前回こちらのブログで、企業は大学の授業にもっとコミットすれば良いのではないか、と述べました。少しだけ補足するならば、私達は「企業の援助」というと金銭的なものを思いがちです。が、私はそれだけではないと思っています。授業の中にビルとインする形で行う企業の援助もあるのではないでしょうか。例えば、コンテンツの提供がひとつです。企業の中で実践を積んでいる方が講師として大学に行き、自らの経験をケースの説明として学生達に語るのです。客員教授として講師を募れば、人は集まると思います。高校が生徒の進路により、いくつかのコースを用意しているように、大学も希望する就職先によって、このような授業をいくつか開設するのも一つの選択肢としてあるような気がします。
話は変わりますが、最近、人材の流動化が進んだ、とよく耳にします。しかし、すべての年齢層で一様に流動化しているのかは疑問が残ります。先日、知人から『エンゼルバンク−ドラゴン桜外伝』の話を聞きました。『ドラゴン桜』という受験のマンガが人気でドラマにもなりました。このマンガは社会人のための『ドラゴン桜』とでもいいましょうか。「転職」をテーマにしています。「メディアに騙されるな、イメージに惑わされるな」といった強烈なメッセージが込められているようです。
知人の話によると、転職するなら外資系企業か日本企業か? といった話がこのマンガに出てきたといいます。外資系企業は全体の4割が転職して入ってきたばかりの人、3割はそろそろやめようと思っている人で占められているといいます。だから、3〜4割くらいしか使える戦力がない。その点日本企業は全体の9割がきちんと働いているというのです。
きちんと働いている人の割合という点で、すべての外資系企業がそのままこの話にあてはまるかどうかは疑問が残ります。が、この話はまったく外れているとは思えません。人材の流動化という点で、外資系企業は“Up or out”ですから、アウトする人が日本企業より多いのは当然でしょう。転職をする人の中には外資系企業に勤めている人が多くなります。そのほか、転職市場にはいわゆる転職ジプシーといわれる人たちが多くいると思います。若くしてさすらい人、本当の自分のディスティネーションを探している人などがそうです。結局、流動化しているといっても、これらの人たちが大半を占めているだけかもしれません。実のところ、人材は満遍なくいろんな人が流動化しているわけではなく、一部の人たちがぐるぐると回っているのではないか、と私は思うのです。(岩崎 卓也)
2007/11/28
2007/11/24
ビジネススクール、日米の違いを見て
最近、読んで面白かったと感じた本は、国際基督教大学教養学部教授の村上 陽一郎先生がお書きになった『やりなおし教養講座』(NTT出版)です。日本ではリベラルアーツを教える学校がICU以外ひとつもないといいます。アメリカはハーバード大学やアイビー・リーグに属する大学でもリベラルアーツの教育を行っています。その上に立っているのが専門職大学院です。
一方、日本は学部の時に専門科目を教えています。私は商学部でしたが、大学の時にマーケティングや経営史などを専門科目の授業で学びました。これらの科目で使う教科書はビジネススクールで教えているものと同じなのです。私はマーケティングについて、最初はコトラーやジェローム・マッカーシーの「4P」を学んだと記憶しています。ビジネススクールでも、最初にこれらを学ぶ場合が多くあります。ビジネススクールというのは教育の提供方法が違うだけで、コンテンツは大学の学部とさほど変わらないのではないかと思うときがあります。ビジネススクールは実例を使って授業をしているので、単に「変らない」というよりかは、「教えている学問体系についてはそんなに変わりがない」というほうが正しいのかもしれません。
確かに、授業の中身はビジネススクールのほうが、気がきいていると思います。組織論を勉強するにしても、ビジネススクールは事例を使うといった工夫があります。また、学生が入学する動機も違います。一緒に学ぶクラスメイトは社会人として経験を積んだ人たちですから、議論も高次元になっています。ワーキンググループスタイルをとっており、大学の学部のように大箱で一方的に聞くものではない点もビジネススクールの特徴です。学部で充分勉強しなかった人が卒業後、ビジネススクールにもう一回通って、2年間で効率的に勉強するというのは価値のあることだと思います。
