2007/12/12

ビジネスマンが道徳心を失う瞬間

2008年1月号『「公器」の経営』のなかで、私が面白いと感じた原稿の一つに教育心理学者のハワード・ガードナーが執筆した『ビジネスマンは道徳心を失いやすい』があります。ガードナーはハーバード大学 教育学大学院の教授です。日本でも「ハワード・ガードナーを読む会」があり、知る人ぞ知る存在なのです。

ガードナーは人間の知能というのは7つの知能で成り立っていると言います。これを“multiple intelligence”(マルティプル・インテリジェンス)と呼び、日本語では多重知能または多元的知能と訳されています。彼は今までの一元論、二元論で語られてきた頭の良さとは違った形での知能を提示します。

インタビューはHBRアメリカ本誌が行い、我々DHBR編集部が日本語に訳しました。その中で彼は人間の知能のほかに徳(virtue)の部分にも言及しています。なぜビジネスパーソンはethical mind――ここでは道徳心と訳しましたが、道徳心を失ってしまうのか。その答えをガードナーは示します。

私が面白いと思ったのは、子供の頃から高い道徳観を持って成長した人でも、組織に入ると忘れてしまう。朱に交わると赤くなってしまう、と彼は言うのです。なぜそうなるのか? ビジネスパーソンはプロフェッショナルではないからです。ここでいうプロフェッショナルというのは、長い歴史があり、その歴史の中で職業に従事する人を律し、規範を破った者を罰する仕組みを作り上げたものを指します。医師のようにインターンを経て、臨床を行ない、技術をみがきながら一流を目指していくといった職業がプロフェッショナルなのです。プロとは自らの職業を神にprofess(プロフェス)した人を言います。

アメリカの場合、ビジネススクールを出たら、すぐに経験がなくても管理職になれるケースが多くあります。誰でもビジネスパーソンになれる。だから、わかりやすくて共通のものさしである「利潤」によって突き動かされてしまうようになる、と彼は言うのです。私はこの論文を耳が痛くなる思いで読みました。確かに、歴史が浅ければお金や利潤以外の基準を確立するのは難しいでしょう。

また、彼が指摘しているように、悪いことをしたことに対するフィードバックをしていくシステムは不十分なところがあるかもしれません。これはビジネスパーソンだけでなく社会全体としてあてはまることだと思います。ガートナー教授はとても厳しい人です。一つひとつの指摘に頷きながらも、自省させられる内容になっています。(岩崎 卓也)

※「DHBR」1月号、一冊からお求めになれます。
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690108
posted by ダイヤモンド社 at 01:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 記事
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※半角英数字のみのコメントは書き込みができないようになっています。

この記事へのTrackBack URL

※半角英数字のみのトラックバックは受信されないようになっています。