およそ500社を調査しています。なかなか細かく分析がなされており、秀逸な論文だと思いました。(岩崎 卓也)
2008/06/07
人口とお金の行方
今号、2008年6月号は女性と中高年に絞った人材論を特集しました。さまざまな切り口がある中、女性の登用を今後どのくらい増やせるのかに焦点を当てました。この特集の背景には少子高齢化があります。『「豊かなる衰退」と日本の戦略』(弊社刊)の著者、横山禎徳(よしのり)さんとも話をしましたが、人口が減るということはリスクの高いことです。以前、書いたように、人口の減少はその国の市場規模が小さくする可能性があるので、国の衰退を意味する部分もあります。その点について、今回は少し詳しくお話をしようと思います。
6000兆円にものぼるといわれている、いわゆるホームレスマネーは現在アラブに集まっています。お金が集まる要因はさまざまですが、お金は人口が多いところに向かい、やがて衰退していくだろうと思われるところを避ける傾向はあるといえます。今、イスラムの出生率は増えているといわれています。地震などにより人口が減るリスクは少ない。人口が増えると、何が起こるでしょうか。
イスラム圏ではインフラが増えています。それに伴い、市場が大きくなり、都市が広がります。住宅供給が加速していき、それにあわせて、道路などの交通やさまざまなインフラが広がるという循環が生まれます。ドバイなどには、日本のゼネコンも参加しています。イスラムのすごいところは、貧困層がないところです。GDPが一人あたりの数字は低いのですが、貧富の格差は少ないのです。
日本では、都市に人口が集中しているため、東京で暮らしていると人口が減ることのメリットが大きいようにも感じます。しかし、イスラムの例からも、人口の増減が市場の大きさに影響することがわかるかと思います。例えば、日本も出生率が今から何倍にもなり、子どもが多く生まれると、理屈からいえば、出生率が増えることで状況が変わる可能性もあるといえるでしょう。(岩崎 卓也)
6000兆円にものぼるといわれている、いわゆるホームレスマネーは現在アラブに集まっています。お金が集まる要因はさまざまですが、お金は人口が多いところに向かい、やがて衰退していくだろうと思われるところを避ける傾向はあるといえます。今、イスラムの出生率は増えているといわれています。地震などにより人口が減るリスクは少ない。人口が増えると、何が起こるでしょうか。
イスラム圏ではインフラが増えています。それに伴い、市場が大きくなり、都市が広がります。住宅供給が加速していき、それにあわせて、道路などの交通やさまざまなインフラが広がるという循環が生まれます。ドバイなどには、日本のゼネコンも参加しています。イスラムのすごいところは、貧困層がないところです。GDPが一人あたりの数字は低いのですが、貧富の格差は少ないのです。
日本では、都市に人口が集中しているため、東京で暮らしていると人口が減ることのメリットが大きいようにも感じます。しかし、イスラムの例からも、人口の増減が市場の大きさに影響することがわかるかと思います。例えば、日本も出生率が今から何倍にもなり、子どもが多く生まれると、理屈からいえば、出生率が増えることで状況が変わる可能性もあるといえるでしょう。(岩崎 卓也)
2008/06/04
コスト増のときに収益力をつけるには
今後も原油や原材料の高騰が続けば、スタグフレーションに陥るおそれがあるという認識を日銀新総裁の白川氏が示した。5月27日に報じられたこのニュースは今を象徴しているように思います。スタグフレーション(stagflation)というのは、stagnationとinflationの造語ですが、直訳すると「景気の後退と物価の上昇が同時に起こること」です。インフレにより物価が上がると、所得も上がるはずです。でも、所得は物価の上昇に比べ、さほど上がらないのです。
スタグフレーションが起こったのは、直近でいうと第2次オイルショックの時です。ヨーロッパとアメリカで起こりました。フランスやイタリアなど、一部のヨーロッパの国では物価上昇にあわせて賃金も上げました。しかし、これが裏目に出てしまいました。賃金が上がったら物価高騰をさらに招いてしまったのです。悪循環が起こり、抜けきれなくなりました。
スタグフレーションに関する解説をいくつか読みました。インフレが続きながら、景気が悪い状況が長く続く。失業率も上がっていく、といった壊滅的で暗いシナリオが目に付きます。第2次オイルショックで、日本はインフレが起こりましたが、スタグフレーションまで行きませんでした。円高により吸収した部分があったのです。また、第一次オイルショックのときの余力もありましたし、現場の改善努力でコストダウンに努めたことも功を奏しました。
次号の特集は「収益力の経営」を組みます。このような暗い状況下にて何ごとだ、とおっしゃる方もいるかもしれません。私たちはスタグフレーションを想定してこの特集の企画を立てたわけではないのですが、それでもインフレはいずれ来るだろうという予測はありました。原油高による原材料費、運送費の高騰はコスト増を招きます。企業は値上げをしなくてはならない。でも、簡単に値上げはできません。なぜなら、今でもデフレの残り火があるからです。価格を下げないと物が売れない、という状況が一掃されたわけではないのです。設備投資は増えましたが、消費者のサイフのひもは緩んでいません。
コストは上がるが、価格に上乗せできないという中で、何をしたらよいのでしょうか。このような視点で次号の特集を組みました。業績改善というと、コストダウンと売上をあげれば良いという考えがあります。確かに、その通りではありますが、私たちの雑誌ではどう戦略的に売上をあげることができるのか。売上はそのままで、利益率を上げる方法はないのか、ということを提案します。(岩崎 卓也)
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次号の発売は6月10日(火)の予定です。
スタグフレーションが起こったのは、直近でいうと第2次オイルショックの時です。ヨーロッパとアメリカで起こりました。フランスやイタリアなど、一部のヨーロッパの国では物価上昇にあわせて賃金も上げました。しかし、これが裏目に出てしまいました。賃金が上がったら物価高騰をさらに招いてしまったのです。悪循環が起こり、抜けきれなくなりました。
スタグフレーションに関する解説をいくつか読みました。インフレが続きながら、景気が悪い状況が長く続く。失業率も上がっていく、といった壊滅的で暗いシナリオが目に付きます。第2次オイルショックで、日本はインフレが起こりましたが、スタグフレーションまで行きませんでした。円高により吸収した部分があったのです。また、第一次オイルショックのときの余力もありましたし、現場の改善努力でコストダウンに努めたことも功を奏しました。
次号の特集は「収益力の経営」を組みます。このような暗い状況下にて何ごとだ、とおっしゃる方もいるかもしれません。私たちはスタグフレーションを想定してこの特集の企画を立てたわけではないのですが、それでもインフレはいずれ来るだろうという予測はありました。原油高による原材料費、運送費の高騰はコスト増を招きます。企業は値上げをしなくてはならない。でも、簡単に値上げはできません。なぜなら、今でもデフレの残り火があるからです。価格を下げないと物が売れない、という状況が一掃されたわけではないのです。設備投資は増えましたが、消費者のサイフのひもは緩んでいません。
コストは上がるが、価格に上乗せできないという中で、何をしたらよいのでしょうか。このような視点で次号の特集を組みました。業績改善というと、コストダウンと売上をあげれば良いという考えがあります。確かに、その通りではありますが、私たちの雑誌ではどう戦略的に売上をあげることができるのか。売上はそのままで、利益率を上げる方法はないのか、ということを提案します。(岩崎 卓也)
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次号の発売は6月10日(火)の予定です。
2008/05/30
超高齢社会の解決策を示す国は
「平成19年版 高齢社会白書」によると、2055年には平均寿命が男性83.67年、女性90.34年となり、女性の平均寿命は90年を超えると見込まれています。夫が定年退職し、かつ60歳を超える夫婦の場合、女性は日々何をしているのでしょうか。女性のほうが社会性があり、参加したコミュニティに打ち込めるといわれています。しかし、これはすべての女性にあてはまるとは言えません。
男性のなかには、会社勤めに没頭し社会との接点が少なくなる人もいます。働く女性が増えた現在、これはワーキングウーマンにも同じことがいえるのではないでしょうか。男性ビジネスパーソンと同様に、女性は長く会社務めをするほど、地域とのつながりが持ちづらいケースが多く出てきます。女性にとって、定年後の男性が抱えている問題は対岸の火事ではなくなりつつあるのです。
『「豊かなる衰退」と日本の戦略』(弊社刊)という本があります。著者は横山禎徳(よこやま・よしのり)さん、マッキンゼーに約30年勤めた方で、ディレクター(シニア・パートナー)、東京支社長にもなった方です。この本には次のようなことが書かれています。少子化というのは西欧諸国で経験していることなので、対策について西欧諸国に学ぶことはあるでしょう。しかし、超高齢社会に世界で最初に突入したのは日本です。65歳以上の老齢人口が総人口の21%以上を占める超高齢社会。ここに潜んでいる問題は前例がないものなのです。従って、アメリカに範を求めてはいけない。自分達で考えなくてはいけない、ということになります。
横山先生はこの著書の後、『アメリカと比べない日本』という本を書かれています。この本でも、超高齢社会における課題は自分達で考え解決しなければならないと言及しています。日本が範を示す番です。最近聞いたのですが、そういう能力のことをアジェンダ・セッティング能力というそうです。課題設定能力というものが、今、問われているのです。もはや、他国の問題を分析し、なぞっていく能力だけでは乗り切れなくなっているのです。そういう意味もあり、今月号は中高年の問題、女性の問題を特集として組みました。この二つの問題はある種重なるものがあります。別々に議論するのではなく、両方に通じる最大公約数のようなものを言う必要があるのかもしれない。今回の特集を組んだ結果、そう感じました。(岩崎 卓也)
男性のなかには、会社勤めに没頭し社会との接点が少なくなる人もいます。働く女性が増えた現在、これはワーキングウーマンにも同じことがいえるのではないでしょうか。男性ビジネスパーソンと同様に、女性は長く会社務めをするほど、地域とのつながりが持ちづらいケースが多く出てきます。女性にとって、定年後の男性が抱えている問題は対岸の火事ではなくなりつつあるのです。