村上先生の問題提起から考えると、アメリカにおけるビジネススクールと日本におけるビジネススクールの存在とでは、大きく違うのではないかと思います。アメリカは職業訓練校としてビジネススクールが生まれました。村上先生がおっしゃるように、アメリカの大学院はリベラルアーツを踏まえた後で専門教育を行っているのですが、日本は専門教育の上にまた専門教育を行っいます。ここが異なる点だといえます。
ということだとすると、企業はビジネススクールだけではなくて、大学の授業にも、もっとコミットすれば意外と良いのではないかとこの本を読んで感じました。(岩崎 卓也)
一方、日本は学部の時に専門科目を教えています。私は商学部でしたが、大学の時にマーケティングや経営史などを専門科目の授業で学びました。これらの科目で使う教科書はビジネススクールで教えているものと同じなのです。私はマーケティングについて、最初はコトラーやジェローム・マッカーシーの「4P」を学んだと記憶しています。ビジネススクールでも、最初にこれらを学ぶ場合が多くあります。ビジネススクールというのは教育の提供方法が違うだけで、コンテンツは大学の学部とさほど変わらないのではないかと思うときがあります。ビジネススクールは実例を使って授業をしているので、単に「変らない」というよりかは、「教えている学問体系についてはそんなに変わりがない」というほうが正しいのかもしれません。
確かに、授業の中身はビジネススクールのほうが、気がきいていると思います。組織論を勉強するにしても、ビジネススクールは事例を使うといった工夫があります。また、学生が入学する動機も違います。一緒に学ぶクラスメイトは社会人として経験を積んだ人たちですから、議論も高次元になっています。ワーキンググループスタイルをとっており、大学の学部のように大箱で一方的に聞くものではない点もビジネススクールの特徴です。学部で充分勉強しなかった人が卒業後、ビジネススクールにもう一回通って、2年間で効率的に勉強するというのは価値のあることだと思います。
村上先生の問題提起から考えると、アメリカにおけるビジネススクールと日本におけるビジネススクールの存在とでは、大きく違うのではないかと思います。アメリカは職業訓練校としてビジネススクールが生まれました。村上先生がおっしゃるように、アメリカの大学院はリベラルアーツを踏まえた後で専門教育を行っているのですが、日本は専門教育の上にまた専門教育を行っいます。ここが異なる点だといえます。
ということだとすると、企業はビジネススクールだけではなくて、大学の授業にも、もっとコミットすれば意外と良いのではないかとこの本を読んで感じました。(岩崎 卓也)
2007/11/21
信用と権限委譲の密接な関係
前回、『組織は「約束」の集合体である』という今号の論文を紹介しました。信頼関係のうえに約束が何回守られたかで信用関係が成立することに触れました。身近な例でいうと、クレジットカードの支払いがありますね。遅れることなく何年間も続けて使い、一定の要件にあてはまれば、ゴールド、プラチナ、黒といった色のカードをすすめられるでしょう。単なる信頼関係ではなく、信用を積み上げていくことが重要なのです。そのプロセスに約束を守ることは欠かせません。
信用と権限委譲は非常に密接な関係にあると思います。私は権限移譲について、どうもおかしいと、前々から思っていることがあります。
まわりを見渡すと、派手なパフォーマンスもなく地味だが堅実に仕事を行っている人、そんな人がいることに気づかされます。ひとつの部署に一人くらいはいることでしょう。あるとき、その人に大きな仕事が舞い込んできたとします。すると、中には、「実力はオレの方が上だ」「なんで私には権限がもらえないのか」と不満を抱く人が出てくるのを目にするときがあります。
信用のない人に権限は委譲されないと私は思うのです。派手に自己アピールすることではなく、約束をどれだけ履行しているかというところに、権限の委譲はかかわってくるのではないでしょうか。
約束というのは非常に小さなものからあるわけですね。たとえば、電話番をするといったことも含まれます。積もり重ならないと、高い信用は得られない。信用のない人に良い仕事が回ってこないのは当然なのだろうと私は思うのです。
