2007/07/18

「すりあわせ型」の製品開発

「プロダクト・インテグリティすり合わせの製品開発力」は90年に弊誌に掲載したものを【名著論文再掲】として、当月2007年8月号で紹介させていただいております。今回は新たに新訳を施しました。著者の藤本隆宏氏は東京大学「ものづくり経営研究センター」のセンター長で、『日本のもの造り哲学』の著者としても知られています。

こちらの論文では、日欧米の自動車会社に対する調査結果をもとに、「製品統合性(プロダクト・インテグリティ)」「すりあわせの製品開発」について論じています。ホンダのアコードの開発を事例として紹介しております。私はこの論文を再読し、素晴らしい話だと改めて感じました。今読んでも決して古くないのです。この論文で語られる「製品統合性(プロダクト・インテグリティ)」、これこそがトヨタ、ホンダといった日本の自動車メーカーが持続的成長を実現しているカギとなっているのだとこの論文から読み取れるのです。

「すりあわせの製品開発」というのは、完全な分業ではないところに特徴があります。組織においてもマネジメントにおいても、プロセスがシームレスなのです。例えば、製品エンジニアと生産エンジニアが協力し合い金型などを共同開発する、生産エンジニアが試作初期段階で設計についてテストし問題をフィードバックするなど、このほかにもさまざまなことがあてはまります。製品開発を「すりあわせ型」方式でやっているところが、日本の自動車メーカーの強みなのではないでしょうか。

「すりあわせ型」の製品開発でポイントとなるのが「重量級プロダクト・マネジャー(Heavy weight product manager)」の存在です。設計からデザイン、製造、部品のサプライヤーまで、製品開発に携わる人を統括するような組織、人が日本にはいるのです。軽量級ではなく重量級というところも大切な点です。もちろん、自動車メーカーだけでなく、エレクトロニクスなどの分野においても、重量級プロダクト・マネジャーがいる会社は多くあると思います。雑誌の編集長の場合、文章やデザインだけでなく紙質といった細部にわたり全体をみながら雑誌を作っていきます。そういう意味では、重量級プロダクト・マネジャーに近いともいえます。

他方、外部に製造工程を出し、完全な分業を行うものを「モジュラー型製品」と呼びます。このモジュラー型の製品の開発はアメリカが強いようです。まだ、正式な論文になる前のディスカッションペーパーの段階ですが、日本はすりあわせ型の開発が向いており強いといえるようです。このことについては今後、さらに検証されていくことだと思います。少なくとも、現段階でいえることは、製品開発にはすりあわせ型とモジュラー型のふた通りあり、そのことを認識せずに進めていくと、大きなミスにつながる可能性もあるということです。もちろん、製品によってはモジュラー型のほうが合っているものもあります。とはいえ、日本企業の強みとなる「すりあわせ型」の製品開発。再度理解するにあたり、本論文は有効ではないかとも思っています。(岩崎 卓也)
posted by ダイヤモンド社 at 01:09| Comment(0) | TrackBack(1) | 記事
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Excerpt: 日本の力の源泉だ、と思っているポイントは「正確さ+お金に惑わされない正直さ」に尽きると思います。トヨタにしてもキャノンにしてもその日本人の力が製品に反映されているのです。 日本ブランド - 債券・株
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