『「豊かなる衰退」と日本の戦略』(弊社刊)という本があります。著者は横山禎徳(よこやま・よしのり)さん、マッキンゼーに約30年勤めた方で、ディレクター(シニア・パートナー)、東京支社長にもなった方です。この本には次のようなことが書かれています。少子化というのは西欧諸国で経験していることなので、対策について西欧諸国に学ぶことはあるでしょう。しかし、超高齢社会に世界で最初に突入したのは日本です。65歳以上の老齢人口が総人口の21%以上を占める超高齢社会。ここに潜んでいる問題は前例がないものなのです。従って、アメリカに範を求めてはいけない。自分達で考えなくてはいけない、ということになります。
横山先生はこの著書の後、『アメリカと比べない日本』という本を書かれています。この本でも、超高齢社会における課題は自分達で考え解決しなければならないと言及しています。日本が範を示す番です。最近聞いたのですが、そういう能力のことをアジェンダ・セッティング能力というそうです。課題設定能力というものが、今、問われているのです。もはや、他国の問題を分析し、なぞっていく能力だけでは乗り切れなくなっているのです。そういう意味もあり、今月号は中高年の問題、女性の問題を特集として組みました。この二つの問題はある種重なるものがあります。別々に議論するのではなく、両方に通じる最大公約数のようなものを言う必要があるのかもしれない。今回の特集を組んだ結果、そう感じました。(岩崎 卓也)
2008/05/28
これからの中高年 人材育成法
2008年6月号の「人材マネジメント失われた50年」では、前回の記事でも触れましたが、人材育成手法のほとんどが半世紀前に開発されたものであることを指摘しています。では、新しい人材育成法としてどうすればよいのか。こちらの論文ではSCMを人材マネジメントに応用することについて述べています。
私は前回、中高年の人材の流動化はもっと高まってもよいのではないか、と書きました。それに伴い、新しい人材の育成法も流動化を意識したものであるべきだと思うのです。金融リテラシーをあげるのみではなく、第2の人生の準備ができるようなものがトレーニングに多く組み込まれるのも良いのではないかと思うのです。人材が外に出ることで教育のROIが下がっていきます。「人材マネジメント失われた50年」では、教育のROIについて触れています。ROIを上げるには、育成のコストを本人が負担するようなことも検討する必要が出てくるでしょう。
現在、資格取得支援制度を取り入れている企業は多くあります。しかし、資格をとっても役に立たない場合があります。従って、資格取得などで支援するのではなく、中高年の優秀な人材か流動化していく仕組み自体を作ることが大切なのでしょう。例えば、リクルートは優秀な人がどんどん辞めていくという文化があります。このような形は組織のあり方のひとつだと思います。
現状ではジョブセキュリティを前提に議論をしています。女性の活用も同じです。従業員はずっと働いていたい、会社を辞めたくないはずだ、ということに間違いはないということで、トレーニングも組み立てられています。これからは、ジョブセキュリティを前提としないトレーニングがあっても良いような気もします。
マネジメントの人材にはある程度の厚みは必要ですが、数として沢山は必要なわけではない。このようなことだけはわかってきたのですから、20年、あるいは30年ごとに人生の節目を迎えて、別の方向に舵を切っても良いのではないかと思います。第二、第三の人生が20年節目にやってくるのも良いでしょう。(岩崎 卓也)
私は前回、中高年の人材の流動化はもっと高まってもよいのではないか、と書きました。それに伴い、新しい人材の育成法も流動化を意識したものであるべきだと思うのです。金融リテラシーをあげるのみではなく、第2の人生の準備ができるようなものがトレーニングに多く組み込まれるのも良いのではないかと思うのです。人材が外に出ることで教育のROIが下がっていきます。「人材マネジメント失われた50年」では、教育のROIについて触れています。ROIを上げるには、育成のコストを本人が負担するようなことも検討する必要が出てくるでしょう。
現在、資格取得支援制度を取り入れている企業は多くあります。しかし、資格をとっても役に立たない場合があります。従って、資格取得などで支援するのではなく、中高年の優秀な人材か流動化していく仕組み自体を作ることが大切なのでしょう。例えば、リクルートは優秀な人がどんどん辞めていくという文化があります。このような形は組織のあり方のひとつだと思います。
現状ではジョブセキュリティを前提に議論をしています。女性の活用も同じです。従業員はずっと働いていたい、会社を辞めたくないはずだ、ということに間違いはないということで、トレーニングも組み立てられています。これからは、ジョブセキュリティを前提としないトレーニングがあっても良いような気もします。
マネジメントの人材にはある程度の厚みは必要ですが、数として沢山は必要なわけではない。このようなことだけはわかってきたのですから、20年、あるいは30年ごとに人生の節目を迎えて、別の方向に舵を切っても良いのではないかと思います。第二、第三の人生が20年節目にやってくるのも良いでしょう。(岩崎 卓也)
2008/05/24
中高年の人材流動化
十数年以上も前のことになりますが、三菱電機がゴールデン・プランというものを導入しました。これは会社が労働組合と一緒になって作ったものです。45歳からリタイアメントの準備をしましょう、といった趣旨で設立されました。なぜ準備が必要かというと、会社人間として育った人の中には知識が偏ってしまうケースが少なくないからです。年金のことや、退職金のことなどに関して、会社任せにしており、ほとんど知識がない人もいます。老後に備えるなら、45歳くらいに始めないと間に合わない、ということが設立の背景にあったようです。
当時、ゴールデン・プランは非常に画期的だと言われ、他社もならって始めました。導入から時が経ち、今の社会状況に合わせ、ゴールデン・プランの内容にも変化はあったと認識しています。が、多くはファイナンシャル部門も含めて、今でも当時と変わらず、福利厚生の一環として続いている部分があると思います。
定年に備えるということは、経済的な問題に備えることが大きな課題としてあります。金融のリテラシーを高めていくのは悪いことではありません。でも、それだけで備えたというのは無理があります。大前研一さんが講演などでよく話すことですが、今は国が国民を守りきれない状態にある。とするならば、中高年のときに、会社をやめてもいい、通用するスキルのトレーニングをやるべきではないか、と私は思います。
会社にとっても、中高年が退職するとなるとキーマンを失うことにもなります。でも、悪いことだけではありません。固定費が減るかもしれない。だから、もっと中高年の人材の流動化が進むような状況にしてもいいのではないか、と思うときがあります。会社の中のトレーにングシステムは最後に役員になることを目指すためのものという位置づけになっている企業があります。企業はふるいの目を細かくする、といったことに注力するのをやめても良いのではないでしょうか。
もちろん、必ずやめなければならないということではありません。それだけではなくて外にどんどん出て行ってもらえるようなトレーにングをしてもよいのではないか、ということです。
人材が外に出るとなると、人材教育のリスクが増し、ROIが下がってしまうことになります。2008年6月号に「人材マネジメント失われた50年」という論文がありますが、こちらでは、〈実は、人材育成手法のほとんどが、半世紀前に開発されたもので、いずれも、確実性の高い環境に適した組織人を育成する手法である。〉と述べています。また、人材開発への投資のROIを改善することにも触れています。この論文についての詳細は次回、こちらのブログでお伝えします。〈岩崎 卓也〉
当時、ゴールデン・プランは非常に画期的だと言われ、他社もならって始めました。導入から時が経ち、今の社会状況に合わせ、ゴールデン・プランの内容にも変化はあったと認識しています。が、多くはファイナンシャル部門も含めて、今でも当時と変わらず、福利厚生の一環として続いている部分があると思います。
定年に備えるということは、経済的な問題に備えることが大きな課題としてあります。金融のリテラシーを高めていくのは悪いことではありません。でも、それだけで備えたというのは無理があります。大前研一さんが講演などでよく話すことですが、今は国が国民を守りきれない状態にある。とするならば、中高年のときに、会社をやめてもいい、通用するスキルのトレーニングをやるべきではないか、と私は思います。
会社にとっても、中高年が退職するとなるとキーマンを失うことにもなります。でも、悪いことだけではありません。固定費が減るかもしれない。だから、もっと中高年の人材の流動化が進むような状況にしてもいいのではないか、と思うときがあります。会社の中のトレーにングシステムは最後に役員になることを目指すためのものという位置づけになっている企業があります。企業はふるいの目を細かくする、といったことに注力するのをやめても良いのではないでしょうか。
もちろん、必ずやめなければならないということではありません。それだけではなくて外にどんどん出て行ってもらえるようなトレーにングをしてもよいのではないか、ということです。
人材が外に出るとなると、人材教育のリスクが増し、ROIが下がってしまうことになります。2008年6月号に「人材マネジメント失われた50年」という論文がありますが、こちらでは、〈実は、人材育成手法のほとんどが、半世紀前に開発されたもので、いずれも、確実性の高い環境に適した組織人を育成する手法である。〉と述べています。また、人材開発への投資のROIを改善することにも触れています。この論文についての詳細は次回、こちらのブログでお伝えします。〈岩崎 卓也〉
2008/05/21
2007年度マッキンゼー賞受賞論文
今号、2008年6月号の特集にある「なぜ女性リーダーが少ないのか」という論文は2007年度マッキンゼー賞を受賞したものです。ノースウェスタン大学 心理学部 教授のアリス・H・イーグリー氏とウェルズリー・カレッジ 心理学部 客員准教授のリンダ・L・カーリ氏が執筆しています。
以前こちらのブログで、日本には女性管理職が少ない。比して、アメリカでは40%以上を占めていることを紹介しました。しかし、そのアメリカでも、執行役員クラスになるととたんに数が減るといいます。この論文では女性がトップにはなれないのは「ガラスの天井(グラス・シーリング)」が原因ではなく「キャリアの迷宮」が問題だといっています。