社会的な共同体である組織において、信用というものに無頓着なケースが多いと感じるときがあります。
私達の周りにはたくさんの課題があります。権限委譲ができない、組織としてビジョンがなかなか定着しかないといったことのほか、人事上の問題など、企業によってそれぞれ異なることと思います。それでも、これらの問題は意外と約束に帰結していくのではないでしょうか。そのような視点で『組織は「約束」の集合体である』を読むと、この論文は面白い。良い論文だと思いました。(岩崎 卓也)
信用と権限委譲は非常に密接な関係にあると思います。私は権限移譲について、どうもおかしいと、前々から思っていることがあります。
まわりを見渡すと、派手なパフォーマンスもなく地味だが堅実に仕事を行っている人、そんな人がいることに気づかされます。ひとつの部署に一人くらいはいることでしょう。あるとき、その人に大きな仕事が舞い込んできたとします。すると、中には、「実力はオレの方が上だ」「なんで私には権限がもらえないのか」と不満を抱く人が出てくるのを目にするときがあります。
信用のない人に権限は委譲されないと私は思うのです。派手に自己アピールすることではなく、約束をどれだけ履行しているかというところに、権限の委譲はかかわってくるのではないでしょうか。
約束というのは非常に小さなものからあるわけですね。たとえば、電話番をするといったことも含まれます。積もり重ならないと、高い信用は得られない。信用のない人に良い仕事が回ってこないのは当然なのだろうと私は思うのです。
社会的な共同体である組織において、信用というものに無頓着なケースが多いと感じるときがあります。
私達の周りにはたくさんの課題があります。権限委譲ができない、組織としてビジョンがなかなか定着しかないといったことのほか、人事上の問題など、企業によってそれぞれ異なることと思います。それでも、これらの問題は意外と約束に帰結していくのではないでしょうか。そのような視点で『組織は「約束」の集合体である』を読むと、この論文は面白い。良い論文だと思いました。(岩崎 卓也)
2007/11/17
組織は「約束」の集合体である
今号、おすすめしたい論文のひとつに“Promise-Based Management”(原タイトル )があります。日本語のタイトルは『組織は「約束」の集合体である』としました。組織とは何か? という問いに対する答えとして、今日ではさまざまなことがいわれています。一橋大学の野中郁次郎先生は「企業という組織は知の集合体である」と言いました。ソニーの出井さんは以前、「企業というのは情報でできている」と言ったことがあります。また、1978年にノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモンの弟子、ジェイ・ガルブレスは「組織というものは情報処理マシンだ」と言っています。
この論文では情報や知、情報処理マシンというところを超えて、組織とは約束を履行することで成立するもの、日本語タイトルにもしました『組織は「約束」の集合体である』、と言っています。約束というと、広義にはコンプライアンス、法令順守といったところを意味するのでしょう。この論文ではむしろ狭義に日常的な人間対人間の約束、部門対部門の約束を指しています。
人間同士、信頼関係を築くうえで、約束というものは大きな意味を持ちます。約束のなかでも、小さなものから大事な約束まで重要度によって守られる頻度が変ってきます。ときどき、約束が守られていないのを目にすることもあります。そのたび、約束は意外とないがしろにされているのではないか、と感じます。
私達は人と接するときに、基本的に信頼関係はあることが前提条件になっています。信頼関係のうえに約束が何回も守られていくと、やがて信用関係が出来上がっていきます。たとえば、私達の多くは信頼関係のもとにお金を借りることができます。しかし、お金を借りて返さなければ信用は得られないわけです。ある顧客がカードで買い物をしたとします。その金額が大きければ、カード会社はその人のことを良いお客さんだと判断することでしょう。しかし、その人がお金を返さなかったら、債務不履行者だということになります。そうなるとどんどん限度額が下がって、場合によってはもうお金を貸さないことにもなります。
