「ブルー・オーシャン戦略」の良いところは、ある意味、方法論であるところです。これまでイノベーションに関する方法論は、成功確率をあげるものしか存在しませんでした。たとえば特別プロジェクトチームを立ち上げる、クロスファンクションでいろいろな人材を集めるなど、要するに多様性がイノベーションのカギだと言われていました。成功するかもしれないし、失敗するかもしれない。そのなかで確率を上げていきましょう、といったアプローチしかイノベーションにはありませんでした。
もちろん、ツールを使えば誰でもが成功するというものではありません。ブルー・オーシャン戦略も同様、成功確率100%とはいえません。ですが、今月号に掲載した論稿、「ブルー・オーシャン戦略の方法論」の執筆者から説明を受けた限り、確かな方法論ではあると思いました。「ブルー・オーシャン戦略」を方法論として使うコツは既存のストラテジーのフレームワークを否定することがポイントだと思います。たとえば、「セグメンテーションでは需要が増えない」といった考えをするわけです。既存のやり方では、セグメンテーションを切って、細分化し、そのセグメントについて深堀りしてニーズを読んでいました。ところが、これでは、ひとつずつに関しては需要を小さくしているから需要が増えない、そのように否定的な視点で従来からあったものをみていくわけです。
話は変わりますが、ヒット商品というのは戦略のミスから生まれるともいえます。ヒット商品はセグメントを細分化するのではなく、加えることで発生するものなのです。「こんな思わぬお客さんがいたのか! 気づかなかった」という戦略をミスした結果、大ヒット商品が生まれるといえます。
実は、「ブルー・オーシャン戦略」は、そういう戦略のミスを見つけるための方法論なのです。
任天堂のWiiやプレイステーションの話は本論にも書いてあるので詳細はそちらに譲りますが、プレイステーションの設計、開発の方向性というのはセグメンテーションです。どんどんヘビーユーザー向けにスペックを高度化していったわけです。画像がきれい、処理能力が高い、ストーリーが難解というように……。一方、Wiiというのは高齢者まで楽しめるものになっています。それゆえに不要とは言わないけれども、あえてそのハイスペック仕様に背を向けたことが、成功要因になっているわけです。
そうすると、携帯電話の機能をおさえたものとどこが違うのかと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。Wiiはプレイステーションとは違うところに解がある、ということを見つける作業過程が違うのです。具体的にいえば、Wiiはノンカスタマーの声を聞きました。ここがキーになっていたと思います。
これまでは、既存のお客さんのことを知ろうとすることで、いいモノを作ろうとしていました。マーケティングというのは、そういうことだと思います。CRMはまさにそうですね。従来のマーケティングのやり方を否定するわけではないのですが、それはあくまでもレッドオーシャンでの話であって、ライバルとしのぎを削っていく市場での考え方です。
先行者利得を取って、ある一定の市場を一気にとろうとするのならば、ブルー・オーシャン戦略をおすすめしたいわけです。低価格でもいいからカバレッジを最大限に広げて、大ヒットを取りたいというような製品であるのならブルー・オーシャン戦略が向いているのではないでしょうか。
ただし、1番乗りになっても、2番手、3番手が現れ、いずれその市場はレッドオーシャンになります。この点がまた誤解されているところです。ブルー・オーシャンは永遠ではありません。これだけ市場の競争が厳しいわけですから、寿命が1年とか半年ということもあります。それゆえ、前回のブログで申し上げた通り、製品ライフサイクル、ベルカーブの山を左にもってくることが大きな魅力となるわけです。
いままでのマーケティング戦略で予想できなかったことを予想できるツールが「ブルー・オーシャン戦略」なのです。(岩崎 卓也)
2007/07/14
この記事へのTrackBack URL
※半角英数字のみのトラックバックは受信されないようになっています。
※半角英数字のみのトラックバックは受信されないようになっています。

批評対象としては、かのコアコンピタンスやビジョナリーカンパニーなどに加え、ブルーオーシャンも入っています。
著者の話を聞きましたが、ブルーオーシャンについてはいわゆるSurvivor Biasの視点が欠落している、と論じていました。
じきに邦訳が出たりDHBRでも取り上げられることと思いますが、編集長がご参照になると興味深いのではと思い、紹介させていただきました。本のホームページはhttp://www.the-halo-effect.comです。
さっそく購入してみます。情報、ありがとうございます。
金科玉条とされている戦略論に、あえて物申すのは大切なことだと思います。
その書籍が届くのが楽しみです。
その反論がはたして正当性があるのかどうかも読みどころかと。
ちなみに、ハロー効果については、昨今ますます顕著というか、
由々しい状況になりつつあるのではないかと思っています。
もう少し、権威を疑わないといけないですよね。
取り急ぎ、御礼ならびに拝復まで。