「ガラスの天井」というのはグラス・シーリング、ガラスでできている透明な天井という意味です。ウォール・ストリート・ジャーナルがおよそ20年前に紹介した言葉です。女性にはある時期から目に見えないグラス・シーリングがあって、ある程度社会的地位が上がると、それ以上はあがれないというのです。しかし、この論文ではそうではなくて、「女性のキャリアが上に行けなくなるのは途中のプロセスに問題があるのだ」と主張しています。キャリアの迷宮とは偏見の名残や女性リーダーへの反発などがあります。詳しく解説しています。
ところで、高い地位に登っていく女性の中には、過酷な30代前半を過ごしている人が多くいます。今月号『「組織の怠惰」が女性活用を阻んでいる』の石倉洋子さんはもともともマッキンゼーで働いていた方です。それは大変な生活をされていたと思います。P&Gも同じです。
また、20代のときに、失敗をどれくらい経験したか。これが自身のスキルをポータブルにする側面もあります。ポータブルなスキルは育児休暇の後、職場に戻ったとしても、陳腐化しないといいます。しばらく離れていた職場は変化していますが、すぐにキャッチアップできる、戻れるのです。
「なぜ女性リーダーが少ないのか」に話を戻しますが、こちらの論文では女性リーダーの比率を高めるにはどのような施策が有効か。現状を分析したうえで、12の対策を提案しています。意識の問題から具体的な改革点まで、さまざまなアイデアが書かれています。(岩崎 卓也)
以前こちらのブログで、日本には女性管理職が少ない。比して、アメリカでは40%以上を占めていることを紹介しました。しかし、そのアメリカでも、執行役員クラスになるととたんに数が減るといいます。この論文では女性がトップにはなれないのは「ガラスの天井(グラス・シーリング)」が原因ではなく「キャリアの迷宮」が問題だといっています。
「ガラスの天井」というのはグラス・シーリング、ガラスでできている透明な天井という意味です。ウォール・ストリート・ジャーナルがおよそ20年前に紹介した言葉です。女性にはある時期から目に見えないグラス・シーリングがあって、ある程度社会的地位が上がると、それ以上はあがれないというのです。しかし、この論文ではそうではなくて、「女性のキャリアが上に行けなくなるのは途中のプロセスに問題があるのだ」と主張しています。キャリアの迷宮とは偏見の名残や女性リーダーへの反発などがあります。詳しく解説しています。
ところで、高い地位に登っていく女性の中には、過酷な30代前半を過ごしている人が多くいます。今月号『「組織の怠惰」が女性活用を阻んでいる』の石倉洋子さんはもともともマッキンゼーで働いていた方です。それは大変な生活をされていたと思います。P&Gも同じです。
また、20代のときに、失敗をどれくらい経験したか。これが自身のスキルをポータブルにする側面もあります。ポータブルなスキルは育児休暇の後、職場に戻ったとしても、陳腐化しないといいます。しばらく離れていた職場は変化していますが、すぐにキャッチアップできる、戻れるのです。
「なぜ女性リーダーが少ないのか」に話を戻しますが、こちらの論文では女性リーダーの比率を高めるにはどのような施策が有効か。現状を分析したうえで、12の対策を提案しています。意識の問題から具体的な改革点まで、さまざまなアイデアが書かれています。(岩崎 卓也)
2008/05/17
もう一つのテーマ
今号、2008年6月号『逆転の人材開発論』は、女性の活用のほか、もう一つテーマがあります。それは中高年の活用です。定年延長について取り組んでいる企業はありますが、すみずみまでに浸透している状態だとはいえません。「当社は実施しています」という企業の中には、社員をふるいにかけて、一部にしか定年延長を適用していないケースもあります。
年齢が高くなると所得が高くなり、生活水準を下げることが難しくなります。私が思うに、中高年は責任を重くするのではなく専門性を発揮できる仕事で活用したらよいのではないでしょうか。中高年の場合、気候が厳しく、体力的に負担がかかるような地域で働くことは無理かもしれません。が、グローバル化などの仕事に携わったら、交渉の場面で面白いことができるのではないでしょうか。できる人はたくさんいます。もっと使ったほうがいいでしょう、近所を散歩させている場合ではありません。もちろん、中高年の活用に取り組むのならば、人事制度を実情に合わせて変えなければいけません。
今回の特集で、女性と中高年の活用について触れたのは、社会の流れとして少子化の傾向が背景にあるからです。時折、人口が減ることにはメリットがある。人口が減ってもかまわない、という意見を語る人もいます。でも、私は人口が減るリスクは決して小さなものではないと思っています。人口が減れば、市場がなくなる、少なくとも日本の国内市場が小さくなるのです。日本は、輸出でまかなっているのはGDPの10パーセントしかありません。国内市場が小さくなるのは、国の経済力が下がるということです。お金が循環しない、つまり消費が途絶えることです。人口が減るのは衰退への道を意味します。
商品や良質なサービスは小さい経済圏は素通りして行ってしまいます。日本でしか作れない、日本にしかないもので、どこの国でも欲しがっている物があれば別です。例えば、石油を持っていればよいのですが、日本にはありません。やはり、私は人口が減るのはよろしくないと思います。深刻なことです。社会システムを維持することだけではなく、市場としての魅力が下がっていくのです。そういう意味で、少子化は由々しき問題であるのです。(岩崎 卓也)
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▽一冊からお求めになれます。2008年6月号(5月10日発売)
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690608
年齢が高くなると所得が高くなり、生活水準を下げることが難しくなります。私が思うに、中高年は責任を重くするのではなく専門性を発揮できる仕事で活用したらよいのではないでしょうか。中高年の場合、気候が厳しく、体力的に負担がかかるような地域で働くことは無理かもしれません。が、グローバル化などの仕事に携わったら、交渉の場面で面白いことができるのではないでしょうか。できる人はたくさんいます。もっと使ったほうがいいでしょう、近所を散歩させている場合ではありません。もちろん、中高年の活用に取り組むのならば、人事制度を実情に合わせて変えなければいけません。
今回の特集で、女性と中高年の活用について触れたのは、社会の流れとして少子化の傾向が背景にあるからです。時折、人口が減ることにはメリットがある。人口が減ってもかまわない、という意見を語る人もいます。でも、私は人口が減るリスクは決して小さなものではないと思っています。人口が減れば、市場がなくなる、少なくとも日本の国内市場が小さくなるのです。日本は、輸出でまかなっているのはGDPの10パーセントしかありません。国内市場が小さくなるのは、国の経済力が下がるということです。お金が循環しない、つまり消費が途絶えることです。人口が減るのは衰退への道を意味します。
商品や良質なサービスは小さい経済圏は素通りして行ってしまいます。日本でしか作れない、日本にしかないもので、どこの国でも欲しがっている物があれば別です。例えば、石油を持っていればよいのですが、日本にはありません。やはり、私は人口が減るのはよろしくないと思います。深刻なことです。社会システムを維持することだけではなく、市場としての魅力が下がっていくのです。そういう意味で、少子化は由々しき問題であるのです。(岩崎 卓也)
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2008/05/13
エグゼクティブの補佐になる意味
前の記事で、2008年7月号に掲載したベネッセコーポレーション取締役副会長 内永ゆか子氏の「女性が組織のリーダーとなるための条件」を紹介しました。実は、十年以上も前のことですが、私は内永さんにお目にかかったことがあります。お会いしたのは、日本でジェンダーフリーを推し進めている方たちが主催するセミナーでした。
当日のプログラムには、女性の著名人が討論する場がありました。テーマはセクハラの問題についてです。途中で、内永さんが意見を求められたとき、彼女はこのように言ったのです。
「私はそういうことに興味はありません。男性とか女性とか、議論するのはナンセンスです。その人の言う意見の価値を考えて、良いアイデアを生み出していくことが大事なのではないでしょうか」
内永さんが意見を述べるなり、満場の大喝采を浴びるというシーンがあったのです。今回、内永さんにこのセミナーの話を申し上げたところ、随分前のことで覚えていらっしゃいませんでしたが、私はこの場面が強く印象に残っています。
「女性が組織のリーダーとなるための条件」には、内永さんのIBM時代の話が載っています。印象的だったのは、女性に必要なのは良いメンターであるというところです。内永さんは取締役になる前、当時の営業を統括する常務取締役の補佐についています。IBMではエグゼクティブになる人は、ほとんど全員がエグゼクティブの補佐を務めるそうです。
自身の能力を高めていくには、相手に何かを教えてもらうよりも、優秀なエグゼクティブの補佐としてつくことが良い方法だと内永さんは言います。これはジョブシャドウイングと呼ばれるものです。相手に「影」のように密着し観察する。そうすることで、仕事で求められるスキルや知識を身につけるのです。
この点はP&Gの和田浩子さんも同じことを言っていました。P&Gジャパンの元社長がP&GのCEOになるケースは良くあります。イェーガー氏、アラン・ラフリー氏もP&Gジャパンの社長でした。和田さんはこの二人についたわけではないのですが、トップの人たちの補佐を務めることで、ビジネスリーダーはどうあるべきかが、具体的にわかる。自分は女性としてどういうキャリアを築けば良いのか、どんな能力が必要なのか、すぐわかると言っていました。(岩崎 卓也)
▽一冊からお求めになれます。2008年6月号(5月10日発売)
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690608
当日のプログラムには、女性の著名人が討論する場がありました。テーマはセクハラの問題についてです。途中で、内永さんが意見を求められたとき、彼女はこのように言ったのです。
「私はそういうことに興味はありません。男性とか女性とか、議論するのはナンセンスです。その人の言う意見の価値を考えて、良いアイデアを生み出していくことが大事なのではないでしょうか」
内永さんが意見を述べるなり、満場の大喝采を浴びるというシーンがあったのです。今回、内永さんにこのセミナーの話を申し上げたところ、随分前のことで覚えていらっしゃいませんでしたが、私はこの場面が強く印象に残っています。
