先日、ソニーコンピュータサイエンス研究所(Sony CSL)の創立20周年記念シンポジウムに行きました。CSLはコンピュータサイエンスに関する研究を行う場として1988年2月に設立されました。所長は元慶應義塾大学教授の所 眞理雄氏です。
シンポジウムではソニーの社長 中鉢良治氏が1時間ほど講演しました。私は中鉢さんの講演を聞くのは初めてです。非常に面白い方だと感じました。
講演では学生の頃の話がありました。第一次石油ショックの頃、中鉢さんは東北大学大学院の学生で、工学研究科博士課程にいました。当時は学生運動が盛んで、マル経が流行っていたのです。今でいう産学連携なんてけしからんと言われていました。学を企業という資本主義の手先が汚すとはなにごとだ、という時代だったのです。
私は中鉢氏が何を話すのか、興味深く聞いていました。彼は修士のときに結婚したといいます。しばらく、奥さんのご実家に住んでいたそうです。
「今だから、言いますけど、いやでいやでしょうがなかったんですよ」
早く家を出たいと思っていた。そんな中、博士号を取りソニーに内定が決まりました。ソニーなら横浜に工場がある。これで仙台から抜けられる。わくわくして入社しました。ところが、言い渡された配属先は仙台です。しかも、同期では中鉢さん一人だけでした。なぜ、自分だけが仙台に残らなくてはならないのだ? 実は、担当教授が「中鉢君はまだ若いし、これから物入りだし。じっくり研究させてあげたいから、自宅から通ったほうがいいだろうと」
教授はソニーの人事部長と旧知の知り合いだったので、言ったようです。
「この時、私は産学連携は良くないと思いました」
などと、冗談めいて言っていました。もちろん、産学連携が悪いと言っているわけではありません。講演では産官学連携の重要性をアピールしていました。が、そのときは「やられた」と思ったそうです。
そのほか、朝日新聞の夕刊に出ていた夏目漱石の話などが続きます。結局、最後の5分になり、
「随分時間がおしてまいりましたが、今日の本題です」
と言うではないですか。そこで初めて「21世紀の科学と技術」という講演のテーマが出てきました。中鉢さんは思いのほか、面白い人でチャーミングな人だなって思いました。これが私の6月に得た大きな収穫です。(岩崎 卓也)
2008/06/28
2008/06/25
軽い商品と重い商品を量る単位の違い
戦略や組織を考えるにあたり、人事施策から考えることは正しいとは言えません。とはいえ、固有名詞によって事業の成否が決まる側面はあることも事実です。新規事業を始めようとするとき、リーダーが誰かによって、「上手くいく」「いや、心配だ」、などと言われることがあります。組織は事業の特性に合わせて作っていくべきです。が、範囲の経済が働くよう、事業が何であれ、一律にあてはめようとするケースを目にすることがあります。範囲の経済、制度の効率を上げていくための人事施策をやっている限り、ビジネスは成長しないのではないでしょうか。
新日鉄では一時期半導体を製造していました。半導体の製造部門、鋼鉄の製造部門、二つの組織が同じ会社の中に存在していることになります。物ごとをトン当たりで見ている組織と、半導体のようにグラムで見ている組織が共存しているのです。トンとグラムでは設備が違います。利益率も異なります。求められている知識、スキル、人脈も関係者のロビー活動の方向性も全部違います。両者が並存し、給与体系、福利厚生、人事もみんな同じにするのはありえないことです。
それでも、一律に当てはめようとしてしまうものです。半導体は技術の最先端を行く物です。ライフサイクルは短い。その市場に、鉄鋼という既存の制度を流用し当てはめてしまう。トンの世界で作られた制度をグラムの世界に持っていくのには無理があります。柔軟に変えていく努力をしないと成長はないのでしょう。ただ、実行しようと思っても、就職というより就社という価値観が残っている組織ですと、難しい物があります。適材適所の人事制度と、それに合わせた給与体系に変えていくことが必要です。ただ、どう折り合いを付けていくのかは大変なことなのだと思います。(岩崎 卓也)
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▽一冊からお求めになれます。2008年7月号(6月10日発売)
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059690708