小さなことでもよいのです。約束を守ることで互いの信用が生まれてきます。社内の人間関係上で信用を得ることは大切です。約束のマネジメントに優れることが重要なのです。この論稿では約束のマネジメントについて解説しています。しっかりした約束のマネジメントができれば、組織はさまざまなことができるようになります。例えば何があるか? それは次回、お話いたします。(岩崎 卓也)
この論文では情報や知、情報処理マシンというところを超えて、組織とは約束を履行することで成立するもの、日本語タイトルにもしました『組織は「約束」の集合体である』、と言っています。約束というと、広義にはコンプライアンス、法令順守といったところを意味するのでしょう。この論文ではむしろ狭義に日常的な人間対人間の約束、部門対部門の約束を指しています。
人間同士、信頼関係を築くうえで、約束というものは大きな意味を持ちます。約束のなかでも、小さなものから大事な約束まで重要度によって守られる頻度が変ってきます。ときどき、約束が守られていないのを目にすることもあります。そのたび、約束は意外とないがしろにされているのではないか、と感じます。
私達は人と接するときに、基本的に信頼関係はあることが前提条件になっています。信頼関係のうえに約束が何回も守られていくと、やがて信用関係が出来上がっていきます。たとえば、私達の多くは信頼関係のもとにお金を借りることができます。しかし、お金を借りて返さなければ信用は得られないわけです。ある顧客がカードで買い物をしたとします。その金額が大きければ、カード会社はその人のことを良いお客さんだと判断することでしょう。しかし、その人がお金を返さなかったら、債務不履行者だということになります。そうなるとどんどん限度額が下がって、場合によってはもうお金を貸さないことにもなります。
小さなことでもよいのです。約束を守ることで互いの信用が生まれてきます。社内の人間関係上で信用を得ることは大切です。約束のマネジメントに優れることが重要なのです。この論稿では約束のマネジメントについて解説しています。しっかりした約束のマネジメントができれば、組織はさまざまなことができるようになります。例えば何があるか? それは次回、お話いたします。(岩崎 卓也)
2007/11/14
マイルストーンとディレクション
今号の特集に「バリュー・キャプターの戦略」という論文があります。これは新規事業において多くの組織がおかしているミスについて指摘しています。
新規事業を開始するにあたり、ビジネスパーソンの多くは計画書を作ります。ビジネスプランを書き、それに応じた予算を獲得し、人の調達を行うといったことをするのが一般的です。
プロジェクトがスタートした後は、半年ごと、あるいは1年ごとに置かれたマイルストーンにて、進捗や市場の見込みなどが検討され、継続か中止かの二者択一の判断が行われています。仮にめでたく製品、サービス等を市場に出すことができても、思ったほど売れなかったら打ち切りになります。常に、事業には打ち切りという判断が付きまとっているのです。
この論稿に登場するバリュー・キャプターと呼ばれる会社はそうではありません。具体的にどこが違うのか? バリュー・キャプターについて詳しく紹介したものが本論です。論稿の執筆者は過去16年間にわたり10社以上もの企業について調査を続け結論を導いています。対象となった企業には、3M、デュポン、IBMなどが名を連ねています。
そもそも新規事業は計画通りに進まないものだ、とバリュー・キャプターは考えます。中止を決定する前に方向転換すれば、良い方へ向かうのではないか? といったことを前提にプロジェクトをまわしているのです。
具体的には、スピン・オフ、スピン・イン、救済といったことで価値を抽出していきます。例えば、プロジェクトを打ち切って損切りをするのではなく、開発している最中に得られた新しい技術や特許を売ってしまってもよいのではないか、といった柔軟な考え方をするのです。
