2007/10/31

業務スキル習得の偏りがもたらした欠落

DHBR別冊を出します。『プロフェッショナル養成講座』です。20代から30代くらいのジュニア・マネジャーに読んでいただきたい、という思いで作りました。価格は980円、本誌の約半分です。通常、本誌の論文は「である調」で書かれていますが、この本は「ですます調」に変えてあります。翻訳にも再度手を加え、直しています。

主だった論文は3つ。一つは大前研一氏の『ザ・プロフェッショナル』の第一章、プロフェッショナルとは何かという部分が掲載されています。
二つ目はリーダーシップ研究者の大御所による論文です。執筆したのは先日、弊社から刊行した『カモメになったペンギン』の著者でもあるジョン・コッター氏で、「マネージング・ユア・ボス」というボス・マネジメントの話が載っています。
三つ目は『EQ』(講談社)の著者、ダニエル・ゴールマン氏が新刊本を出すにあたり、先に「ハーバート・ビジネス・レビュー」に紹介したEQについての論文です。そのほか、簡単なスキル講座といったものもあります。

最近、目の前の業務スキルに関する本ばかりが目立ちます。もちろん、これらを否定する気は全くありません。必要なことだと思いますが、「あなたの仕事の得意分野は何ですか」、と問われたときに、「時間管理です」「手帳術です」「パソコン、エクセルです」といった答えで良いのか、と私は思うのです。コーチングは百歩譲って良いとしても、仕事関連技術だけが得意な上司の下で働きたくないなぁ、と私は感じるわけですね。

業務スキルをハードスキルとソフトスキルに分けるのならば、パソコンなどを使うことをハードスキルとしましょう。将来を背負って立つ人が必要なものはハードスキルだけではないはずです。組織を率いていくことができるソフトスキルも必要なのです。だとすればソフトスキルの習得にもうちょっと早い段階で取り組むべきことを自覚したほうがいいのではないか。その必要性があるのではないか。これがこの本を作った根底にあります。

そもそも、日本はリーダーシップの教育を開始するのが遅いのです。エクセルの勉強といっしょに、20代から行っても良いのではないでしょうか。若いうちに苦労をすることは大切です。失敗もしなくてはいけないし、辛い仕事もやっておかねばいけません。
先日、大前氏が講演でマキタという電動工具の会社のことを話していました。マキタは今や押しもおされぬ世界の電動工具のメーカーです。彼らはアメリカの市場を開拓するとき、さまざまな苦労をしているのですね。当時、日本からは円を持ち出す額が制限されていました。円がなく仕事ができない状況下、彼らは何をしたのか? ニューヨークで屋台を引いてラーメンを売り、事務所の費用を稼いでいたというのです。今の時代、そういうことはまずありません。もちろん同じことをしろ、とは言いません。しかし、若いうちに試練を与えることがエリート教育なのだ、と企業は教育の位置づけを変えるべきではないでしょうか。とはいえ、まだまだ早い段階でソフトスキルの習得ができるような体系になっていない企業が多くあります。本書は早くに組織を率いていく能力、ソフトスキルを学ぶことに役立つ一冊だといえます。

なぜ早くに学ぶことが必要なのか。理由は人間の成長を曲線で表すとよくわかります。人間の成長を曲線で示すと、どのような形になるのでしょうか。この部分については次回、詳しく説明します。
DHBR別冊、『プロフェッショナル養成講座』の発売は11月9日、本誌発売の1日前です。(岩崎 卓也)

※大前氏の講演録はこちらでご覧になれます。
http://diamond.jp/series/omae_speach/2/?page=1
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2007/10/27

企業文化の変革に成功したテクノロジー・カンパニー

今号の特集のPART I は「リーダーの仕事は変革である」です。IBM、ネスレなどが紹介されています。先日、こちらのブログに書いたリーバイスやセムコもこのパートに掲載しています。今回はもうひとつ、携帯電話が好調なモトローラの事例を紹介しましょう。こちらの記事は元モトローラ社長兼CEO フィッシャー氏に対してDHRアメリカ本誌がインタビューしたものです。

モトローラは携帯電話、トランシーバー、CPU(MPU)などで有名です。1969年には月からの第一声を伝える装置を開発するなど、優れた技術を持ったテクノロジーカンパニーとして存続してきました。科学と技術が日進月歩で進む現代、技術だけでは勝てなくなっています。それはモトローラも同じです。設立者であるガルビン(Galvin)一家が支配してきたところ、生え抜きではないジョージ・フィッシャー社長になり、市場に目を向けなければダメだと言い出すのです。技術の力だけで押していく会社では勝ち残れないと。彼はいくつかの施策を行い、技術志向のモトローラに顧客志向を根付かせていきました。こちらのインタビューでは、単に何を行ったのかという結論だけでなく、決断の背景になった考えが出ています。モトローラの事例は企業文化を変えないと、どんな戦略もうまく行かないことを示すものです。

