先日、ソニーコンピュータサイエンス研究所(Sony CSL)の創立20周年記念シンポジウムに行きました。CSLはコンピュータサイエンスに関する研究を行う場として1988年2月に設立されました。所長は元慶應義塾大学教授の所 眞理雄氏です。
シンポジウムではソニーの社長 中鉢良治氏が1時間ほど講演しました。私は中鉢さんの講演を聞くのは初めてです。非常に面白い方だと感じました。
講演では学生の頃の話がありました。第一次石油ショックの頃、中鉢さんは東北大学大学院の学生で、工学研究科博士課程にいました。当時は学生運動が盛んで、マル経が流行っていたのです。今でいう産学連携なんてけしからんと言われていました。学を企業という資本主義の手先が汚すとはなにごとだ、という時代だったのです。
私は中鉢氏が何を話すのか、興味深く聞いていました。彼は修士のときに結婚したといいます。しばらく、奥さんのご実家に住んでいたそうです。
「今だから、言いますけど、いやでいやでしょうがなかったんですよ」
早く家を出たいと思っていた。そんな中、博士号を取りソニーに内定が決まりました。ソニーなら横浜に工場がある。これで仙台から抜けられる。わくわくして入社しました。ところが、言い渡された配属先は仙台です。しかも、同期では中鉢さん一人だけでした。なぜ、自分だけが仙台に残らなくてはならないのだ? 実は、担当教授が「中鉢君はまだ若いし、これから物入りだし。じっくり研究させてあげたいから、自宅から通ったほうがいいだろうと」
教授はソニーの人事部長と旧知の知り合いだったので、言ったようです。
「この時、私は産学連携は良くないと思いました」
などと、冗談めいて言っていました。もちろん、産学連携が悪いと言っているわけではありません。講演では産官学連携の重要性をアピールしていました。が、そのときは「やられた」と思ったそうです。
そのほか、朝日新聞の夕刊に出ていた夏目漱石の話などが続きます。結局、最後の5分になり、
「随分時間がおしてまいりましたが、今日の本題です」
と言うではないですか。そこで初めて「21世紀の科学と技術」という講演のテーマが出てきました。中鉢さんは思いのほか、面白い人でチャーミングな人だなって思いました。これが私の6月に得た大きな収穫です。(岩崎 卓也)
2008/06/28
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