方向転換をすることで全く違うものが生まれます。当初の予定から全く違うものになっても構わない、とバリュー・キャプターは考えます。さらに、会社にとって必要性のない門外漢な事業が生まれた場合はスピン・オフをすすればいい。また、補完的な製品やサービスを組み合わしたら、自社のドメインの中で強力なポジション作れるかもしれない、そのように判断したときはジョイントベンチャーを行うこともあります。スピン・オフ、スピン・イン、救済といったことを用いれば、新規事業が思うようにうまく行かなかったときでも、携わっている人が傷つかなくてもすむ。これもひとつのメリットです。
いったん始めた新規事業を状況において継続させていく。新規事業というものは失敗させるものではなく、何とか成功させるものだ、という考え方を持っているのがバリュー・キャプターなのです。(岩崎 卓也)
新規事業を開始するにあたり、ビジネスパーソンの多くは計画書を作ります。ビジネスプランを書き、それに応じた予算を獲得し、人の調達を行うといったことをするのが一般的です。
プロジェクトがスタートした後は、半年ごと、あるいは1年ごとに置かれたマイルストーンにて、進捗や市場の見込みなどが検討され、継続か中止かの二者択一の判断が行われています。仮にめでたく製品、サービス等を市場に出すことができても、思ったほど売れなかったら打ち切りになります。常に、事業には打ち切りという判断が付きまとっているのです。
この論稿に登場するバリュー・キャプターと呼ばれる会社はそうではありません。具体的にどこが違うのか? バリュー・キャプターについて詳しく紹介したものが本論です。論稿の執筆者は過去16年間にわたり10社以上もの企業について調査を続け結論を導いています。対象となった企業には、3M、デュポン、IBMなどが名を連ねています。
そもそも新規事業は計画通りに進まないものだ、とバリュー・キャプターは考えます。中止を決定する前に方向転換すれば、良い方へ向かうのではないか? といったことを前提にプロジェクトをまわしているのです。
具体的には、スピン・オフ、スピン・イン、救済といったことで価値を抽出していきます。例えば、プロジェクトを打ち切って損切りをするのではなく、開発している最中に得られた新しい技術や特許を売ってしまってもよいのではないか、といった柔軟な考え方をするのです。
方向転換をすることで全く違うものが生まれます。当初の予定から全く違うものになっても構わない、とバリュー・キャプターは考えます。さらに、会社にとって必要性のない門外漢な事業が生まれた場合はスピン・オフをすすればいい。また、補完的な製品やサービスを組み合わしたら、自社のドメインの中で強力なポジション作れるかもしれない、そのように判断したときはジョイントベンチャーを行うこともあります。スピン・オフ、スピン・イン、救済といったことを用いれば、新規事業が思うようにうまく行かなかったときでも、携わっている人が傷つかなくてもすむ。これもひとつのメリットです。
いったん始めた新規事業を状況において継続させていく。新規事業というものは失敗させるものではなく、何とか成功させるものだ、という考え方を持っているのがバリュー・キャプターなのです。(岩崎 卓也)
2007/11/10
優良企業研究から出た長期成長の原則
今号の特集は「グレート・カンパニー 長期志向の経営」です。成長戦略に関する論文をセレクトしました。なかでも、「グレート・カンパニーの条件」は、久しぶりに面白くて秀作だと思いました。
ヨーロッパには創業100年以上でありながら、今なお持続的な成長を続けている企業があります。この論文では長期成長を続けており「フォーチュン・グローバル500」の中に名前が連ねている多国籍ヨーロッパ企業を対象にして、持続的成功要因の調査を行っています。この研究の結果を参考に、従来の成長戦略についてもう一度検討し直すと、改めるべき点が見えてくるのではないでしょうか。
この論文では、最終的に9社が選ばれています。ドイツのシーメンス、アリアンツ、フィンランドのノキアのほか、ロイヤル・ダッチ・シェルなど、グレート・カンパニーと呼ばれる企業について紹介しています。これまでにも、こういった優良業績企業の調査に関する論文はありました。ただ、アメリカ企業が調査対象になっていたので、今回のようなヨーロッパ企業というのは非常にユニークなのです。
優良企業研究には、何らかの形で原則がでてきます。これが意外と面白い。ここでは以下の4つの原則が出ています。
1.既存の資産を活用せよ
2.事業の多角化をおし進めよ
3.過去の過ちを忘れるな
4.変革には慎重であれ
