2008/03/12

多角化におけるCSOの役割

インターネットなど、ITの分野が出てきたことで、事業のフィールドがあいまいになったと感じるときがあります。企業は今まで認識していたライバルとは違うライバルと戦っている可能性もあります。このような状況下、現場の勢いに任せていくと、配分すべきところに経営資源が配分されないという問題が出てきます。境界が甘くなり、自分たちが通用しないかもしれない苦手分野へ行軍を始めてしまうこともあるでしょう。あいまいになっているからこそ、誰かが自分たちの持っている競争優位の源泉について判断して、それに経営資源配分を合わせていかなくてはいけないと思うのです。

アメリカは60年代から高度成長期の波に乗って多角化を進めて行きました。その結果、会社全体の利益率が下がって、コングロマリット・ディスカウントが起き、シナジーを生み出せないケースもありました。関連性の少ない分野の多角化をしてしまったことが原因の一つでしょう。あるいは、シナジーを生み出すためのカタリストの役割など、コーポレート本社の支援がより必要だったこともあると思います。もちろん、モノカルチャーでは企業は大きくなれません。事業には派生的なビジネスが発生してきますから多角化は必然でしょう。

今、多角化をどうやって上手くマネジメンとしていくのか、もう一度問われているような気がします。今号の2008年4月号では最高戦略責任者(CSO)を特集しています。多角化の問題を問うということは、突き詰めていくと企業戦略の実現という問題に行き着くと思います。ただ単に現場のエネルギーとか、能力とか、現場力だけに委ねて、企業の全体の価値を上げていくのは難しいでしょう。企業がさらなる成長を求めていくとき、CEOやCOOのキャリアや経験値からみて、CSOという存在が良い場合もあるでしょう。CSOは必須だとは思いません。でも、事業のフィールドがあいまいになった今日、CSOの存在を正当化しうるような事業環境の複雑さは以前よりも増していると感じます。(岩崎 卓也)
posted by ダイヤモンド社 at 09:03| Comment(2) | TrackBack(0) | 記事
この記事へのコメント
ITに関連して、もう少し別のことを考えています。
近く、電力・ガス業界の本を出すのですが、公共財のことを少し考えました。送電線は公共財か、ということをイメージしてもらえるといいと思います。
さて、同じ議論をITでします。そのとき、OSは公共財か?という議論ができます。公共財だから、マイクロソフトは非難され、それに気づかないために凋落した、ともいえます。
出版の場合はどうでしょうか。電力会社が発電所と需要家を結ぶビジネスだとすれば、出版は著者と読者を結ぶビジネスなのかもしれない、そういう考えもあると思うのです。そのとき、出版社から取次、書店というのは、送電線や変電所と同じです。すると、これは公共財かもしれません。そのことに無自覚だった新風舎が倒産したのはそういうことかもしれませんし、こうした考えに立つとベストセラー中心のビジネスモデルでは成り立たず、草思社のように経営に行き詰る、そういうことになるのかもしれません。

言いたいことはこういうことなんです。ITというものが、「企業が何かを送り届ける」ビジネスモデルから「誰かが別の誰かに何かを送り届ける」ビジネスモデルに変えてしまったのではないか、ということなんです。言い方を変えるのであれば、ビジネスを展開していく上で、公共財として開放すべきものと、利益の源泉として取り組むべきものの仕分けが変わってきたということなんです。
CSOにとって、何が公共財であって、何がそうではないのか、これをきちんと見分けるということが重要になってきているのではないでしょうか。

最近、mixiが規約改正で失敗をしています。ここでも、SNSというシステムそのものは、いくら自社で構築しようと、それは公共性が高いものですし、そこで提供されている日記は利益の源泉にはならない。そうではなく、日記がいかに効率的に人に伝わるのか、そこに利益の源泉があったはずだ、そう思うのです。
Posted by 本橋牛乳 at 2008年03月13日 19:55
本橋牛乳さん

出版が著者と読者を結ぶビジネスかどうかは別として、
特に、ITではさまざまなものに対して「オープン」かどうかが議論になるケースが多くあります。
公共財かどうかの見極めが大切という点はその通りだと思います。
Posted by ダイヤモンド(スタッフ) at 2008年03月18日 15:24
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