2008/12/02

「ブルー・オーシャン戦略」を理解している日本人

安部義彦さんという方がいます。「DHBR」2007年8月号に『ブルー・オーシャン戦略の方法論』という論文を寄稿してくださった方です。安部さんはINSEAD(欧州経営大学院)に留学しMBAを取得していますが、このときの担当教授が『ブルー・オーシャン戦略』のチャン・キムでした。ブルー・オーシャン戦略に働いているロジックとエコノミクスをしっかりと著したい。このような思いのもと、現在安部さんの単著による単行本を予定検討しています。本家の『ブルー・オーシャン戦略』にも書かれていない、これまでどこにも書かれていなかったことを読者の皆様にお届けできれば、と思っています。

チャン・キムの講演を聞くとわかりますが、ブルーオーシャン戦略は先行者利得の戦略ではありません。「最初に見つけた人がすべての果実を享受するわけではない」と言っています。商品の中には、最初はヒットしなかったものがほかの人の手にかかることでヒット商品になっていくこともあります。ヒット商品が誕生するメカニズムはどこにあるのだろうか。従来、「偶然ヒットしたに過ぎない」「いやマーケティングが決め手になったのだ」などと語られてきた側面があります。このことについて、チャン・キムはヒット商品が生まれるにあたり、何か普遍性の高いフレームワークがあるのではないか、と思って探しあてた。これが『ブルー・オーシャン戦略』なのです。

この戦略には経済学で説明できるエコノミクスが働いています。それはどういうことなのかというと、ポーターの戦略論は「低コスト化をする(コストリーダーシップ)」「差別化をしてバリューをあげる」といったことをあげています。ポーターはこの二つはトレードオフだから、両立はない(あったとしてもまれだ)と言っています。ここから、市場のポジションに話が続いていくのがポーターの理論です。ブルー・オーシャン戦略ではこの「低コスト化」と「差別化」が両立します。ここが大きな違いです。

その一方で、ポーターとチャン・キムの問題意識には同じ部分もあります。おおまかなことを言えば、二人とも、市場に寡占の状態、ないしは独占の状態を作っていくため、どのようにしたら仕組みとして成立しうるかを研究しているともいえます。ポーターのコスト戦略では、コストが下がれば、その限られた市場の中で収益(売上)を増やすことができる。この増やすことがポーターでは重要で、鍵になります。他方、差別化戦略としては機能を上げることで、安いセグメントでは飽きたらないお客さんを取り込むことができるのです。つまり、市場を細分化していき、そのセグメントで独占、寡占をしていくのがポーターの競争戦略の理論です。

チャン・キムは需要を押し上げるには戦略価格を設定しなければならないと言います。戦略価格を設定し、コスト目標を立てる。このコストを下げることが需要をあげるために必要な条件になります。その後は、これまでにない機能や価値を付加して差別化を図る。ポーターがトレードオフだといったものを同時に実現することを提唱しています。

ブルー・オーシャン戦略とは「他人がやっていないことをやるということだ」と、言った方がいます。確かに、その通りです。以前こちらのブログで紹介した大塚製薬も「人がやっていないこと」に取り組んでいました。ブルー・オーシャンとは「誰もやっていないこと」を意味するともいえます。が、青い海を探しあてることは難しい。見つけるために身近にできることといえば、ノンカスタマーに徹底的にヒアリングをかけることが一つとしてあります。今の延長線上とは別のところに進んでいくわけですから、今まで自社の商品に慣れ親しんでいる人の意見だけでは足りません。全く興味のない人に話を聞くのがいい、ということです。確かに、理にかなっているといえます。(岩崎 卓也)


---------------*
「DHBR」2007年8月号『ブルー・オーシャン戦略の方法論』はこちらから
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690807
posted by ダイヤモンド社 at 06:45| Comment(2) | TrackBack(2) | 記事
この記事へのコメント
 身近にできることで、コストをかけてブルーオーシャンを探す方法はコンサルに依頼したり、新たな経営者を呼び入れることがありますが、コストをかけずに探すにはインターンの学生の最終課題として新製品の提案をしてもらう事があると思います。
 近頃は自動車や携帯、家電製品の全てが成熟期のレッドオーシャンに見えて仕方がないので見てて気が休まる商品の発売を期待したいです。
Posted by DIO at 2008年12月03日 22:16
DIO さん、

「インターンの学生の最終課題として新製品の提案」
貴重なご意見をいただき、ありがとうございます。

ご自身の経験や、ご意見など歓迎いたします。
Posted by スタッフ at 2008年12月05日 09:36
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※半角英数字のみのコメントは書き込みができないようになっています。

この記事へのTrackBack URL

※半角英数字のみのトラックバックは受信されないようになっています。

ブルー・オーシャン
Excerpt: 「ブルー・オーシャン戦略」を理解している日本人ブルー・オーシャン戦略とは、乱暴に言えば、競争がないところなら、十分収益を上げられるね、ってことだ。他の人が気がついていないため、他社の参入も遅れる。お客...
Weblog: 天気晴れ - ITと趣味のブログ
Tracked: 2008-12-03 08:07

日本のブルー・オーシャン戦略/ 安部 義彦 池上重輔 08350
Excerpt: 日本のブルー・オーシャン戦略 10年続く優位性を築く/安部 義彦 ¥2,310 Amazon.co.jp マーケティングの恩師、池上重輔先生の新著。ブルー・オーシャン戦略 は以前非常に興味深く読んだの
Weblog: 分譲マンション屋の読書日記
Tracked: 2008-12-30 14:14