今月の特集に、HBRロシア編集長が「ロシア・ビジネスの十戒」という論稿を寄せていますが、その中で、「腐敗は日常の一部であり、うまく対処する術を身につけよ」という教えがあります。その背景には、ロシアでは賄賂は日常茶飯事であり、このような腐敗行為と無縁でいられることはほぼ不可能であるという、何とも隔靴掻痒の現実があるからです。
「ファシリテーション・ペイメント」という言葉をご存知でしょうか。これは、経済取引上の合意へとこぎつけるに、何らかの金銭的便宜を図ることです。羊羹の箱が二重底になっていて、そこにお金を隠して渡していたなんて時代もあったようですが、このようにこそこそすること自体、日本人には「賄賂は悪である」という認識が備わっています。ここ数年は、接待飲食ですら厳禁とする企業も増えています。ですから、ロシアをはじめ、東欧やCIS(独立国家共同体)諸国における、公然と賄賂を要求する国で事業展開するのは、相当きついだろうなぁと思います(そういえば、90年代後半の第二次中国ブームの際にも、同じような問題提起があったことを思い出しました)。
ところが、アメリカのFCPA(外国不正行為防止法:Foreign Corrupt Practices Act)は、少額のファシリテーション・ペイメントを認めていたりします。ヨーロッパでも、個人同士のやり取りはダメですが、企業同士のやり取りならかまわないとしている国もあります。実際、90年代後半、パーシー・バーネビクがまだABBの会長を務めていた時、フォルクス・ワーゲンへのファシリテーション・ペイメントでは、倫理性については問われましたが、法的には問題ないという見解でした。ただし、イギリスの反テロ法(Anti-Terrorism, Crime, and Security Act)は、ファシリテーション・ペイメントについてはゼロ・トレランス(容赦無用)です。いやはや、難しい問題ですが、こういうところで躓きやすいのでしょう。
ちなみに、日本では賄賂と同様、御法度とされている行為に「談合」がありますね。某旧帝国大学の某教授が以前、「談合は優れたシステムである」とおっしゃっていました。もちろんオフレコですが・・・・・・。官製談合などはもってのほかとはいえ、「資材や人の調達については、地元業者のほうが詳しく、効率的である。しかも、地域ごとに異なる気候や地質、文化や慣習などを踏まえたうえで、ふさわしい建材や建築方法を知っているのも地元業者である」という主張でした。なるほど。入札制度は質を正しく評価できない。したがってコスト競争になる。耐震偽装などは、コスト競争の弊害ともいえなくもない。しかも談合は、経済学でいう「取引コスト」も小さくて済むのだそうです。たしかに、あうんの呼吸でいけますから、効率的といえます。
ロシアHBRの編集長の論文がきっかけとなって、「ルールを一元的に解釈する危険」、そして「矛盾を受け入れる重要性」を再認識しました。フランスで働く日系コンサルタントいわく「日本人は多面的に考えられないから、特にヨーロッパで失敗する」。何をかいわんやですね。(岩崎卓也)
2006/04/18
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