小誌4月号に登場するフランス哲学者、マラブー博士は「可塑性」という概念からヘーゲル哲学を読み解いている点に特徴があります。
私たちは粘土で作ったものを塑像(そぞう)と呼びます。これらは力を加えることで形は変化しますが何らかの形(フォルム)は維持されます。このようなものを「可塑性がある」といいます。
特集記事の『「弁証法」の可能性』でも触れていますが、マラブー博士は脳科学を哲学に持ち込んだ方です。「可塑性がある」ものとして脳をあげ、脳は過剰な抑圧に抵抗しながらも、しなやかさを兼ね備えている点を指摘しています。
ところで、可塑性はフランス語で「プラスティシテ(plasticité)」と言います。他方、「プラスチック(plastic)」と言ったときは、可塑性物質といった意味のほか、プラスチック爆弾を指すこともあります。
可塑性(plasticité)という言葉は、造形芸術(art plastique)などと、あらゆる形の消滅であるプラスチック爆弾(plastic)という対立、二義性を持っています。つまり、可塑性(plasticité)という言葉は、その複数の対立するものを結ぶ線や糸の上で対立の中央に思考を立てることを余儀なくさせる言葉なのです。
私が思うに、この可塑性はビジネスの現場で役に立つのではないでしょうか。あるアイデアが出てきたとき、私たちはアイデアを出した人の意見をそのまま出すのではなく、第三者の意見によって形を変えたものを生み出していきます。第三者の意見をアクセプトできなければ、アイデアは素材のままなのです。弁証法的な思考をすることで、対立し、矛盾する複数のアイデアに対して、形を消滅させるのではなく形を維持したまま新しいものを生み出すことができるのです。可塑性を備えた弁証法的な力は、形の作用と、形を爆発し破壊する可能性を一体化させます。
この力が脳において機能することで、新しい武器になりえると確信している。
マラブー氏が述べた言葉は実に印象深いものがありました。(岩崎 卓也)
2007/03/13
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