新日鉄では一時期半導体を製造していました。半導体の製造部門、鋼鉄の製造部門、二つの組織が同じ会社の中に存在していることになります。物ごとをトン当たりで見ている組織と、半導体のようにグラムで見ている組織が共存しているのです。トンとグラムでは設備が違います。利益率も異なります。求められている知識、スキル、人脈も関係者のロビー活動の方向性も全部違います。両者が並存し、給与体系、福利厚生、人事もみんな同じにするのはありえないことです。
それでも、一律に当てはめようとしてしまうものです。半導体は技術の最先端を行く物です。ライフサイクルは短い。その市場に、鉄鋼という既存の制度を流用し当てはめてしまう。トンの世界で作られた制度をグラムの世界に持っていくのには無理があります。柔軟に変えていく努力をしないと成長はないのでしょう。ただ、実行しようと思っても、就職というより就社という価値観が残っている組織ですと、難しい物があります。適材適所の人事制度と、それに合わせた給与体系に変えていくことが必要です。ただ、どう折り合いを付けていくのかは大変なことなのだと思います。(岩崎 卓也)
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2008/06/20
チャンスは大変さを厭わない会社の上に
トムソンコーポレーションという巨大メディア企業があります。2007年にロイター通信を買収した会社です。子会社にトムソンファイナンシャルという金融関係の会社があります。主な事業内容はトレーダーやファンドマネジャー、金融機関の各職向けの情報サービスの提供です。ライバルはブルームバーグなどです。
2008年7月号では「B2Cの手法でB2B事業を伸ばす」という論文で、トムソンを紹介しています。B2Cの手法でB2B事業を伸ばすためのバリュー・プロポジションを開発した話が掲載されています。トムソンのサービスはB2Cのように思えますが、最終的に利用料を支払っているのは企業ですからB2B事業になります。トムソンは金融情報事業の会社です。他の事業者からすると、トムソンの事例は参考にならないように思われるかもしれません。しかし、この論文は素晴らしいことを言っています。
トムソンはどのようにして、B2B事業を伸ばしたのでしょうか。それは、従来の常識的なセグメンテーションをやめたところに、新しい収益の機会を見出しました。一般のビジネス書や雑誌では、セグメンテーションは顧客別、チャネル別、地域別というのがもっぱらです。コトラーの本では、セングメンテーションは地理的セグメンテーション、人口統計的セグメンテーションのほか、ライフスタイルやロイヤルティなども要因として示しています。が、トムソンはエンドユーザーのところに行き、エンドユーザー別のセグメンテーションを導入しました。
消費材を売っているP&Gなどは、お客様=エンドユーザーです。キッチンなどを調査することで、自社製品がどのように使われているか、把握しやすいといえます。それでも、メーカーにとって、エンドユーザーを把握することはたやすくありません。
トムソンはエンドユーザーがどのように自社商品である情報を利用しているのか、わかりませんでした。そこで、徹底調査し、細かいセグメンテーションによって分けるようにしました。この論文では、ファンドマネジャーの仕事を例にあげています。ファンドマネジャーの行動を、「調査と分析」「トレーディング前」「トレーディング」……、という行動に分けるのです。すると、それぞれの中で、違うニーズが出てくるというものです。詳細は本論にゆずりましょう。
営業の現場で、顧客別、売上別という従来のセグメンテーションを越えて、アクティビティ(行動)別に見る。これをエンドユーザーに対して実施するのは非常に困難なことでしょう。しかし、これから先、大変な時代が来ようとしているのであって、大変な作業を厭わない企業が利益のチャンスを見出せるようになるのでしょう。この論文で紹介されているトムソンがいい例だと思うのです。(岩崎 卓也)
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トムソンはどのようにして、B2B事業を伸ばしたのでしょうか。それは、従来の常識的なセグメンテーションをやめたところに、新しい収益の機会を見出しました。一般のビジネス書や雑誌では、セグメンテーションは顧客別、チャネル別、地域別というのがもっぱらです。コトラーの本では、セングメンテーションは地理的セグメンテーション、人口統計的セグメンテーションのほか、ライフスタイルやロイヤルティなども要因として示しています。が、トムソンはエンドユーザーのところに行き、エンドユーザー別のセグメンテーションを導入しました。
