2008/01/09

リーダーシップ論から学ぶ権力の使い方

「DHBR」2008年2月号の特集は「リーダーシップ:経営力の本質」です。今月号に掲載した「権力と影響力」の執筆者はジョン・P・コッター氏(ハーバード・ビジネススクール 名誉教授)です。彼はアメリカのリーダーシップ研究のオーソリティで、弊社刊行の『カモメになったペンギン』の著者でもあります。

1990年には『パワーと影響力』(弊社刊)が刊行されています。この本の中でコッター氏は“power” (パワー)という単語を使います。これまで、日本では“power” はそのまま「パワー」と訳していました。が、もともとここでいうパワーというのは権力を意味します。
2月号の「「権力と影響力」ではよりわかりやすくするため「権力」という訳をつけました。
権力という言葉は企ての匂いがしますし、人を力で動かそうとするような灰色なイメージも漂います。でも、本来、権力というものはそうではないのです。この論稿では人を動かすには権限委譲が大事だということが書かれています。より正確にいうと、優れたリーダーは権限をどのように行使するのかがこの論稿で述べられているのです。

さらにタイトルに「影響力」とついている通り、どうすれば効果的な影響力を発揮しうるか、という観点から権限の行使について述べられている点も特徴的です。権力というのは職位といった形で組織から公式に与えられたものです。以前にもこのブログで書きましたが、与えられたからといって、すぐに全てを使ってはいけません。周囲からその権限を行使することを許されて初めて使えるのです。

コッター氏の論稿を読んで思い出したのが、2007年8月号「製品開発力のプロフェッショナル」で掲載した「プロダクト・インテグリティすり合わせの製品開発力」(藤本隆宏 東京大学大学院 経済学研究科 教授 他)です。この論稿には「重量級プロダクト・マネジャー(Heavy weight product manager)」が登場します。これはトヨタの話なのですが、重量級プロダクト・マネジャーは通常の範囲から逸脱して動く場合もあるのです。
営業、トレーニング研修セクション、現場、サプライヤーなどに対して、意見を言います。そういう意味で、彼は文字通りヘビィ・ウエイトなのですね。まさしくトヨタの自動車開発の最終責任者というのは、周囲に権限を行使することを認められ行使していると思ったのです。

これにはトヨタの社風もかかわっていると思います。一般的に、ある部門の責任者が他部門の人たちに頭ごなしに指示命令をし、場合によっては叱責を与えるなんていうことはありえないことです。でも、私はもしかすると、そういうことが大事なのではないかと思いました。なぜなら、組織では職位や職種、年次といったもので権限がある程度規定されています。それを杓子定規に使い、守っているという組織の現実があります。そのほうが居心地はいいのかも知れません。

ただ、それぞれの権限は染み出るかのように逸脱しあうくらいのほうが場合によってはいいこともあるのではないでしょうか。権力の行使に当たっては職位ではなく、その人の実力に応じて、その人の関係各位から認められればもっと行使しても良い場合があるのではないかと思います。もちろん、内部統制等を考慮する必要も出てきますし、単純に誰でもが行使するというのではありません。ただ、部門間同士、クロスファンクショナルにしようと言っている割には、権限が固まっているので進まないケースを目にすることがあります。「重量級プロダクト・マネジャー」の例から、権限は会社からあたえられるものではなく、自分からとりつけてくるものなのかなと思いました。(岩崎 卓也)
------------------------------------------------*
※「DHBR」 2008年2月号の発売は1月10日(木)です。
※バックナンバーはこちらでお求めになれます。
2007年8月号「製品開発力のプロフェッショナル」
 「プロダクト・インテグリティすり合わせの製品開発力」
 「ブルー・オーシャン戦略の方法論」など掲載
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690807
posted by ダイヤモンド社 at 06:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 記事
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※半角英数字のみのコメントは書き込みができないようになっています。

この記事へのTrackBack URL

※半角英数字のみのトラックバックは受信されないようになっています。