今月号の特集は「脱管理主義のリーダーシップ」です。そのなかに『「理想の職場」のつくり方』という論稿があります。ここで、ポイントとなる言葉は「シグニチャー・エクスペリエンス」です。まだ、日本語になっていないので今回の論稿では訳をつけていません。
この言葉の意味は、その組織ならではの、もっと言うとその組織でしか得られない業務経験を指します。
実は、シグニチャー・エクスペリエンスがちゃんとしている会社は離職率が低いのです。それは当然のことで、その組織ならではの経験があるから従業員にとってその職場が好きな場所であることを保証できる、適さない人材は採用に至らない、といったことが可能になるのです。結果として、自社に適した人材を採用できるのです。
この論稿は何をメッセージとして発しているのかというと、今、日本企業は多数の人材を採用しています。リクルーターは口にこそしませんが、ふるいをかけて残ればいいという本音が見え隠れします。規模を確保することで、最終的に残るであろう優秀な人材が10パーセント程度ならば良いといった発想があるように思われます。この考えに対する警鐘がこの論稿にはあるのです。
シグニチャー・エクスペリエンスを大切にしている会社は、採用した人数は少人数でもいいからそのうちの9割を残すという考え方をします。300人を採用して30人を残すのか、33人採って30人を残すのか。そういうことなのです。
事例としてホール・フーズ・マーケットという企業を取り上げています。この会社は日本にはまだありませんが、無農薬、健康志向の高い食材を扱っています。特徴的なのは従業員が採用に携わるのです。肉売り場から肉売り場で新しく働く人を採用し、チームの業績は個人の業績とリンクさせています。仲間になれないやつは採らない、といったやり方でもあるのです。
そのほか、本論ではゴールドマン・サックスの人材募集に関するシグニチャー・エクスペリエンスや、スターバックスの店舗でのOJTなど、具体的な事例の解説が掲載されています。
人材争奪戦が繰り広げられるなか、片っ端からかき集めるのが最良のやり方だとはいえません。シグニチャー・エクスペリエンスは採用に当たって何にポイントを置くのか、再考させてくれる新しい言葉だといえます。(岩崎 卓也)
2007/08/11
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