今号(2008年9月号)の特集は「組織IQの経営」です。特集の2番目には「競争力とIT投資の知られざる力学」という論文を掲載しました。執筆者の一人はMIT(マサチューセッツ工科大学)の教授、エリック・ブリニョルフソンです。
前回、紹介した「組織IQ論」では、IT投資と企業業績に相関性はあるのか、という点が一つの論点でした。今回紹介する「競争力とIT投資の知られざる力学」では、IT投資と企業パフォーマンスは正の相関性がある、と言います。論文によると、90年代の半ばからアメリカではIT投資が増えていき、それによって競争力が上がっているというのです。データの検証もしっかりとされています。確かに、IT投資イコール競争力の向上、および市場シェアの向上、ひいては株価の上昇というのは美しい。しかも検証するデータもあります。
しかしながら、ベテランのビジネスパーソンからすると、この論文はおおよそ受け入れられないロジックになっていると思います。組織がITを活用する能力や管理する能力がなければ、パフォーマンスにつながらないと感じているでしょう。
実は、執筆者であるエリック・ブリニョルフソンは、以前「デジタル組織」というものを提唱しています。デジタル組織というのは「ITを使うにふさわしい組織」のことで、デジタル組織が実現されることによって、生産性が幾何学級数的にあがっていく可能性があるというものです。
今号の論文、「競争力とIT投資の知られざる力学」では、前提になる部分、デジタル組織に関することについては触れられていません。約5年前、私はブリニョルフソン教授に衛星回線利用によるインタビューをしたことがあります。当時、彼はIT投資が生きる業種とそうでない業種があるのだと言っていました。たとえば金融やメディアはITとの親和性が高い業種です。必ずしも、全ての組織がIT投資の効果がプラスとして期待できるとは限らないということです。この論文はそのまま読むと、ロジックに無理があるように思えます。が、前提として「デジタル組織」という概念を意識しながら読むと理解が深まると感じました。(岩崎 卓也)
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http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690908
2008/08/12
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衛星通信?
IT投資は、“ヒト・モノ・カネ+情報”を管理する能力を測る指標になり得ると思いますが、“情報リテラシー”のレベルが高いか低いかによってROIの高い企業とそうでない企業に区分されてしまうのではないでしょうか?
ベンダーの立場からすると、“情報リテラシー”と“ITリテラシー”が混同・誤解されている企業では、成果を上げにくいという実感もあります。
コメントありがとうございます。
また、ベンダーの立場から、貴重なご意見をいただき感謝しています。
平野先生の論文に、組織IQの要件の一つに「外部情報感度」というものがあります。
外部情報感度については、
情報の絶対量が増加している今日、〈自社に影響を及ぼすであろう新たな情報を求め、絶えず周囲に注意を払い、その状況を読み取る〉
その能力が外部情報感度であると書かれています。
こちらもなるほどと思う部分がありました。
よろしければお手に取ってみていただけるとうれしいです。