消費材を売っているP&Gなどは、お客様=エンドユーザーです。キッチンなどを調査することで、自社製品がどのように使われているか、把握しやすいといえます。それでも、メーカーにとって、エンドユーザーを把握することはたやすくありません。
トムソンはエンドユーザーがどのように自社商品である情報を利用しているのか、わかりませんでした。そこで、徹底調査し、細かいセグメンテーションによって分けるようにしました。この論文では、ファンドマネジャーの仕事を例にあげています。ファンドマネジャーの行動を、「調査と分析」「トレーディング前」「トレーディング」……、という行動に分けるのです。すると、それぞれの中で、違うニーズが出てくるというものです。詳細は本論にゆずりましょう。
営業の現場で、顧客別、売上別という従来のセグメンテーションを越えて、アクティビティ(行動)別に見る。これをエンドユーザーに対して実施するのは非常に困難なことでしょう。しかし、これから先、大変な時代が来ようとしているのであって、大変な作業を厭わない企業が利益のチャンスを見出せるようになるのでしょう。この論文で紹介されているトムソンがいい例だと思うのです。(岩崎 卓也)
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2008/06/17
中国ミドル市場を制する者が世界を制す
企業が成長をどこに求めるかといったとき、大きな市場に行くのが一般的でした。あるいは、成長の可能性が高いと言われている市場に進出しようとも考えます。今、中国ではミドル市場が急成長しています。中国市場は今後どうなっていくのでしょうか。市場は品質、価格などにより、ハイエンド、ミドルエンド、ローエンドに分けることができます。2008年7月号の「中国ミドル市場を制する者が世界を制す」では、中国はミドルエンド市場が狙い目だといっています。ここを制する企業がグローバルになるというのです。なぜでしょうか。
この論文ではミドル市場のことを「グッドイナフ・セグメント」と呼んでいます。グッドイナフとは「ここで充分いける」といった意味合いがあります。中国の市場は外資がハイエンドを攻めて、内資である中国の企業はローエンドに行きました。それはしかたのないことです。中国は市場における歴史が浅いから、テクノロジーも人材もない。ローエンドに行くしかなかったのです。ところが、最近の中国は低価格でありながらハイエンドに近い品質と技術力を提供できるまでに成長してきました。内資がミドルエンド市場に格上げしたともいえます。ハイアールやレノボなどの中国企業がジャンプアップして、メインプレーヤーになりつつあるのです。
中国、内資が主要プレーヤーになる前の段階で叩いておかねばいけないという考えもあります。これは、日本のかつてアメリカ市場に進出したときと、重なるところがあります。当時、アメリカの自動車メーカーはミドルとハイエンドを占めていました。日本はミドル市場に入りシェアを広げたのです。そして、アメリカ市場で無視できない存在に育っていったという歴史があります。そのときの日本企業には教訓がありません。なぜなら勝者でしたから。勝ったことによる教訓はあるけれど、負けたことで学ぶ次に勝つための教訓がないのです。
この論文では、中国をただの生産拠点とするのではなく、一つのマーケットとして見ようと考えているのです。この部分は非常に大事です。これはインドにもいえるのではないでしょうか。インドはまだ物流の制約などがありますが、いずれは解消されていく中でインドにおいても、中国と同じことが言えると思います。日本は今のところ中国でも、インドでも、ハイエンドに入り込んでいるはずです。しかし、ハイエンドにずっと居続けるわけに行かないのです。中長期的にはミドルエンド市場、ここをどういう形で攻めていくのか。すでに、考えている企業もあるとは思いますが、忘れてはいけない点なのです。(岩崎 卓也)
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この論文ではミドル市場のことを「グッドイナフ・セグメント」と呼んでいます。グッドイナフとは「ここで充分いける」といった意味合いがあります。中国の市場は外資がハイエンドを攻めて、内資である中国の企業はローエンドに行きました。それはしかたのないことです。中国は市場における歴史が浅いから、テクノロジーも人材もない。ローエンドに行くしかなかったのです。ところが、最近の中国は低価格でありながらハイエンドに近い品質と技術力を提供できるまでに成長してきました。内資がミドルエンド市場に格上げしたともいえます。ハイアールやレノボなどの中国企業がジャンプアップして、メインプレーヤーになりつつあるのです。