「女性が組織のリーダーとなるための条件」には、内永さんのIBM時代の話が載っています。印象的だったのは、女性に必要なのは良いメンターであるというところです。内永さんは取締役になる前、当時の営業を統括する常務取締役の補佐についています。IBMではエグゼクティブになる人は、ほとんど全員がエグゼクティブの補佐を務めるそうです。
自身の能力を高めていくには、相手に何かを教えてもらうよりも、優秀なエグゼクティブの補佐としてつくことが良い方法だと内永さんは言います。これはジョブシャドウイングと呼ばれるものです。相手に「影」のように密着し観察する。そうすることで、仕事で求められるスキルや知識を身につけるのです。
この点はP&Gの和田浩子さんも同じことを言っていました。P&Gジャパンの元社長がP&GのCEOになるケースは良くあります。イェーガー氏、アラン・ラフリー氏もP&Gジャパンの社長でした。和田さんはこの二人についたわけではないのですが、トップの人たちの補佐を務めることで、ビジネスリーダーはどうあるべきかが、具体的にわかる。自分は女性としてどういうキャリアを築けば良いのか、どんな能力が必要なのか、すぐわかると言っていました。(岩崎 卓也)
▽一冊からお求めになれます。2008年6月号(5月10日発売)
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690608
2008/05/10
ジェンダーフリーはダイバーシティの一要素
次号、2008年6月号「ジェンダーフリーの論点」に、「企業の女性活用に求められる本質的な視点」という記事があります。こちらで提言しているのはOfficeWaDa代表 和田浩子さんです。1998年、日本人で初めてP&Gのヴァイス・プレジデントに就任した方です。和田さんはダイバーシティの問題を日本の企業が考えるとき、女性の問題だけにフォーカスしている点に触れています。そもそもジェンダーというのはダイバーシティの一要素に過ぎません。ダイバーシティ・マネジメントも経営戦略のひとつである人材育成戦略に位置づけられるとおっしゃっています。女性のキャリア支援を目標に掲げても、会社にとってメリットが明確でなければ女性を特別扱いする意味が失われるわけです。
P&Gはなぜ、ダイバーシティにこだわっているのか。それはお客様がダイバースしているからです。消費財メーカーとして、世界中のさまざまな国籍、宗教、文化を持つ顧客を相手にビジネスをしているのです。お客様に合った社員構成にしないと、お客様の気持ちがわからないのです。
日本はまだジェンダーで止まっています。ダイバーシティまでいっていません。製品のグローバル化はできていますが、マネジメントはグローバル化できないのです。日本企業の中には、「当社はグローバル化しています」という会社があります。でも、それは事業所が他国にあり、製品が他国に流れているだけであって、経営はドメスティックな場合があるのです。製品を輸出していることと、グロバリゼーションは違うのだ、と思いました。
また、「ジェンダーフリーの論点」には、「インド市場でのビジネスに男女の隔たりはない」という記事があります。こちらの記事の日産自動車 本広好枝さんは2005年インド日産社長に就任し、2008年4月より日産自動車 インド事業室長を務めています。インドに女性を送り込むところに、日産のすごさがあると私は感じました。本広さんは日産のダイバーシティの取り組み、ご自身の仕事、職場環境等について語っています。記事を読むとタイトルどおり、インド市場でのビジネスに男女の隔たりはないことがわかります。(岩崎 卓也)
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▽一冊からお求めになれます。2008年6月号(5月10日発売)
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690608
P&Gはなぜ、ダイバーシティにこだわっているのか。それはお客様がダイバースしているからです。消費財メーカーとして、世界中のさまざまな国籍、宗教、文化を持つ顧客を相手にビジネスをしているのです。お客様に合った社員構成にしないと、お客様の気持ちがわからないのです。
日本はまだジェンダーで止まっています。ダイバーシティまでいっていません。製品のグローバル化はできていますが、マネジメントはグローバル化できないのです。日本企業の中には、「当社はグローバル化しています」という会社があります。でも、それは事業所が他国にあり、製品が他国に流れているだけであって、経営はドメスティックな場合があるのです。製品を輸出していることと、グロバリゼーションは違うのだ、と思いました。
また、「ジェンダーフリーの論点」には、「インド市場でのビジネスに男女の隔たりはない」という記事があります。こちらの記事の日産自動車 本広好枝さんは2005年インド日産社長に就任し、2008年4月より日産自動車 インド事業室長を務めています。インドに女性を送り込むところに、日産のすごさがあると私は感じました。本広さんは日産のダイバーシティの取り組み、ご自身の仕事、職場環境等について語っています。記事を読むとタイトルどおり、インド市場でのビジネスに男女の隔たりはないことがわかります。(岩崎 卓也)
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▽一冊からお求めになれます。2008年6月号(5月10日発売)
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2008/05/07
インテリジェンスを備えたドンキホーテ
次号の2008年7月号、「組織で女性の力を生かす ジェンダーフリーの論点」では、7名の女性の提言を掲載します。その中の一つがベネッセコーポレーション取締役副会長 内永ゆか子氏の「女性が組織のリーダーとなるための条件」です。その中で内永さんは女性はマジョリティである男性達が築いてきた組織のパワー・ポリティクスを理解したほうが良いとおっしゃっています。みずからもポリティカルに、そのカルチャーに上手に乗ることで、仕事が円滑にまわり、より大きな仕事を任せてもらえることを認識しておこうともおっしゃっています。
これからはもっと実力社会になっていくでしょう。これまでのように役員になったら「上がり」といった人生は待っていないのです。昔は、あぐらをかいていても、学歴などの条件があれば、ベルトコンベアに乗るように役員まで行けた時代もありました。今は違います。やりたいことや望むことがあるのなら、その実現のためにポジションと権力が必要であるということを強く認識すべき点は男女ともに共通していることかもしれません。
一方、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 石倉洋子氏は『「組織の怠惰」が女性活用を阻んでいる』の中で、企業は女性の専門性を生かし、組織のビジネスのドライビングフォースとして女性をもっと活用していかなければならない、とおっしゃっています。私は石倉さんのおっしゃることも一つの選択肢としてあるのではないか、と思います。
男性の意思決定のプロセスは予定調和的です。Aさんの顔を見て、BさんのCさんの顔を見て、なるべくそれぞれの利害を壊さないように調整しつつ、上手くまとめるといった手法をとることがよくあります。この方法では新しい習慣やイノベーションは起こってこないでしょう。従来のものに疑問を抱くことが全くない組織は健全とはいえません。従来あるものをひっくり返す、一石を投じる役割は女性が向いているかもしれません。原稿では、「ドン・キホーテ」という言葉を使っています。インテリジェンスを備えたドン・キホーテです。
もちろん、女性が一石を投じる場合は、単に発言するだけではなく、責任を持つことが前提にあります。他方、意思決定の最後は腕力だから、ポジションが必要だという意見にもうなずけます。次号の「ジェンダーフリーの論点」のコーナーはそれぞれの意見があり、読み手にとって興味深い内容になったのではないかと思っています。(岩崎 卓也)
これからはもっと実力社会になっていくでしょう。これまでのように役員になったら「上がり」といった人生は待っていないのです。昔は、あぐらをかいていても、学歴などの条件があれば、ベルトコンベアに乗るように役員まで行けた時代もありました。今は違います。やりたいことや望むことがあるのなら、その実現のためにポジションと権力が必要であるということを強く認識すべき点は男女ともに共通していることかもしれません。
一方、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 石倉洋子氏は『「組織の怠惰」が女性活用を阻んでいる』の中で、企業は女性の専門性を生かし、組織のビジネスのドライビングフォースとして女性をもっと活用していかなければならない、とおっしゃっています。私は石倉さんのおっしゃることも一つの選択肢としてあるのではないか、と思います。
男性の意思決定のプロセスは予定調和的です。Aさんの顔を見て、BさんのCさんの顔を見て、なるべくそれぞれの利害を壊さないように調整しつつ、上手くまとめるといった手法をとることがよくあります。この方法では新しい習慣やイノベーションは起こってこないでしょう。従来のものに疑問を抱くことが全くない組織は健全とはいえません。従来あるものをひっくり返す、一石を投じる役割は女性が向いているかもしれません。原稿では、「ドン・キホーテ」という言葉を使っています。インテリジェンスを備えたドン・キホーテです。
もちろん、女性が一石を投じる場合は、単に発言するだけではなく、責任を持つことが前提にあります。他方、意思決定の最後は腕力だから、ポジションが必要だという意見にもうなずけます。次号の「ジェンダーフリーの論点」のコーナーはそれぞれの意見があり、読み手にとって興味深い内容になったのではないかと思っています。(岩崎 卓也)
2008/05/03
結婚にも努力が要る「婚活」時代
先日、オフィスで最近読んだ本が話題になりました。入社2年目の若手は『「婚活」時代』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)という本を読んだと言っていました。著者は家族研究を専門としている山田 昌弘さん(中央大学文学部教授)と、ジャーナリストの白河 桃子さんです。
聞くところによると、タイトルの「婚活」というのは結婚活動の略で、就職活動と同じように、いまや結婚も努力しないとできない時代だというのです。
その理由について、いくつか書かれているのですが、一つは日本の企業が変わったことをあげています。昔は男性が終身雇用で、会社にいればおよその将来は見えていました。女性は男性に対して、何歳になったら給料はいくらくらいになるという設計が立てやすかったのです。つまり、職場内恋愛という形を取っていても、実は集団お見合いをしているようなものだった、といったことが書かれているそうです。