3、4番目は当たり前の教訓だと思います。さらに、2番目の原則はただし書きをつけなくてはいけません。マイケル・ポーターは「競争優位の戦略」で、全社戦略としていたずらな多角化を行うことは業績を下げる、と言っています。コングロマリット・ディスカウントが起こるのです、と。アメリカの多角化は完全に事業ポートフォリオ上のリスクとリターンの関係にあります。業種については無視して変ってきたのですね。この論文でいう事業の多角化とは安易に進めるものではなく、隣接分野に進出するものを指しています。昔の無手勝なコングロマリット化を意味しているわけではないのです。
1番目と2番目というのは、言葉置き換えると、ただ闇雲にイノベーションすればいいというわけではない、ということを意味します。既存の資源の中にもっと使えるものがあるでしょう、と言っているのです。もはや「選択と集中」だけは持続的成長は達成できないことをこの論文は伝えているのだと思いました。
実は、この論文はこれから上梓される予定の“Enduring Success”という本のデモ版でもあります。この論文の面白さ、秀逸さに触れ、原文を早く読みたくなりました。(岩崎 卓也)
※「DHBR」2007年12月号は11月10日発売です。
一冊からお求めになれます。
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059691207
ヨーロッパには創業100年以上でありながら、今なお持続的な成長を続けている企業があります。この論文では長期成長を続けており「フォーチュン・グローバル500」の中に名前が連ねている多国籍ヨーロッパ企業を対象にして、持続的成功要因の調査を行っています。この研究の結果を参考に、従来の成長戦略についてもう一度検討し直すと、改めるべき点が見えてくるのではないでしょうか。
この論文では、最終的に9社が選ばれています。ドイツのシーメンス、アリアンツ、フィンランドのノキアのほか、ロイヤル・ダッチ・シェルなど、グレート・カンパニーと呼ばれる企業について紹介しています。これまでにも、こういった優良業績企業の調査に関する論文はありました。ただ、アメリカ企業が調査対象になっていたので、今回のようなヨーロッパ企業というのは非常にユニークなのです。
優良企業研究には、何らかの形で原則がでてきます。これが意外と面白い。ここでは以下の4つの原則が出ています。
1.既存の資産を活用せよ
2.事業の多角化をおし進めよ
3.過去の過ちを忘れるな
4.変革には慎重であれ
3、4番目は当たり前の教訓だと思います。さらに、2番目の原則はただし書きをつけなくてはいけません。マイケル・ポーターは「競争優位の戦略」で、全社戦略としていたずらな多角化を行うことは業績を下げる、と言っています。コングロマリット・ディスカウントが起こるのです、と。アメリカの多角化は完全に事業ポートフォリオ上のリスクとリターンの関係にあります。業種については無視して変ってきたのですね。この論文でいう事業の多角化とは安易に進めるものではなく、隣接分野に進出するものを指しています。昔の無手勝なコングロマリット化を意味しているわけではないのです。
1番目と2番目というのは、言葉置き換えると、ただ闇雲にイノベーションすればいいというわけではない、ということを意味します。既存の資源の中にもっと使えるものがあるでしょう、と言っているのです。もはや「選択と集中」だけは持続的成長は達成できないことをこの論文は伝えているのだと思いました。
実は、この論文はこれから上梓される予定の“Enduring Success”という本のデモ版でもあります。この論文の面白さ、秀逸さに触れ、原文を早く読みたくなりました。(岩崎 卓也)
※「DHBR」2007年12月号は11月10日発売です。
一冊からお求めになれます。
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059691207
2007/11/07
知っているのはコア・コンピタンスだけじゃない
先日、若手マーケターの会に出席しました。これは、P&G出身の方が発足した会で、SNSで交流しています。メンバーは消費材に携わっている方、とくにP&Gが多いのですが、資生堂、カネボウといった企業の方もいます。定期的に集まって勉強会などを行っているようです。