中国、内資が主要プレーヤーになる前の段階で叩いておかねばいけないという考えもあります。これは、日本のかつてアメリカ市場に進出したときと、重なるところがあります。当時、アメリカの自動車メーカーはミドルとハイエンドを占めていました。日本はミドル市場に入りシェアを広げたのです。そして、アメリカ市場で無視できない存在に育っていったという歴史があります。そのときの日本企業には教訓がありません。なぜなら勝者でしたから。勝ったことによる教訓はあるけれど、負けたことで学ぶ次に勝つための教訓がないのです。
この論文では、中国をただの生産拠点とするのではなく、一つのマーケットとして見ようと考えているのです。この部分は非常に大事です。これはインドにもいえるのではないでしょうか。インドはまだ物流の制約などがありますが、いずれは解消されていく中でインドにおいても、中国と同じことが言えると思います。日本は今のところ中国でも、インドでも、ハイエンドに入り込んでいるはずです。しかし、ハイエンドにずっと居続けるわけに行かないのです。中長期的にはミドルエンド市場、ここをどういう形で攻めていくのか。すでに、考えている企業もあるとは思いますが、忘れてはいけない点なのです。(岩崎 卓也)
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2008/06/14
成長余力を残したコア事業の見切り
前回、ストール・ポイント(成長の壁)について解説しました。今月号の「売上げが止まる時」では、売上げを増やしてきた企業の多くはストール・ポイントにあたり、減収に転じていることが書かれています。その原因の一つには、「成長余力を残したコア事業の見切り」があります。事業の見切りをどのようにつけるのか。関係者が自身の経験と知識を持ち寄り、無手勝流に取り組んでも結果は見えています。事実に基づく的確な診断がなければ良い結果は出ません。
今号、2008年7月号の「業績改善の事業診断法」、「過当競争市場のポジショニング戦略」は、「成長余力を残したコア事業の見切り」に関連した論文です。消費材メーカーとして優秀だといわれているP&Gは、新商品などを通して常に新たな消費製品を提供して、シュリンクさせないようにしています。その結果、常に右肩をあがりで来ているのです。「もうだめだと」思っても、まだまだ成長の余力があるのか。それとも、見切りをつけたほうがいいのか。どう見極めるのかがこの2つの論文のテーマです。具体的で、役に立つ内容になっています。
「業績改善の事業診断法」では、業績改善の体系的な方法を紹介しています。「経験曲線」「ABC」(活動基準原価計算)、「ROA/RMSチャート」「SNAPチャート」「NPS」(推奨者の正味比率)、「プロフィット・プール・マップ」「モデルTチャート」「RAPIDモデル」などのツールを紹介しています。
「過当競争市場のポジショニング戦略」は、タイトルどおりポジショニングに関する論文です。競争が厳しい市場ではポジションを体系的に分析するツールが必要です。「価格/便益ポジショニング(PBP)・マップ」というものをこの論文では紹介しています。これは価格と便益の関係に基づいてポジショニング戦略を立案できるツールです。携帯電話のモトローラの事例などをもとに具体的な解説があります。携帯電話市場、中型車市場などのPBPマッピングが載せられており、わかりやすい内容になっています。(岩崎 卓也)
今号、2008年7月号の「業績改善の事業診断法」、「過当競争市場のポジショニング戦略」は、「成長余力を残したコア事業の見切り」に関連した論文です。消費材メーカーとして優秀だといわれているP&Gは、新商品などを通して常に新たな消費製品を提供して、シュリンクさせないようにしています。その結果、常に右肩をあがりで来ているのです。「もうだめだと」思っても、まだまだ成長の余力があるのか。それとも、見切りをつけたほうがいいのか。どう見極めるのかがこの2つの論文のテーマです。具体的で、役に立つ内容になっています。
「業績改善の事業診断法」では、業績改善の体系的な方法を紹介しています。「経験曲線」「ABC」(活動基準原価計算)、「ROA/RMSチャート」「SNAPチャート」「NPS」(推奨者の正味比率)、「プロフィット・プール・マップ」「モデルTチャート」「RAPIDモデル」などのツールを紹介しています。