失敗を許容する企業文化など、企業によって持つ文化はそれぞれ異なりますが、ソフトの資産が充実していないと、どんなに事業計画が素晴らしくてもうまく行かない。PART I の「リーダーの仕事は変革である」では、変革に必要なさまざまな要素が事例の底に存在していると思います。
最近、「徳」の大切さを耳にしますが、そもそもそういう点がしっかりないと、企業はただのキャッシュマシーンになってしまうのですね。私達の日常の半分は会社のことで占められています。人間が働いているなか、スタティックな戦略だけで評価していくというのは少々つらいものがあるとも思いました。(岩崎 卓也)
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2007/10/24

制度を作る柔軟性

前回、「フリート・バンク〜ワーク・ライフ・バランス」の論稿を紹介する際にも書きましたが、日本では新たな制度を取り入れるとき、さまざまな制約がついてまわります。近年、在宅勤務制度を導入している企業が増えました。しかし、導入にあたっては本当に働いているのか、出退勤はどう管理するのか、といったことなど、とかくネガティブなことばかりが話題になります。でも、現実を見れば会社に来なくてもできることは沢山あることは明らかです。普段、私はほとんど会社にいません。家で原稿整理をすることもありますし、外で打ち合わせをすることもあります。会社に来ると、人がいっぱいいてびっくりするくらいです。

最近、ワークライフバランスという言葉をよく耳にするようになりました。アメリカにはコールセンターの会社で、従業員が自宅で仕事をするという方式をとっているところもあります。アメリカには離婚をして、女手一つで子供を育てている人がたくさんいます。彼女達が育児をしながら働けるよう、制度を導入したといいます。

子供が大きくなるまでは、勤務地をどこにするか選べるようにして、優秀な人を温存できる仕組みを持っておけばいいのではないでしょうか。今の時代、“シュフ”は主婦と主夫、2種類いるわけですからワーキングファーザーがいてもいいわけです。要するに、その人の人生観や生活観に基づいて、それに見合った業務を選択できるようにした方が良いのではないかと思います。もちろん、誰でもがどんなスタイルでも良いわけではありません。典型的な例はCEOです。最高経営責任者が在宅勤務というのはできません。

日本企業は制度をちょっといじる程度にとどまっています。もっとドラステックに制度改革をすれば良いのに、と思うときがあります。例えば、3年間、育児に専念してメインストリームから外れた時、もう一回、戻るチャンスを会社が与えられるといった制度をより充実させるべきではないでしょうか。確かに、女性が参画しやすいよう、制度を整備している企業もあります。しかし、現状では、育児で会社を休んだら、そのこと自体が後にマイナスとして降りかかる企業が多くあります。
育児休暇だけではありません。何らかの理由でキャリアパスから外れたとき、復活できるようにすることがひとつとしてありますね。今のようにキャリアパスから外れたら、はずれっぱなしにしておく制度がおかしいと感じます。

もうひとつ大切なのは、制度を作るうえで、制度を悪用する人を作らないための制度設計という発想をやめることです。この間、紹介したセムコの例を読むとそう思いませんか。確かに性善説だけでは成り立たないのよ、って言われてしまえばそれまでです。でも、もう1回性善説でやってみませんか、と私は言いたいですね。(岩崎 卓也)
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2007/10/20

仕事と家庭を両立させたワーキング・マザーの選択

ワーキング・マザーが仕事と家庭を両立させることはたやすくありません。実際に両立している女性達はどのような方法を採っているのでしょうか。今月号の「フリート・バンク〜ワーク・ライフ・バランス」はアメリカのフリート・バンク(現バンク・オブ・アメリカ)の元バイス・プレジデント2名が執筆した論稿です。彼女らは子供を育てながら働いています。かつては、多くのマネジャーがそうであるように、彼女らも私生活を犠牲にしていました。そんな中、子育て上のハプニングに直面するたびに、自身の働き方に疑問を持ち、変えていかなければならない感じていたことでしょう。結果、ふたりが取り入れたのは1つのポストを2人でシェアするワーク・シェアリングというスタイルです。この論稿では彼女たちが自身の経験を紹介しています。