私はこちらの会に呼んでいただき、戦略論の系譜について話をしました。聞き手は20代後半から30代前半で、会の名称どおり若手ばかりです。驚いたのは出席者の持つ知識の豊富さです。私はかなりむずかしい話をしたつもりですが、しっかりと話に付いてくるのです。メンバーの方たちはビジネススクールを出ているわけではありません。それでも、良く知っているのです。
ゲイリー・ハメルらのコア・コンピタンスやマイケル・ポーターのバリュー・チェーンといったことならば、皆さんご存知でしょう。しかし、出席者の方たちは一歩深い知識を持っています。各戦略の相対的優位性や状況に応じてどの戦略が良いのか、といったことまで議論ができるのです。今の20代なんて、あんまり勉強していないのかなと思っていましたが、そうではありませんでした。GEのCEO ジェフリー・イメルト、AOLの創業者のスティーヴ・ケイスなど、P&G出身のビックネームはたくさんいます。外資系の企業はどこの国からリーダーが生まれても良いように教育を行っているのでしょう。座学かも知れませんが、P&Gはきちんと教育を行っている。これが私の率直な感想でした。
もちろん、国内の企業にも教育をしっかりと行っているところは多くあります。例えば、ミスミがそうです。20代からとてもきびしい教育するスタイルをしていると聞きました。ミスミの場合、29歳で海外現地法人の社長になった人もいるといいます。25歳くらいで、言葉もよく話せない中、現地に行くわけですね。上司の行いを見ながら、なんとかシゴトを進めていくことで若手がどんどん成長していくのです。
知識豊富な若者を目の当たりにして、企業の人材教育の違いが大きな差を生むことを改めて感じさせられました。(岩崎 卓也)
私はこちらの会に呼んでいただき、戦略論の系譜について話をしました。聞き手は20代後半から30代前半で、会の名称どおり若手ばかりです。驚いたのは出席者の持つ知識の豊富さです。私はかなりむずかしい話をしたつもりですが、しっかりと話に付いてくるのです。メンバーの方たちはビジネススクールを出ているわけではありません。それでも、良く知っているのです。
ゲイリー・ハメルらのコア・コンピタンスやマイケル・ポーターのバリュー・チェーンといったことならば、皆さんご存知でしょう。しかし、出席者の方たちは一歩深い知識を持っています。各戦略の相対的優位性や状況に応じてどの戦略が良いのか、といったことまで議論ができるのです。今の20代なんて、あんまり勉強していないのかなと思っていましたが、そうではありませんでした。GEのCEO ジェフリー・イメルト、AOLの創業者のスティーヴ・ケイスなど、P&G出身のビックネームはたくさんいます。外資系の企業はどこの国からリーダーが生まれても良いように教育を行っているのでしょう。座学かも知れませんが、P&Gはきちんと教育を行っている。これが私の率直な感想でした。
もちろん、国内の企業にも教育をしっかりと行っているところは多くあります。例えば、ミスミがそうです。20代からとてもきびしい教育するスタイルをしていると聞きました。ミスミの場合、29歳で海外現地法人の社長になった人もいるといいます。25歳くらいで、言葉もよく話せない中、現地に行くわけですね。上司の行いを見ながら、なんとかシゴトを進めていくことで若手がどんどん成長していくのです。
知識豊富な若者を目の当たりにして、企業の人材教育の違いが大きな差を生むことを改めて感じさせられました。(岩崎 卓也)
2007/11/03
教育をするに足りない観点
日本はリーダーシップの教育をもっと早くに始めるべきです。なぜなら、リーダーシップスキルはS字曲線を描くからです。スキルの中にはS字曲線のような学習曲線という観点から教えないといけないものもあるのです。
下図はリーダーシップスキルが時間の経過とともにどの程度増加してたかを表すグラフです。横軸に時間を取り縦軸にリーダーシップスキルを取っています。このような形をS字曲線といいます。最初の勾配は緩やかになっていますね。若いうちはある程度基本を守っていれば、能力が着実に漸増していくことがわかります。そして、ある時間(矢印の部分)を過ぎると勾配が急になります。ここをクリティカルマスと呼び、人はこの急勾配を超えることで本物のリーダーと成長していくわけです。いつまでもクリティカルマスを超えずに能力が漸増し続ける人もいるでしょう。リーダーとして成長するには、急勾配を超えなくてはなりません。