確かに、私も雇用の流動化の影響はあると思いました。結婚しようとしている相手が将来、その会社をやめてしまう可能性は大きくなりました。それにより、相対的に結婚することに対するリスクが高くなったわけです。時代がそうだということを見越し、相手に頼らないで夫婦両方で稼いでいる女性もいます。
しかし、日本は女性が独り立ちする上で、リスクが高くなるような社会システムになっています。日本だと、シングルマザーを守るための優遇処置が全くないわけではありませんが、進んでいるとはいいがたいものがあります。
逆に、女性は守られているのだから、仕組みに寄りかかっているほうがラクだという考えもあります。ひとつの物事に対して、賛同もあれば反論もある、いろいろな世界です。次月号の特集では、女性の登用に焦点を当てています。結婚については触れていませんが、特集とは別にこの婚活という概念には興味深い物があると思いました。(岩崎 卓也)
聞くところによると、タイトルの「婚活」というのは結婚活動の略で、就職活動と同じように、いまや結婚も努力しないとできない時代だというのです。
その理由について、いくつか書かれているのですが、一つは日本の企業が変わったことをあげています。昔は男性が終身雇用で、会社にいればおよその将来は見えていました。女性は男性に対して、何歳になったら給料はいくらくらいになるという設計が立てやすかったのです。つまり、職場内恋愛という形を取っていても、実は集団お見合いをしているようなものだった、といったことが書かれているそうです。
確かに、私も雇用の流動化の影響はあると思いました。結婚しようとしている相手が将来、その会社をやめてしまう可能性は大きくなりました。それにより、相対的に結婚することに対するリスクが高くなったわけです。時代がそうだということを見越し、相手に頼らないで夫婦両方で稼いでいる女性もいます。
しかし、日本は女性が独り立ちする上で、リスクが高くなるような社会システムになっています。日本だと、シングルマザーを守るための優遇処置が全くないわけではありませんが、進んでいるとはいいがたいものがあります。
逆に、女性は守られているのだから、仕組みに寄りかかっているほうがラクだという考えもあります。ひとつの物事に対して、賛同もあれば反論もある、いろいろな世界です。次月号の特集では、女性の登用に焦点を当てています。結婚については触れていませんが、特集とは別にこの婚活という概念には興味深い物があると思いました。(岩崎 卓也)
2008/04/30
女性の部長相当職は全体の8.8%で良いのか
日本における女性の管理職比率は低いです。厚生労働省「平成18年度女性雇用管理基本調査」の調査結果によると、女性の部長相当職は全体の8.8%だそうです。平成15年度は6.7%で、比べると増加はしています。が、アメリカは40%でこれでも足りないといわれています。日本は圧倒的に遅れています。女性の力を活かすには、女性としてシンボリックな存在を立てることも一つとして必要です。しかしながら、まずは底上げをしないと無理なのではないでしょうか。
成果が数字で出る職種は個人の能力を評価しやすい傾向にあります。が、成果が見えにくい職種から女性の執行役員を出すのは難しいでしょう。その方ができることを何らかの形で証明しないといけないからです。日本企業ではベンチャー、営業を中心とした会社、コンサルティングファームなどではすでに女性の執行役員はいます。でも、メーカーをみると、開発部門出身の女性が社長になるようなケースはまれです。資生堂といった企業でさえいません。企業がダイバーシティの問題と向かい合うとき、どのように考えるべきか。次号では触れています。
話は変わりますが、女性の活用を議論するとき男性は必要以上にフェミニズムになることはないと思います。が、それぞれが理解することは必要でしょう。私は以前観た、女性だけの部族をモチーフにした映画を思い出すことがあります。映画に登場するこの部族は女性だけで構成されています。ときどき、男性は用いられるのですが、通常はいません。映画の見所は女王の座をめぐる争いや、他軍との戦いを視覚的にも楽しめる形で描いたところにあるのでしょう。
しかし、私はこの映画で、女性ばかりの社会に入った男性にわが身において観ていました。大変さや窮屈さが映画を通して感じられるのです。昔の話ですし、現代とは違いますが、どちらかの性で偏っている社会の不自然さ、そこに違う性の人が入ったときの感覚を味わいました。ずっと、日本では管理職は男性が多い状態が続いています。もう、その偏りには限界が来ているのではないか、と思いました。女性の優れている点は沢山語られています。使わない手はありません。
ただし、アメリカが進んでいるからといって、アメリカのやり方を一方的に持ち込んでも、うまく行かないことはご承知の通りです。そこで、日本に合った形は何か、日本のジェンダーの問題についてインタビューした理由はそこにあります。(岩崎 卓也)
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次号の発売は2008年5月10日です。
成果が数字で出る職種は個人の能力を評価しやすい傾向にあります。が、成果が見えにくい職種から女性の執行役員を出すのは難しいでしょう。その方ができることを何らかの形で証明しないといけないからです。日本企業ではベンチャー、営業を中心とした会社、コンサルティングファームなどではすでに女性の執行役員はいます。でも、メーカーをみると、開発部門出身の女性が社長になるようなケースはまれです。資生堂といった企業でさえいません。企業がダイバーシティの問題と向かい合うとき、どのように考えるべきか。次号では触れています。
話は変わりますが、女性の活用を議論するとき男性は必要以上にフェミニズムになることはないと思います。が、それぞれが理解することは必要でしょう。私は以前観た、女性だけの部族をモチーフにした映画を思い出すことがあります。映画に登場するこの部族は女性だけで構成されています。ときどき、男性は用いられるのですが、通常はいません。映画の見所は女王の座をめぐる争いや、他軍との戦いを視覚的にも楽しめる形で描いたところにあるのでしょう。
しかし、私はこの映画で、女性ばかりの社会に入った男性にわが身において観ていました。大変さや窮屈さが映画を通して感じられるのです。昔の話ですし、現代とは違いますが、どちらかの性で偏っている社会の不自然さ、そこに違う性の人が入ったときの感覚を味わいました。ずっと、日本では管理職は男性が多い状態が続いています。もう、その偏りには限界が来ているのではないか、と思いました。女性の優れている点は沢山語られています。使わない手はありません。
ただし、アメリカが進んでいるからといって、アメリカのやり方を一方的に持ち込んでも、うまく行かないことはご承知の通りです。そこで、日本に合った形は何か、日本のジェンダーの問題についてインタビューした理由はそこにあります。(岩崎 卓也)
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次号の発売は2008年5月10日です。
2008/04/26
次号は女性の登用、中高年の活用
次号は女性と中高年に絞った人材論を特集します。ジェンダーに関する話は多岐にわたりますが、今回は女性の登用を今後どのくらい増やせるのかに焦点を当てました。
女性と中高年とを一緒にしたのには理由があります。今、日本は合計特殊出生率が 2005 年は1.26、2006年は1.32になっています。今の人口を維持していくには、一世帯に子どもが二人では足りないといわれています。三人という家庭もなくてはならない状況にあります。
これは難しいことでしょう。川勝平太教授が言うには、女性の集団意思決定は各時代に働いているといいます。戦国時代は子孫が生き残れるようにと子どもを産む数が増えます。世の中が安定しているときは少子化の傾向があり、加え女性が活躍する時代になるようです。歴史でいうと平安時代がそうです。現代は安定している時代で少子化が問題になっていますが、なかなか解決しません。マクロで見たとき、この先も進むでしょう。今後5年間で400万人、労働人口が減ると言われています。
もちろん、労働人口の定義によっては70歳過ぎまで働ける前提でカウントする場合もあります。就労人口と労働力は別なのですが、いずれにしろ減ります。これを穴埋めしてくれるのは誰でしょうか。若い人は少子化で人数が少ないので埋めきれません。そこで、女性と中高年の活用が必要になるわけです。
定年退職した人の再活用もひとつとしてあります。ビジネスは経験則が大切です。質の高い労働力の提供という意味で経験値を持った方の活用は重要です。
他方で人材育成という課題が出てきます。質の高い労働力を調達するには、女性と中高年、ここから抽出していくしかないでしょう。外国人が日本にも増えて日本の組織を外資系化することもありますが、それでは足りません。文化に適応するまでに時間がかかります。最も手近で、ポテンシャルが高いのは女性と中高年なのです。
次号では日本のジェンダーの問題について女性7名が提言しています。その一人が小池百合子氏です。ほか、一橋大学の石倉洋子先生、P&Gで日本人として初めて本国のヴァイスプレジデントになった和田浩子さんなどが登場します。記事の内容はおってお話いたします。(岩崎 卓也)
女性と中高年とを一緒にしたのには理由があります。今、日本は合計特殊出生率が 2005 年は1.26、2006年は1.32になっています。今の人口を維持していくには、一世帯に子どもが二人では足りないといわれています。三人という家庭もなくてはならない状況にあります。
これは難しいことでしょう。川勝平太教授が言うには、女性の集団意思決定は各時代に働いているといいます。戦国時代は子孫が生き残れるようにと子どもを産む数が増えます。世の中が安定しているときは少子化の傾向があり、加え女性が活躍する時代になるようです。歴史でいうと平安時代がそうです。現代は安定している時代で少子化が問題になっていますが、なかなか解決しません。マクロで見たとき、この先も進むでしょう。今後5年間で400万人、労働人口が減ると言われています。
もちろん、労働人口の定義によっては70歳過ぎまで働ける前提でカウントする場合もあります。就労人口と労働力は別なのですが、いずれにしろ減ります。これを穴埋めしてくれるのは誰でしょうか。若い人は少子化で人数が少ないので埋めきれません。そこで、女性と中高年の活用が必要になるわけです。
定年退職した人の再活用もひとつとしてあります。ビジネスは経験則が大切です。質の高い労働力の提供という意味で経験値を持った方の活用は重要です。
他方で人材育成という課題が出てきます。質の高い労働力を調達するには、女性と中高年、ここから抽出していくしかないでしょう。外国人が日本にも増えて日本の組織を外資系化することもありますが、それでは足りません。文化に適応するまでに時間がかかります。最も手近で、ポテンシャルが高いのは女性と中高年なのです。
