2006/06/29

競争と循環性

前回のブログで、コストダウンのための競争についてコメントをいただきました。ありがたいことです。そこで、コメントの回答を兼ねて、消費財の競争のライフサイクルについて述べたいと思います。

概して消費財の場合、競争にも、ライフサイクルがあります。まず(1)技術開発競争、(2)商品開発競争、(3)市場競争(価格競争、効率化競争を含みます)、そして(4)付加価値競争です。ちなみに、(1)と(2)は一まとめに語られることが多いかと思います。

サイクルと申し上げたように、循環性があります。(1)ないしは(2)が、いわゆる「コモディティ化」(市場浸透度が高くなり、競合商品にあふれ、差別性が小さくなる)と、市場シェアを求めて、(3)価格競争や宣伝合戦が起こります。次には、これにやや遅れて、ただし同時平行的に、価格競争から逃れようとして、(4)付加価値競争が始まります。

(3)と(4)において、キャッシュフローが潤沢であれば、既存市場ではシェアを維持するために攻防を続けながら、新技術や新商品開発に向けてR&Dに資金を回し、次なる競争に備える。そうでなければ、どこかの段階で撤退(売却)する、M&Aによって顧客基盤を拡大するといった決断に近づいていく。多くの市場において、このような盛衰が繰り返されてきたのではないでしょうか。

ちなみに、なぜシェアの争奪戦が起こるのか。1970年代にハーバード・ビジネススクールとゼネラル・エレクトリックの共同調査「PIMS(profit impact on market strategy)プロジェクト」によって、シェアの大小によって利益の大小が決定されること(経験則的にはビジネスの常識と理解されていました)がほぼ証明され(寡占市場においてはそうではない)−−最近はその相関性について言及されることはありませんが−−以後、これがビジネスの基本原則として産業界に浸透していきました。蛇足の蛇足になりますが、ジャック・ウェルチが"Globally, No.1 or No.2"(市場シェアで1位ないしは2位の事業以外は撤退する)と言ったのは、このPIMSに基づいています。

市場シェア競争(ないしは価格競争)が起こると、ちょうどエレキからデジタルの時代への転換期の家電商品が典型ですが、世界的に各社一様に意匠デザインに力を入れたことがありました。アップルも<iMac>以降の戦略もしかりです。GEのようにばっさりNO.3の地位の事業を売却できない場合、(技術ベースでの競争が終わりかけると)このような付加価値戦略が台頭し、付加価値によってプレミアム価格の実現を目指し、失われたシェアと同等の価値を創造しようとするわけです。ちなみに、これがB2Bの場合だと、サービスとかが付加価値創造の要素となります。

以上を踏まえたうえで申し上げると、イノベーションと市場競争や価格競争は、バリューチェーンの川上か川下かという戦場の違いがありますが、基本的には因果が存在しているだけでなく、循環性があるため、コストダウン競争は必然であり、とはいえここから抜け出るために、また新技術、新商品、破壊的な付加価値の登場といった進化が起こると考えられます。当該事業の担当者にすれば、たまったもんじゃないですが、必ずしも悪ではないかと思います。(岩崎卓也)
posted by ダイヤモンド社 at 17:18| Comment(0) | TrackBack(1) | 記事
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