「過当競争市場のポジショニング戦略」は、タイトルどおりポジショニングに関する論文です。競争が厳しい市場ではポジションを体系的に分析するツールが必要です。「価格/便益ポジショニング(PBP)・マップ」というものをこの論文では紹介しています。これは価格と便益の関係に基づいてポジショニング戦略を立案できるツールです。携帯電話のモトローラの事例などをもとに具体的な解説があります。携帯電話市場、中型車市場などのPBPマッピングが載せられており、わかりやすい内容になっています。(岩崎 卓也)
2008/06/11
好調企業の売上げが止まるのはなぜか
今号、2008年7月号で非常に面白いと感じた論文があります。「売上げが止まる時」というタイトルで、執筆はマシュー・S・オルソン氏です。コーポレート・エグゼクティブ・ボードというアメリカの研究機関でエグゼクティブ・ディレクターを務めている方です。こちらの研究機関が発行するレポートは、日本の大手企業も購読していたと聞いています。
企業の多くは「ストールポイント」を経験するものです。ストールポイントというのは、日本語に訳すと「成長の壁」、減収に転じていく点を意味します。どんな企業にも必ずあります。売上高は事業の拡大とともに右肩で上がっていくものです。が、ある時点で減収に転じると、右肩下がりの傾向が続き、もう一度、増収に転じるのに非常に苦労しています。この論文でいう減収とは外的要因である為替の問題などによるものではありません。戦略上のミスによってストールポイントを迎えてしまったケースを指します。
コーポレート・エグゼクティブ・ボードの調査によると、戦略上の理由でストールポイントに直面した企業は、その原因を4つに分類できるといいます。ひとつは良くいわれる『成功の罠』です。成功すると驕ってしまい、周りを見なくなりがちです。脇が甘くなってしまうのです。そのほか「イノベーション・マネジメントの失敗」「成長余力を残したコア事業の見切り」「人材不足」、合計4つがあげられています。これらはよくある話です。でも、ここにあげられた結論は企業の業績を悪化させる極めて最大公約数だという気もします。
この論文は4つの原因の解説とともに、企業の事例を紹介しています。リーバイスでは、1985年、MBOにより株式の非公開化に踏み切りました。当時のCEO、ロバート・ハースは変革するには非上場にする必要があると判断したのです。それで、再生を果たすのですが、1996年をピークに業績を悪化させてしまいます。ストールポイントに当たったのです。ストールポイントは企業の病気みたいなところがあって、治すのが厄介です。リーバイスの例は極端かもしれませんが、そのほか、ダイムラーやトイザらスなど、ストールポイントを経験した企業は多数あります。
『ビジョナリー・カンパニー』というベストセラーになった本があります。著者のジェームズ・コリンズは、ビジョナリー・カンパニーとして、いろいろな会社をあげました。その中で、一社だけあげるとしたらどの会社ですか? という質問に、3M(スリーエム)をあげました。この3Mですら、ストールポイントを経験しています。その後、業績を低迷させていることがこの論文でも指摘されています。
この論文は過去半世紀の優良企業、およそ500社を調査しています。なかなか細かく分析がなされており、秀逸な論文だと思いました。(岩崎 卓也)
企業の多くは「ストールポイント」を経験するものです。ストールポイントというのは、日本語に訳すと「成長の壁」、減収に転じていく点を意味します。どんな企業にも必ずあります。売上高は事業の拡大とともに右肩で上がっていくものです。が、ある時点で減収に転じると、右肩下がりの傾向が続き、もう一度、増収に転じるのに非常に苦労しています。この論文でいう減収とは外的要因である為替の問題などによるものではありません。戦略上のミスによってストールポイントを迎えてしまったケースを指します。
コーポレート・エグゼクティブ・ボードの調査によると、戦略上の理由でストールポイントに直面した企業は、その原因を4つに分類できるといいます。ひとつは良くいわれる『成功の罠』です。成功すると驕ってしまい、周りを見なくなりがちです。脇が甘くなってしまうのです。そのほか「イノベーション・マネジメントの失敗」「成長余力を残したコア事業の見切り」「人材不足」、合計4つがあげられています。これらはよくある話です。でも、ここにあげられた結論は企業の業績を悪化させる極めて最大公約数だという気もします。
