2008/11/14

景気に左右されない成長

「景気後退期にあっても、企業は成長できる」
シスコシステムズ CEO ジョン・チェンバーズは「変化に強い経営」を行動で示している経営者の一人です。シスコシステムズは1984年に創立し、インターネット関連機器分野のリーダー企業に成長した会社です。チェンバーズは95年にCEOに就任して以来シスコの舵取りをしてきた人で、10年間で売上高を20倍にした実績があります。2000年のネット・バブル崩壊のときも、いち早く会社を立て直しました。

今号(2008年12月号)に、チェンバーズのインタビュー記事を掲載しました。なぜ、シスコはリーダー企業に成長できたのか。話の中には二つのキーワードが出てきます。一つは「市場の潮目」、もう一つは「コラボレーション」です。「市場の潮目」というのは、原文ではmarket transitionとなっており、辞書上のおとなしい言葉に直すと市場の変化、移り変りといった意味になります。「DHBR」編集部ではmarket transitionを「市場の潮目」と訳しました。チェンバーズの言うtransitionというのは単なる変化ではなく、目に見えない変化を指すので、「変化」ではないより適切な言葉を選びました。

市場の潮目は多くの人が事態に気づく、かなり前から起こっていることが多いのです。また、潮目がきっかけで市場に破壊が生まれます。チェンバーズは皆よりも早い時期に潮目を察知する。だからシスコは変化に強いのです。結果、リスクを他社よりもたくさん取ることができると、チェンバーズは言っています。証券アナリストがシスコの業績予想をする際、シスコが始めた新しい投資に対してその根拠がわからない、と評することがあるそうです。アナリストさえ気づかない市場の潮目を捉える。これこそがシスコの競争優位なのです。ただし、この能力はチェンバーズの属人的な力によるものだといえます。お客さんの声に耳を傾けていると、チェンバーズには天の声が聞こえてくるようです。

私がインタビューの中で注目したのはもう一つのキーワード、コラボレーションです。以前、野中郁次郎先生がおっしゃった言葉に「ゆらぎ」というものがあります。異分野の人たちが集まると、「ゆらぎ」が生じて組織が不安定になります。ところが、組織は安定している状態が必ずしも良いとは限らないのです。なぜなら、この不安定な状態の中からイノベーションが起こるからです。不安定よりも安定した状態のほうが良いとする向きもありますが、組織は不安定な部分があったほうが良いときもあるのです。

チェンバーズのコラボレーションは異分野の人たちによるものであることを前提にしています。最近、よく耳にする仲良し集団によるコラボレーションは真の意味のコラボレーションではありません。これは単なるグループワークです。シスコはグループワークではなく、真のコラボレーションを実現させているといえます。そうなるために、組織は「オープン」で、かつ「異質を歓迎できる」体質が必要になってきます。しかし、なかなか上手くいかないものです。その理由はいくつかあります。それはまた後日、紹介するとして、チェンバーズの言葉はコラボレーションという言葉に託された本来のメッセージをもう一度考えさせられるものがあります。また、コラボレーションが企業の成長の一要因となることを改めて感じさせられました。(岩崎 卓也)

▽今号〈2008年12月号〉はこちらからどうぞ
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059691208
posted by ダイヤモンド社 at 06:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 記事
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