2008/07/12

ゲームの世界での協働

今号、2008年8月号には『オンラインRPGは「協働する組織」の実験場』という論文を掲載しました。オンラインRPG(role-playing gameロールプレイングゲーム)には、全世界からコンピュータネットワークを介して何人もの人が集まります。参加者同士でパーティを組み、冒険、戦闘などの試練を乗り越え、目的の達成を目指します。オンラインRPGの世界では、理想のコラボレーションが実現しているといいます。
この論文は面白いです。しかし、全部をそのまま納得するのには疑問符がつきます。論文の執筆者もオンラインRPGはファンタジーの世界だということは承知しており、〈ゲームだからといって、頭から馬鹿にしないで欲しい〉と前置きしています。

とはいえ、この論文が提示するロジックはきちんと成り立っています。オンラインRPGには、リアルの世界とは違う独特の環境があります。それにより、リーダーシップ、インセンティブ、リスク・テイキングなどの面で、理想のコラボレーションが実現できる。これは近未来のビジネス環境のワーク・スタイルを垣間見ることになる、といいます。
具体的にいうと、オンラインRPGでは今まで誰とも付き合ったことのない人たちとパーティを組むので、「あ、うん」が通じません。チームのメンバーは自分の持っているスキルと相手のスキルをお互いに認めあわないと、バトルが上手く行かない環境におかれます。この場合、人によって得意技が違います。ので、オンラインRPGでは比較的たやすく状況に応じてリーダーが変わるようなこともあります。しかも、リーダーはみんなから選ばれるのではなくて、自然発生的に出てくるのです。

インセンティブの与え方についても、現実の会社とは違います。リーダーはバトルが終わった瞬間に褒美を上手く分けます。剣、薬などのアイテムやお金が仕事に応じて配分されるわけです。昔から心理学で言われていますが、褒めることが大事なのではなくて、すぐその場でその行為に対してポジティブな評価をすることが大事なのです。
しかし、企業では、少なくとも半年くらい経ってからでないと報酬に反映されないのが一般的です。組織ではポジティブな評価を有形なもの、特に金銭的なもので、すぐにあげるわけには行きません。できないから、褒めるという形で代替しています。オンラインRPGでは、いい仕事をすれば、その場でアイテムがもらえます。確かに、理想的です。なるほどと思いました。

この論文はリアルな世界に役に立つものです。が、「企業文化があれば」という条件がつきます。環境が整っていなければ、いくらツールを入れても効果は低いでしょう。そこをこの論文ではごまかしています。この論文は面白いけれど、全部納得できないと冒頭で申し上げたのはそのごまかしているように見える部分があるからなのです。(岩崎 卓也)

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http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690808
posted by ダイヤモンド社 at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 記事
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