この論文は4つの原因の解説とともに、企業の事例を紹介しています。リーバイスでは、1985年、MBOにより株式の非公開化に踏み切りました。当時のCEO、ロバート・ハースは変革するには非上場にする必要があると判断したのです。それで、再生を果たすのですが、1996年をピークに業績を悪化させてしまいます。ストールポイントに当たったのです。ストールポイントは企業の病気みたいなところがあって、治すのが厄介です。リーバイスの例は極端かもしれませんが、そのほか、ダイムラーやトイザらスなど、ストールポイントを経験した企業は多数あります。
『ビジョナリー・カンパニー』というベストセラーになった本があります。著者のジェームズ・コリンズは、ビジョナリー・カンパニーとして、いろいろな会社をあげました。その中で、一社だけあげるとしたらどの会社ですか? という質問に、3M(スリーエム)をあげました。この3Mですら、ストールポイントを経験しています。その後、業績を低迷させていることがこの論文でも指摘されています。
この論文は過去半世紀の優良企業、およそ500社を調査しています。なかなか細かく分析がなされており、秀逸な論文だと思いました。(岩崎 卓也)
2008/06/07
人口とお金の行方
今号、2008年6月号は女性と中高年に絞った人材論を特集しました。さまざまな切り口がある中、女性の登用を今後どのくらい増やせるのかに焦点を当てました。この特集の背景には少子高齢化があります。『「豊かなる衰退」と日本の戦略』(弊社刊)の著者、横山禎徳(よしのり)さんとも話をしましたが、人口が減るということはリスクの高いことです。以前、書いたように、人口の減少はその国の市場規模が小さくする可能性があるので、国の衰退を意味する部分もあります。その点について、今回は少し詳しくお話をしようと思います。
6000兆円にものぼるといわれている、いわゆるホームレスマネーは現在アラブに集まっています。お金が集まる要因はさまざまですが、お金は人口が多いところに向かい、やがて衰退していくだろうと思われるところを避ける傾向はあるといえます。今、イスラムの出生率は増えているといわれています。地震などにより人口が減るリスクは少ない。人口が増えると、何が起こるでしょうか。
イスラム圏ではインフラが増えています。それに伴い、市場が大きくなり、都市が広がります。住宅供給が加速していき、それにあわせて、道路などの交通やさまざまなインフラが広がるという循環が生まれます。ドバイなどには、日本のゼネコンも参加しています。イスラムのすごいところは、貧困層がないところです。GDPが一人あたりの数字は低いのですが、貧富の格差は少ないのです。
日本では、都市に人口が集中しているため、東京で暮らしていると人口が減ることのメリットが大きいようにも感じます。しかし、イスラムの例からも、人口の増減が市場の大きさに影響することがわかるかと思います。例えば、日本も出生率が今から何倍にもなり、子どもが多く生まれると、理屈からいえば、出生率が増えることで状況が変わる可能性もあるといえるでしょう。(岩崎 卓也)
6000兆円にものぼるといわれている、いわゆるホームレスマネーは現在アラブに集まっています。お金が集まる要因はさまざまですが、お金は人口が多いところに向かい、やがて衰退していくだろうと思われるところを避ける傾向はあるといえます。今、イスラムの出生率は増えているといわれています。地震などにより人口が減るリスクは少ない。人口が増えると、何が起こるでしょうか。
イスラム圏ではインフラが増えています。それに伴い、市場が大きくなり、都市が広がります。住宅供給が加速していき、それにあわせて、道路などの交通やさまざまなインフラが広がるという循環が生まれます。ドバイなどには、日本のゼネコンも参加しています。イスラムのすごいところは、貧困層がないところです。GDPが一人あたりの数字は低いのですが、貧富の格差は少ないのです。
日本では、都市に人口が集中しているため、東京で暮らしていると人口が減ることのメリットが大きいようにも感じます。しかし、イスラムの例からも、人口の増減が市場の大きさに影響することがわかるかと思います。例えば、日本も出生率が今から何倍にもなり、子どもが多く生まれると、理屈からいえば、出生率が増えることで状況が変わる可能性もあるといえるでしょう。(岩崎 卓也)
2008/06/04
コスト増のときに収益力をつけるには