次号では日本のジェンダーの問題について女性7名が提言しています。その一人が小池百合子氏です。ほか、一橋大学の石倉洋子先生、P&Gで日本人として初めて本国のヴァイスプレジデントになった和田浩子さんなどが登場します。記事の内容はおってお話いたします。(岩崎 卓也)
2008/04/23
XBRLで何が変わるのか
2008年3月、『XBRLの衝撃―日欧米40数カ国550余機関が推し進める世界標準』(花堂靖仁/ダイヤモンド社:著)を刊行しました。XBRLというのは、extensible business reporting language:XMLベースの財務情報記述言語で、2007年6月号「2007年のパワー・コンセプト(中)」などでも紹介しました。
企業の財務諸表をご覧になりたいとき、どうしていますか。人によってはホームページのIR情報からPDF形式のものを入手しているでしょう。
現在、4000以上もの会社が上場していますが、財務分析をするにあたり、ソフトウエアによるデータ解析は頻繁に行われているわけではありません。技術的には可能ですが、手間を考慮したら作業として見合わないと考えられています。この手間の部分ですが、XBRLに全部が切り替われば、時間を短縮できるようになります。
XBRLにより、情報のハンドリングコストを激減させることが可能になります。情報の取引コストが下がるのです。以前から言われている話ですが、これに伴い新しい産業が出てくることが予想されます。現在、株式データを出版社や新聞社が提供しています。さらには、ストラテジストが分析し、レポートを配布しています。これが、XBRLの登場によって、グーグルやヤフーなどが財務分析を無料で提供する可能性も出てくるのです。
情報の価格が大幅に下がることにより、アナリストの優劣が出てくることも予想されます。アナリストは業界の歴史に詳しく、経験も豊富です。そうでないと、業界のキープレーヤーとなる企業の事業内容、今後の見通しについて、適正なレポートを書けないと言われてきました。情報の加工や分析が簡単になれば、企業のOBなど数字情報に詳しい人たちがアナリストよりも正確で企業にとって厳しいレポートを出してくるようになるかもしれません。レポートは今は有償ですが、無償になっていくでしょう。そうなったときに、企業のIRの手法も変わってくることが予想されます。
以上のことが予想されていますが、XBRLはまだ端緒についたばかりです。とはいえ、ワコールでは内部統制システムとXBRLを効果的に組み合わせて進めているといいます。
『XBRLの衝撃―日欧米40数カ国550余機関が推し進める世界標準』は企業の会計、経理、財務、IR担当者などが読む本ではありますが、一般的な知識をつけるという意味でお読みいただいても面白いと思います。XBRLは勉強したことがあるが、うろ覚えだという方、今さら人に聞けないとおっしゃる方にもおすすめします。(岩崎 卓也)
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▽一冊からお求めになれます。2008年5月号(4月10日発売)
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690508
▽バックナンバー 2007年6月号
http://www.dhbr.net/magazine/backnumber/200706.html
企業の財務諸表をご覧になりたいとき、どうしていますか。人によってはホームページのIR情報からPDF形式のものを入手しているでしょう。
現在、4000以上もの会社が上場していますが、財務分析をするにあたり、ソフトウエアによるデータ解析は頻繁に行われているわけではありません。技術的には可能ですが、手間を考慮したら作業として見合わないと考えられています。この手間の部分ですが、XBRLに全部が切り替われば、時間を短縮できるようになります。
XBRLにより、情報のハンドリングコストを激減させることが可能になります。情報の取引コストが下がるのです。以前から言われている話ですが、これに伴い新しい産業が出てくることが予想されます。現在、株式データを出版社や新聞社が提供しています。さらには、ストラテジストが分析し、レポートを配布しています。これが、XBRLの登場によって、グーグルやヤフーなどが財務分析を無料で提供する可能性も出てくるのです。
情報の価格が大幅に下がることにより、アナリストの優劣が出てくることも予想されます。アナリストは業界の歴史に詳しく、経験も豊富です。そうでないと、業界のキープレーヤーとなる企業の事業内容、今後の見通しについて、適正なレポートを書けないと言われてきました。情報の加工や分析が簡単になれば、企業のOBなど数字情報に詳しい人たちがアナリストよりも正確で企業にとって厳しいレポートを出してくるようになるかもしれません。レポートは今は有償ですが、無償になっていくでしょう。そうなったときに、企業のIRの手法も変わってくることが予想されます。
以上のことが予想されていますが、XBRLはまだ端緒についたばかりです。とはいえ、ワコールでは内部統制システムとXBRLを効果的に組み合わせて進めているといいます。
『XBRLの衝撃―日欧米40数カ国550余機関が推し進める世界標準』は企業の会計、経理、財務、IR担当者などが読む本ではありますが、一般的な知識をつけるという意味でお読みいただいても面白いと思います。XBRLは勉強したことがあるが、うろ覚えだという方、今さら人に聞けないとおっしゃる方にもおすすめします。(岩崎 卓也)
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▽一冊からお求めになれます。2008年5月号(4月10日発売)
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690508
▽バックナンバー 2007年6月号
http://www.dhbr.net/magazine/backnumber/200706.html
2008/04/19
低炭素社会へ12のオピニオン
2008年5月号では「低炭素社会への挑戦」として地球環境に関する12のオピニオンを掲載しました。そのなかで、「排出権取引では二酸化炭素は減らない」というものがあります。執筆者はアスペン・スキーイング・カンパニーのオーデン・シンドラー氏です。彼は地球環境問題を担当するディレクターです。
現在、欧州の市場などでは排出権取引が盛んに行われています。しかし、排出権取引は本当にCO2排出量の削減に繋がるのか? というのがシンドラー氏の問題提起です。これは一読の価値があると思いました。
炭素クレジットの購入は免罪符を買うという意味合いがあります。なかでも、グリーン電力証書 RECについて、免罪符を発行するところが本当にクリーンなエネルギーを生産しているのか。その部分が怪しいというのが氏の主張です。もちろん、クリーンなエネルギーを出し、CO2削減に貢献しているところもあるでしょう。しかし、現状ではRECの実効性の有無を見分ける方法がないのです。
今は環境問題を無視することができないという論調よりも、環境はリスクだという考えが主流になっています。これは裏返せばチャンスがあるということです。
「低炭素社会への挑戦」に掲載したオピニオンの中には、このチャンスを積極的に活用していくことを促すものがあります。「ステークホルダーの環境感度は高まっている」では金融市場での評価について触れています。「炭素社会ではバランスシートはこう変わる」では資産価値などがどのように変わっていくのかが示されています。
「環境政策議論に参加せよ」は環境問題に感度が低い企業は政策論議に参加する資格がないといっています。逆に、環境問題に積極的に取組み精通することで、参加すべきもののレベルが高まり、メリットが増える、と書かれています。(岩崎 卓也)
-----------------------------*
※REC
グリーン電力証書
1メガWhのクリーン電力を生産するとRECを一枚発行し販売することが認められる。詳細はDHBR2008年5月号をご覧ください。
▽一冊からお求めになれます。2008年4月10日発売
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690508
現在、欧州の市場などでは排出権取引が盛んに行われています。しかし、排出権取引は本当にCO2排出量の削減に繋がるのか? というのがシンドラー氏の問題提起です。これは一読の価値があると思いました。
炭素クレジットの購入は免罪符を買うという意味合いがあります。なかでも、グリーン電力証書 RECについて、免罪符を発行するところが本当にクリーンなエネルギーを生産しているのか。その部分が怪しいというのが氏の主張です。もちろん、クリーンなエネルギーを出し、CO2削減に貢献しているところもあるでしょう。しかし、現状ではRECの実効性の有無を見分ける方法がないのです。
今は環境問題を無視することができないという論調よりも、環境はリスクだという考えが主流になっています。これは裏返せばチャンスがあるということです。
「低炭素社会への挑戦」に掲載したオピニオンの中には、このチャンスを積極的に活用していくことを促すものがあります。「ステークホルダーの環境感度は高まっている」では金融市場での評価について触れています。「炭素社会ではバランスシートはこう変わる」では資産価値などがどのように変わっていくのかが示されています。
「環境政策議論に参加せよ」は環境問題に感度が低い企業は政策論議に参加する資格がないといっています。逆に、環境問題に積極的に取組み精通することで、参加すべきもののレベルが高まり、メリットが増える、と書かれています。(岩崎 卓也)
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※REC
グリーン電力証書
1メガWhのクリーン電力を生産するとRECを一枚発行し販売することが認められる。詳細はDHBR2008年5月号をご覧ください。
▽一冊からお求めになれます。2008年4月10日発売
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690508
2008/04/16
イスラム金融が世界を変える
2008年5月号の「イスラム金融が世界を変える」では、イスラム金融を取り上げています。先日、エグゼクティブ・クラスを対象にしたイスラム金融のセミナーが行われたというニュースを目にしました。イスラム金融の話は十数年くらい前から少しずつ出てきたと記憶しています。が、ここのところ以前よりも増して、注目を集めるようになったと感じています。
