2008/03/01

ポーターの戦略論だけではない

ハーバード・ビジネス・スクールというと、マイケル・ポーターの戦略論を思い出す人が多いでしょう。もちろん、ポーターのフレームワークを踏まえておかなければならないのは暗黙の了解としてあるでしょう。ただし、学会にはポーターのポジショニングとややぶつかる学派もあります。組織能力や経営資源に重きを置く、リソース・ベースト・ビュー(resource-based view)といわれている学派がそうです。
日本でいうと研究科長に相当する、ハーバード・ビジネス・スクールの戦略担当者は、現在リソース・ベースト・ビューを提唱しているシンシア・A・モンゴメリーという女性です。ポーターとモンゴメリーの共編の『Strategy: Seeking and Securing Competitive Advantage』という本も出ていることからも、ハーバード・ビジネス・スクールはポーターばかりではないことがわかります。

次号ではモンゴメリーが書いた論文を掲載します。タイトルは「戦略の核心」です。彼女の夫はリソース・ベースト・ビューを最初に提唱したBirger WernerfeltというMIT Sloan School of Management.の教授です。この論文でモンゴメリーは「原点に戻りましょう」と言っています。戦略というのは問題解決の道具ではない。企業の目的を実現させるためのものです。ここでいう目的とは、何をなしとげたいのかということで、「金儲けをしたい」というのは目的ではありません。ボスコンの創業メンバーの一人がハーバード・ビジネス・スクールで教えていたとき、ビジネス・スクールの学生に「十年後のあなたは何になっていますか」という質問をしたそうです。8割以上の学生が結婚して、子どもができ、車や家があって、会社ではエグゼクティブに成っているといったことを話しました。そして、残りの一部が「こういうことを成し遂げたい」と回答したそうです。前者は目的ではありません。後者がモンゴメリーの言う目的になります。

「一億円稼ぐ」「一兆円企業になる」というのは野望だけど目的ではありません。一兆円企業になりたいのなら、どんな事業に手を出しても良いわけです。正しく目的を持っていないと、会社というのは自分たちのアイデンティティを毀損していくのです。
「しょせんお金のためにやっているのですよ。それも自分のお金じゃなくて、会社のね……」
このような自嘲気味な言葉を耳にすることがありますが、処世論で青臭い話をするなら、私はこの言葉は吐くべきではないと思うときがあります。お金のためは違うのです。
この論文を読んで、戦略というのは金儲けのためのツールではないことを痛感させられました。(岩崎 卓也)
posted by ダイヤモンド社 at 11:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 記事
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