今月号に掲載した論稿に「マネジャーとリーダー:その似て非なる役割」というものがあります。マネジャーとリーダーの役割は似ていますが異なるのです。執筆したのはアブラハム・ザレズニック氏です。精神分析家で、ハーバード・ビジネススクールの教授として有名でもあります。この論文はマネジャーとリーダーの違いについて述べられています。
論文の中で確かにそうだなと思ったのは、師匠の存在がリーダーにとって重要であるという点です。
〈自分がやりたいことを見つけられるかどうかは(中略)師にめぐり合えるかどうかにかかっている〉と。ここでいう師は自らも才能を開花させており、親代わりになって面倒を見てくれるような人でなければなりません。
アメリカ合衆国の第34代大統領 アイゼンハワーの話が紹介されています。第一次世界大戦直後、彼はパナマへ志願します。理由はかねてから私淑していた先輩将校 コーナー氏がいたからです。この人の下についたことで、それまではさしたる戦歴にも恵まれなかったアイゼンハワーは頭角をあらわしたのです。すぐれた才能の持ち主が学生時代平凡だったということはよくあります。アインシュタインも凡人だったし、カーネギーもいい師匠にめぐりあえたおかげで伸びたのだといいます。
私にも何人か師匠と呼べる人はいます。その中の1人は社史を作っていた人でした。社外の方です。ずんぶん前のことですが、一行でも気に入らなかったら、納得いくまで文を変える人だったのです。とことんやるので、納期には遅れるし、予算もオーバーしてしまいます。でも、出来上がったものは完璧でまさにアートワークに近いと言っていいほどなのです。賞をもらうこともありました。納期や予算については見習ってはいけませんが、本を作りあげていくというところで学ばせてもらいました。
別の方で翻訳の原稿整理がすごく上手な人がいました。一度、私が訳したものを見てもらったことがあります。もとの文の痕跡がなくなるくらい、書き加えていくのです。
「その言葉は原文にはないですよ」
私がそう言うとその人は答えました。
「この日本語でわかるのかね?」
確かに私はわかっていませんでした。言い返せません。私の書いた原稿は鉛筆で直され、最後はグレーで覆われてしまいました。
メンター制度を導入している企業は多くあります。確かに、相談相手としてのメンターはいたほうが良いと思います。でも、単なる先輩というだけでは充分ではありません。社内のメンターのほかに、社外にメンターを作ることも大切なのでしょう。外にいる人のほうが距離が開いている分、良い関係を持続させやすいのです。メンターにはある意味、アイドルをあがめているのと同じ要素が必要なのかもしれません。ともあれ、私が二人の先輩から受けたものははかりしれないくらい大きなものであることは確かです。(岩崎 卓也)
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※「DHBR」2008年2月号は一冊からお求めになれます。
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690208
2008/01/12
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コメントありがとうございます。確かに、メンター制度のメリットはたくさんありますよね。ただし、メンター制度には問題がゼロというわけではありません。詳細は2008/02/09のブログ記事、「師匠について(その2)」で岩崎が解説いたしました。こちらの記事で触れている「メンタリングの原点」という論文はいくつかの問題を指摘しています。「DHBR」2008年3月号に掲載されています。よろしければ、ご参照くださいませ。