今後も原油や原材料の高騰が続けば、スタグフレーションに陥るおそれがあるという認識を日銀新総裁の白川氏が示した。5月27日に報じられたこのニュースは今を象徴しているように思います。スタグフレーション(stagflation)というのは、stagnationとinflationの造語ですが、直訳すると「景気の後退と物価の上昇が同時に起こること」です。インフレにより物価が上がると、所得も上がるはずです。でも、所得は物価の上昇に比べ、さほど上がらないのです。
スタグフレーションが起こったのは、直近でいうと第2次オイルショックの時です。ヨーロッパとアメリカで起こりました。フランスやイタリアなど、一部のヨーロッパの国では物価上昇にあわせて賃金も上げました。しかし、これが裏目に出てしまいました。賃金が上がったら物価高騰をさらに招いてしまったのです。悪循環が起こり、抜けきれなくなりました。
スタグフレーションに関する解説をいくつか読みました。インフレが続きながら、景気が悪い状況が長く続く。失業率も上がっていく、といった壊滅的で暗いシナリオが目に付きます。第2次オイルショックで、日本はインフレが起こりましたが、スタグフレーションまで行きませんでした。円高により吸収した部分があったのです。また、第一次オイルショックのときの余力もありましたし、現場の改善努力でコストダウンに努めたことも功を奏しました。
次号の特集は「収益力の経営」を組みます。このような暗い状況下にて何ごとだ、とおっしゃる方もいるかもしれません。私たちはスタグフレーションを想定してこの特集の企画を立てたわけではないのですが、それでもインフレはいずれ来るだろうという予測はありました。原油高による原材料費、運送費の高騰はコスト増を招きます。企業は値上げをしなくてはならない。でも、簡単に値上げはできません。なぜなら、今でもデフレの残り火があるからです。価格を下げないと物が売れない、という状況が一掃されたわけではないのです。設備投資は増えましたが、消費者のサイフのひもは緩んでいません。
コストは上がるが、価格に上乗せできないという中で、何をしたらよいのでしょうか。このような視点で次号の特集を組みました。業績改善というと、コストダウンと売上をあげれば良いという考えがあります。確かに、その通りではありますが、私たちの雑誌ではどう戦略的に売上をあげることができるのか。売上はそのままで、利益率を上げる方法はないのか、ということを提案します。(岩崎 卓也)
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次号の発売は6月10日(火)の予定です。
スタグフレーションが起こったのは、直近でいうと第2次オイルショックの時です。ヨーロッパとアメリカで起こりました。フランスやイタリアなど、一部のヨーロッパの国では物価上昇にあわせて賃金も上げました。しかし、これが裏目に出てしまいました。賃金が上がったら物価高騰をさらに招いてしまったのです。悪循環が起こり、抜けきれなくなりました。
スタグフレーションに関する解説をいくつか読みました。インフレが続きながら、景気が悪い状況が長く続く。失業率も上がっていく、といった壊滅的で暗いシナリオが目に付きます。第2次オイルショックで、日本はインフレが起こりましたが、スタグフレーションまで行きませんでした。円高により吸収した部分があったのです。また、第一次オイルショックのときの余力もありましたし、現場の改善努力でコストダウンに努めたことも功を奏しました。
次号の特集は「収益力の経営」を組みます。このような暗い状況下にて何ごとだ、とおっしゃる方もいるかもしれません。私たちはスタグフレーションを想定してこの特集の企画を立てたわけではないのですが、それでもインフレはいずれ来るだろうという予測はありました。原油高による原材料費、運送費の高騰はコスト増を招きます。企業は値上げをしなくてはならない。でも、簡単に値上げはできません。なぜなら、今でもデフレの残り火があるからです。価格を下げないと物が売れない、という状況が一掃されたわけではないのです。設備投資は増えましたが、消費者のサイフのひもは緩んでいません。
コストは上がるが、価格に上乗せできないという中で、何をしたらよいのでしょうか。このような視点で次号の特集を組みました。業績改善というと、コストダウンと売上をあげれば良いという考えがあります。確かに、その通りではありますが、私たちの雑誌ではどう戦略的に売上をあげることができるのか。売上はそのままで、利益率を上げる方法はないのか、ということを提案します。(岩崎 卓也)
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次号の発売は6月10日(火)の予定です。