それにはどうしたらよいでしょうか。
リーダーとして成長していくには大量のリーダーとしての経験が必要なのです。別の言い方をすると、ビジネスマンとしての経験が必要なわけです。

図 S字曲線 横軸 時間 縦軸 能力のレベル
※アルファベットのSの字を横に伸ばしたような形になる
経験といっても成功体験では効果は小さいでしょう。むしろ試行錯誤や失敗、マイナス評価を受ける、上司から叱責される、お客様に迷惑をかける、といったネガティブな経験がクリティカルマスを超えるには大切なのです。
クリティカルマスをあげるには、どのようにしたら良いかを考えてみてください。40代から逆算すれば、おのずと20代で何をすべきかがわかるわけですね。20代というのは成功を積み重ねることも重要だと思いますが、失敗もしなくてはいけないのです。
成功。これはラッキーです。しかしながら、成功の後にはトラブルシューティングをすることがあまりありません。他方、失敗はアンラッキーなことですけれども、できなかったとき、多くはトラブルシューティングとリカバリーショットが求められます。失敗対応力をつけるには、トラブルシューティングとリカバリーショットができなければいけません。
このような経験が前回お話したソフトスキルを向上させていくのだと私は思っています。
しかし、すべての企業で必ずしもリーダーシップスキルを上げるために必要な経験ができるとは限りません。なかにはエリートと呼ばれる人たちを保護する方針を採っている企業もあります。これでは真のリーダーに成長するための必要な経験は得られません。そこで、前回ご紹介した『プロフェッショナル養成講座』といった書籍が役に立つのではないかと思っています。(岩崎 卓也)
下図はリーダーシップスキルが時間の経過とともにどの程度増加してたかを表すグラフです。横軸に時間を取り縦軸にリーダーシップスキルを取っています。このような形をS字曲線といいます。最初の勾配は緩やかになっていますね。若いうちはある程度基本を守っていれば、能力が着実に漸増していくことがわかります。そして、ある時間(矢印の部分)を過ぎると勾配が急になります。ここをクリティカルマスと呼び、人はこの急勾配を超えることで本物のリーダーと成長していくわけです。いつまでもクリティカルマスを超えずに能力が漸増し続ける人もいるでしょう。リーダーとして成長するには、急勾配を超えなくてはなりません。
それにはどうしたらよいでしょうか。
リーダーとして成長していくには大量のリーダーとしての経験が必要なのです。別の言い方をすると、ビジネスマンとしての経験が必要なわけです。

図 S字曲線 横軸 時間 縦軸 能力のレベル
※アルファベットのSの字を横に伸ばしたような形になる
経験といっても成功体験では効果は小さいでしょう。むしろ試行錯誤や失敗、マイナス評価を受ける、上司から叱責される、お客様に迷惑をかける、といったネガティブな経験がクリティカルマスを超えるには大切なのです。
クリティカルマスをあげるには、どのようにしたら良いかを考えてみてください。40代から逆算すれば、おのずと20代で何をすべきかがわかるわけですね。20代というのは成功を積み重ねることも重要だと思いますが、失敗もしなくてはいけないのです。
成功。これはラッキーです。しかしながら、成功の後にはトラブルシューティングをすることがあまりありません。他方、失敗はアンラッキーなことですけれども、できなかったとき、多くはトラブルシューティングとリカバリーショットが求められます。失敗対応力をつけるには、トラブルシューティングとリカバリーショットができなければいけません。
このような経験が前回お話したソフトスキルを向上させていくのだと私は思っています。
しかし、すべての企業で必ずしもリーダーシップスキルを上げるために必要な経験ができるとは限りません。なかにはエリートと呼ばれる人たちを保護する方針を採っている企業もあります。これでは真のリーダーに成長するための必要な経験は得られません。そこで、前回ご紹介した『プロフェッショナル養成講座』といった書籍が役に立つのではないかと思っています。(岩崎 卓也)