イスラム金融の特徴は教義「シャリーア」に反しないところにあります。例えば、シャリーアに準じると、現存しない財の取引は原則禁止となるのです。現物を所有していないのに対象物を売る「空売り」は基本的には行えません。
我々の社会では財の移動によって売上が発生します。でも、数字で出ている皆が信じているお金はバーチャルな部分があるのです。大前研一さんは講演で世界には「ホームレスマネー」といって、6000兆円にものぼる行き場のないお金があると言っていました。地球上を行き来しているお金は取引の数だけ存在しますが、中にはうたかたのものもあるのです。
世界を見渡すと、大手銀行が続々とイスラム金融部門を新設しました。今、なぜイスラム金融サービスが注目を浴びているのでしょうか。その理由を「イスラム金融が世界を変える」は語っています。
例えば、シャリーアの概念では契約を結ぶとき、すべての関係者がリスクとリターンを把握する必要があるといいます。ですから、イスラムの金融機関はサブプライム問題に至ったような複雑な金融工学に手を出すわけには行かないのです。
イスラム金融には見習うべき点がある、とこの論文に書かれています。
興味深い内容の論文だと思いました。(岩崎 卓也)
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▽一冊からお求めになれます。2008年4月10日発売
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690508
イスラム金融の特徴は教義「シャリーア」に反しないところにあります。例えば、シャリーアに準じると、現存しない財の取引は原則禁止となるのです。現物を所有していないのに対象物を売る「空売り」は基本的には行えません。
我々の社会では財の移動によって売上が発生します。でも、数字で出ている皆が信じているお金はバーチャルな部分があるのです。大前研一さんは講演で世界には「ホームレスマネー」といって、6000兆円にものぼる行き場のないお金があると言っていました。地球上を行き来しているお金は取引の数だけ存在しますが、中にはうたかたのものもあるのです。
世界を見渡すと、大手銀行が続々とイスラム金融部門を新設しました。今、なぜイスラム金融サービスが注目を浴びているのでしょうか。その理由を「イスラム金融が世界を変える」は語っています。
例えば、シャリーアの概念では契約を結ぶとき、すべての関係者がリスクとリターンを把握する必要があるといいます。ですから、イスラムの金融機関はサブプライム問題に至ったような複雑な金融工学に手を出すわけには行かないのです。
イスラム金融には見習うべき点がある、とこの論文に書かれています。
興味深い内容の論文だと思いました。(岩崎 卓也)
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▽一冊からお求めになれます。2008年4月10日発売
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690508
2008/04/11
予測の技術
前にも書きましたが、ぜひ今年はロボットの特集を組みたいと思っています。およそ三年前、私はロボットの企画を出したこのですが、編集部で却下された経験があります。でも、今、私はロボットがそろそろムーブメントになるのではないか、という気がしています。それを裏付けるような論文を今号2008年5月号に掲載しました。「予測の技術」がそうです。論文のなかで、ロボットについて触れられている部分があります。執筆者は未来予測学者のポール・L・サフォー氏。スタンフォード大学のコンサルティング准教授です。
話は変わりますが、DHBRでは『立石一真氏ものがたり「できません」と云うな』を連載しています。立石氏はオムロンの創設者で、「SINIC理論」という未来予測理論を提唱しました。SINICとは“Seed-Innovation to Need-Impetus Cyclic Evolution”の頭文字をとったものです。
1970年、立石氏は「SINIC理論」を国際未来学会で発表しました。当時、インターネットもなかった時代に、この理論は情報化社会の出現などを予測しています。これによると情報化社会の後には「最適化社会」、そしてさらには「自律社会」といったものへ移行するようです。実は「予測の技術」の執筆者サフォー氏はこの「SINIC理論」を学んだと聞いています。
そのサフォー氏が「予測の技術」のなかで、自動でお掃除をしてくれるロボット〈ルンバ〉を取り上げています。加え、ロボット工学の変曲点はさほど遠くない時期に訪れる可能性があることを示唆しています。
論文には予測するための6つのルールが載っています。その中のひとつに、円錐を使うものがあり、その事例としてロボット産業について触れています。この論文を読んで、近いうちにロボットは来るのではないかという気持ちがますます強くなりました。ロボットに関する特集を実現したいです。(岩崎 卓也)
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▽一冊からお求めになれます。
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690508
話は変わりますが、DHBRでは『立石一真氏ものがたり「できません」と云うな』を連載しています。立石氏はオムロンの創設者で、「SINIC理論」という未来予測理論を提唱しました。SINICとは“Seed-Innovation to Need-Impetus Cyclic Evolution”の頭文字をとったものです。
1970年、立石氏は「SINIC理論」を国際未来学会で発表しました。当時、インターネットもなかった時代に、この理論は情報化社会の出現などを予測しています。これによると情報化社会の後には「最適化社会」、そしてさらには「自律社会」といったものへ移行するようです。実は「予測の技術」の執筆者サフォー氏はこの「SINIC理論」を学んだと聞いています。
そのサフォー氏が「予測の技術」のなかで、自動でお掃除をしてくれるロボット〈ルンバ〉を取り上げています。加え、ロボット工学の変曲点はさほど遠くない時期に訪れる可能性があることを示唆しています。
論文には予測するための6つのルールが載っています。その中のひとつに、円錐を使うものがあり、その事例としてロボット産業について触れています。この論文を読んで、近いうちにロボットは来るのではないかという気持ちがますます強くなりました。ロボットに関する特集を実現したいです。(岩崎 卓也)
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▽一冊からお求めになれます。
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690508
2008/04/09
スーツを着ないで取締役会に出席する時代
今月から「特定健診」と「特定保健指導」が始まりました。40歳以上75歳未満の医療保険者を対象とした特定健診の実施が義務付けられたのです。特定健診の影響もあるのでしょう。最近、健康への関心がますます高まっているように感じます。2008年5月号には運動に関連した記事を掲載しました。タイトルは「未来の取締役会の姿」で、これは前にお伝えしたパワー・コンセプトのひとつです。ページの中央に大きなイラストが掲載されています。そこには未来の取締役会の姿が描かれています。
未来の会社役員は大きなテーブルを前に、なんとランニング・マシンに乗って会議をしているのです。着用しているものはスーツではなくジャージ。ランニング・マシンは時速3kmで動いています。このような形で会議を実施する根拠は運動をすると脳を活性化できるからなのだそうです。
〈カウチ・ポテトならぬデスク・ポテトになるのを避けるべきだ〉と書かれています。
なぜ運動をすると、脳が活性化されるのか。この記事では前頭前野や海馬が活性化して血流がよくなるといったことから、脳と運動にまつわる歴史まで、いくつかの切り口で解説しています。
この未来図に出てくる会社で運動を熱心にしているのは取締役だけではありません。社員も同様。デスクの下にはエアロバイクが組み込まれています。電子メールの返事はエアロバイクをこぎながら書くのです。私は翻訳する前の原稿を目にしたとき、正直「何だ、これは?」という感想を抱きました。
でも、脳のストレスが少なくなるとメタボリックになる可能性が減るという説もあるようです。職場にランニング・マシンが据えつけられ、午前と午後に仕事を小休止して運動をする。これからはそういう時代になっていくのかな、という気もしました。(岩崎 卓也)
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次号の発売は2008年4月10日です。
未来の会社役員は大きなテーブルを前に、なんとランニング・マシンに乗って会議をしているのです。着用しているものはスーツではなくジャージ。ランニング・マシンは時速3kmで動いています。このような形で会議を実施する根拠は運動をすると脳を活性化できるからなのだそうです。
〈カウチ・ポテトならぬデスク・ポテトになるのを避けるべきだ〉と書かれています。
なぜ運動をすると、脳が活性化されるのか。この記事では前頭前野や海馬が活性化して血流がよくなるといったことから、脳と運動にまつわる歴史まで、いくつかの切り口で解説しています。
この未来図に出てくる会社で運動を熱心にしているのは取締役だけではありません。社員も同様。デスクの下にはエアロバイクが組み込まれています。電子メールの返事はエアロバイクをこぎながら書くのです。私は翻訳する前の原稿を目にしたとき、正直「何だ、これは?」という感想を抱きました。
でも、脳のストレスが少なくなるとメタボリックになる可能性が減るという説もあるようです。職場にランニング・マシンが据えつけられ、午前と午後に仕事を小休止して運動をする。これからはそういう時代になっていくのかな、という気もしました。(岩崎 卓也)
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次号の発売は2008年4月10日です。
2008/04/05
ゲーム世代はポテンシャルが高い
次号、2008年5月号では21個の「パワー・コンセプト」を紹介するとお伝えしました。そのひとつにゲーム世代の特徴を述べた論文があります。ゲーマーはジェネレーションYと同様にこれから会社で主役となっていく世代で、5つの特徴があるといいます。まずは、成果志向であることがあげられます。2番目は多様性の効果がわかっていることです。残りの3つは変化を種に成長し、学習を楽しみ、好奇心が旺盛であること。もちろん、これらすべてがゲーマー全員にあてはまるとは限りません。ただ、この5つの要素を全部持ち合わせている人がいるのなら、その人は優秀だといえます。明らかに、ゲーマーはポテンシャルが高いといえるのです。
現行の制度を見ると、前回も触れましたが、就業時間が決められワーク・プレイスの制限があります。これは多様性を阻害することになりかねません。好奇心旺盛、変化を好むといったことからも遠ざかってしまいます。だとすると、現行の制度はもう古く、新たな制度を構築したほうが良いのではないかと思います。
企業によっては制度を変えるにあたり、さまざまな意見が出されることもあるでしょう。大変だから、制度を変えたくないという声もあります。私は思うのですが、では何のために事業本部制にしているのでしょうか。私は事業本部ごとに、ルールを決めれば良いと思うのです。事業やスペック、製品のライフサイクルはさまざまで、それぞれが異なります。お客様も一人ひとり違います。求められる能力も違うのならば、なぜ全員一律的に人事制度を課すのでしょうか。
制度を維持することのインセンティブは人事部にしか働きません。制度があれば、違反した者を処罰する権利が与えられ、制度の番人になれることを意味します。権限があるところは往々にして、制度が硬直したままになりがちです。
会社には20代、30代、40代、50代、4世代が集まっています。中でも20代というのは明らかにケータイ、ゲーム、インターネットで育ってきているのです。時代に合ったルールに変えていこうと思っても、現場のマネジャーは人事制度に手を加えることはできません。人事部が人事制度を変えていかなければならないのです。(岩崎 卓也)
現行の制度を見ると、前回も触れましたが、就業時間が決められワーク・プレイスの制限があります。これは多様性を阻害することになりかねません。好奇心旺盛、変化を好むといったことからも遠ざかってしまいます。だとすると、現行の制度はもう古く、新たな制度を構築したほうが良いのではないかと思います。
企業によっては制度を変えるにあたり、さまざまな意見が出されることもあるでしょう。大変だから、制度を変えたくないという声もあります。私は思うのですが、では何のために事業本部制にしているのでしょうか。私は事業本部ごとに、ルールを決めれば良いと思うのです。事業やスペック、製品のライフサイクルはさまざまで、それぞれが異なります。お客様も一人ひとり違います。求められる能力も違うのならば、なぜ全員一律的に人事制度を課すのでしょうか。
制度を維持することのインセンティブは人事部にしか働きません。制度があれば、違反した者を処罰する権利が与えられ、制度の番人になれることを意味します。権限があるところは往々にして、制度が硬直したままになりがちです。
会社には20代、30代、40代、50代、4世代が集まっています。中でも20代というのは明らかにケータイ、ゲーム、インターネットで育ってきているのです。時代に合ったルールに変えていこうと思っても、現場のマネジャーは人事制度に手を加えることはできません。人事部が人事制度を変えていかなければならないのです。(岩崎 卓也)
2008/04/02
ジェネレーションYが求めるもの
前回、若い世代に価値観の転換が起こっていることを書きました。ジェネレーションYは勤務時間、ワーク・プレイスで縛られず、自分の好きな時間帯に好きな場所で、高いパフォーマンスを追求するほうが良いと思っているのです。
ジェネレーションンYはなぜこのような考え方をするのでしょうか。それは彼ら彼女らにはジョブセキュリティへの意識が高くないことがあげられます。自分が会社をクビになったらどうしよう、といった不安が上の世代よりも少ない傾向にあるのです。20代でポータブルなスキルを持って、会社の居心地が悪かったらさっさとやめれば良いという価値観があります。私たち、ジェネレーションYより上の世代では20代のうちにポータブルなスキルを身につけようという意識は強くなかったような気がします。もちろん、人によって、組織によって異なるでしょう。
先日、一橋大学に行ったとき、こんな話を聞きました。日本企業に勤める30代の中には、自分の仕事について説明できない人が多いというのです。20代のうちにチャンスを与えられ、それをこなし、自信を持って次のステージに向かうトレーニングを受けていないというのです。
時代はジェネレーションンYの世代に移っていきます。変化に合わせて何をすればいいのでしょうか。
例えば、在宅勤務を取り入れることで、より時代に合致した制度になるのなら進めればいいと思います。なぜ、企業は行わないのでしょう。一部、実施している企業がありますが、完全な在宅勤務ではなく事前申告制にしています。何か足かせをしないと、社員を管理できないという思いがあるのでしょう。
2007年11月号『一流の経営』でブラジルにあるセムコという会社を紹介しました。その会社のCEOが言います。
「一部の不正をする人のために、残りのまじめな人が割りを食う制度を作ることはナンセンスだ」
私はまさにその通りだと思います。前回も書きましたが、ジェネレーションYの価値観に照らすと、人事制度も変わる必要があると思うのです。(岩崎 卓也)
ジェネレーションンYはなぜこのような考え方をするのでしょうか。それは彼ら彼女らにはジョブセキュリティへの意識が高くないことがあげられます。自分が会社をクビになったらどうしよう、といった不安が上の世代よりも少ない傾向にあるのです。20代でポータブルなスキルを持って、会社の居心地が悪かったらさっさとやめれば良いという価値観があります。私たち、ジェネレーションYより上の世代では20代のうちにポータブルなスキルを身につけようという意識は強くなかったような気がします。もちろん、人によって、組織によって異なるでしょう。
先日、一橋大学に行ったとき、こんな話を聞きました。日本企業に勤める30代の中には、自分の仕事について説明できない人が多いというのです。20代のうちにチャンスを与えられ、それをこなし、自信を持って次のステージに向かうトレーニングを受けていないというのです。
時代はジェネレーションンYの世代に移っていきます。変化に合わせて何をすればいいのでしょうか。
例えば、在宅勤務を取り入れることで、より時代に合致した制度になるのなら進めればいいと思います。なぜ、企業は行わないのでしょう。一部、実施している企業がありますが、完全な在宅勤務ではなく事前申告制にしています。何か足かせをしないと、社員を管理できないという思いがあるのでしょう。
2007年11月号『一流の経営』でブラジルにあるセムコという会社を紹介しました。その会社のCEOが言います。
「一部の不正をする人のために、残りのまじめな人が割りを食う制度を作ることはナンセンスだ」
私はまさにその通りだと思います。前回も書きましたが、ジェネレーションYの価値観に照らすと、人事制度も変わる必要があると思うのです。(岩崎 卓也)
2008/03/28
新しいチャンスを優位に導く
次号、2008年5月号では新しい優位の論点を特集します。現在はこれまで以上に変化とチャンスが多くある時代です。原油の価格がここまで高くなり、ロシアやOPEC産油国は増産のインセンティブが働かない状態にあります。有限資源である石油に対して、減産するインセンティブが働いています。また、IPCCの知見の評価などからは、温暖化、気候変動がビジネスに与えるインパクトの大きさを感じさせられます。もう一度、方向転換のため舵を切るのは諸外国も同じ状況にあります。では、そこにどんな新しいチャンスがあるのか、トレンドがあるのか。それをどうやって自分達にとって優位に導けるのか。このような視点で特集を組みました。
次号では21個の「パワー・コンセプト」を紹介します。毎年開催される世界経済フォーラム主催のダボス会議では、「ハーバード・ビジネス・レビュー」アメリカ本誌が共同でブレークスルー・アイデア・リストを作成しています。この最新リストはビジネスを変えるアイデアが記載されています。
そのなかで、これから会社で主役となっていく世代について書かれた「ジェネレーションYの仕事感」という論文を紹介する予定です。ジェネレーションYというのは、定義がいろいろありますが、会社でいえば新入社員から20代後半くらいの世代を指します。実は、この世代では価値観の転換が起こっています。まず、勤務時間で縛るということを嫌がることがあげられます。そして、ワーク・プレイスもそうです。自分の好きな時間帯に好きな場所で、高いパフォーマンスを追求するほうが良いと思っているのです。
当社は出社と退社の時刻が決まっています。それに合わせて残業がいつ発生するのかが決められています。加え、自分の机に出社することが原則です。現実には、直行、直帰での仕事もありますが、この論文でいうと就業規則で決めることはナンセンスだというのです。もともとも、就業時間を決めるということは性悪説に立っている怠勤管理が原点にあります。ジェネレーションYの価値観に照らすと、人事制度は何が何でも守るものではないことが読み取れます。ジェネレーションYの価値観とはどのようなものなのでしょうか。詳細は次回触れます。
(岩崎 卓也)
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次号の発売は2008年4月10日です。
次号では21個の「パワー・コンセプト」を紹介します。毎年開催される世界経済フォーラム主催のダボス会議では、「ハーバード・ビジネス・レビュー」アメリカ本誌が共同でブレークスルー・アイデア・リストを作成しています。この最新リストはビジネスを変えるアイデアが記載されています。
そのなかで、これから会社で主役となっていく世代について書かれた「ジェネレーションYの仕事感」という論文を紹介する予定です。ジェネレーションYというのは、定義がいろいろありますが、会社でいえば新入社員から20代後半くらいの世代を指します。実は、この世代では価値観の転換が起こっています。まず、勤務時間で縛るということを嫌がることがあげられます。そして、ワーク・プレイスもそうです。自分の好きな時間帯に好きな場所で、高いパフォーマンスを追求するほうが良いと思っているのです。
当社は出社と退社の時刻が決まっています。それに合わせて残業がいつ発生するのかが決められています。加え、自分の机に出社することが原則です。現実には、直行、直帰での仕事もありますが、この論文でいうと就業規則で決めることはナンセンスだというのです。もともとも、就業時間を決めるということは性悪説に立っている怠勤管理が原点にあります。ジェネレーションYの価値観に照らすと、人事制度は何が何でも守るものではないことが読み取れます。ジェネレーションYの価値観とはどのようなものなのでしょうか。詳細は次回触れます。
(岩崎 卓也)
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次号の発売は2008年4月10日です。