企業において、女性が家庭を両立させるための制度は少しずつ充実してきています。私はこの論稿を読んで、ワーク・シェアリングという選択肢もひとつとしてあるのではないかと思いました。
執筆者のふたりは管理職であるバイス・プレジデントというポストにつき、ひとつの仕事をするのです。一人が働いている日は、もうひとりの人は休日になります。午前と午後、曜日などで分けることもあります。朝、子供が熱を出して会社を休まなければならなくなったときは、もうひとりに電話をして出勤してもらうこともできます。どちらがメインでということではなく、完全に二人三脚なのです。仕事の引き継ぎはボイスメールなどを使っているようです。給料は一人分で、これをふたりで分けます。会社はふたりがどのように働くかは一切干渉しません。

このスタイルをとる前、ふたりは同じような仕事を経験していました。ワーク・シェアリングが可能かどうかは、ふたりの経験や考え方が左右するのも事実です。また、ふたりの仕事は銀行のなかの定型化されたものだから実現できたということもあるでしょう。意思決定がひんぱんに必要な仕事ですと実現は厳しいかもしれません。

ワーク・シェアリングはすべてのワーキング・マザーに適用できるものではないかもしれません。職種など、実現にあたり制限が出てくるとは思います。さらには、日本で実施するとなると、法的なもの、その他いろいろな障壁が出てくるのでしょう。それでも、私は日本企業はこのようなシステムを選択肢のひとつとして取り入れたらよいのではないかと思っています。
働き方について、日本は自由度がないように思う時があります。しかしながら、一人ひとり家庭の事情や仕事に対する考え、人生観は異なっています。多様化された価値観に対応できる制度を作ることが大切なのは皆さんもご承知のことでしょう。より多くの選択肢を用意することが本当は必要なのだと思います。(岩崎 卓也)
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2007/10/17

取材をしたい会社はブラジルに

一度取材してみたい会社があります。それはブラジルにあるセムコという会社です。『セムラーイズム』(リカルド セムラー著/新潮社)という本が出されており、セムコについての詳細はこちらに書かれています。この会社はひと言でいうと、自由奔放なのです。産業機器メーカーですが、日本のメーカーのような工場での服装規定はありません。新興国企業では製品が盗難にあうことがよくあります。しかし、セムコは倉庫にカギをかけることはしません。出張費も自由に使えますし、給料もみんなで決める。

しかも、報酬は11種類もの選択肢があって、その中から自由に組み合わせを選べるようになっているのです。もちろん、固定給とボーナスという形でも良いですし、加えて自社株またはストックオプション、純利益に応じた報奨金といった形で報酬をもらうこともできます。報酬体系が柔軟なため、社員は新しい発想を生み出しやすく、リスクを恐れなくなります。最終的に、一人ひとりが自分の利益だけでなく、会社の利益を最大化することが最善であることに気づくようになるのです。ただし、単に自由なのではありません。財務管理に関しては厳格です。数字に対して非常にうるさいのです。利益が出なければ、ボーナスはもらえません。

多くの制度は悪い人がいることを前提に、作られています。盗みを働く人、仕事をサボる人、そういった行為を抑制するために設けられた規定がたくさんあります。しかし、よくよく考えると、悪さをする人間は全体の中の数パーセントにしかいないのです。セムコはこの数人のために残りの人たちを侮辱したくないと考えます。私はなんとも素晴らしい考え方だと思いました。セムコは悪さをするマイノリティーのためではなく、残りの人を活かすための制度しか作らないのです。

セムコが日本で紹介されたのは90年代半ばのことです。当時、私はこのような経営が成り立つのか、疑問に思ったことも事実です。それから10年以上もの歳月が流れました。先日、私はセムコの業績を調べてみたのです。そうしたら、成長しているのですね。
今月号の特集では企業事例を取り上げています。その中の一つとしてセムコを紹介させていただきました。組織体系など、詳細はこの論稿にあります。
よろしければ、ご一読ください。(岩崎 卓也)
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2007/10/13

グローバル・チャレンジャー100社の戦略

私達はグローバル企業というと、P&GやGEなど、伝統的な欧米企業のグローバル戦略を思い浮かべます。今の時代は、それだけではありません。BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)が定義している世界をまたにかけて躍進する企業、「グローバル・チャレンジャー」について知るとより実感がわくことでしょう。

今号に掲載した論稿、「BRICsプラスの優良企業100社」ではBRICsプラス(中国、インド、ロシア、東欧、ラテンアメリカの18カ国)を本籍とする企業のうち、グローバル・チャレンジャーと呼べる会社100社をリストアップしています。論稿では100社を6つの戦略モデルに分類し、具体的にどのような戦略をとっているのかを解説をしています。

ブラジルの食品加工企業のペルディゴンとサディアは、自国の天然資源を活用した製品をグローバルに展開しています。両社の成長モデルの根幹となっているのは国内における圧倒的な生産ケイパビリティです。さらに、海外でのSCM能力の構築に投資している点などを解説しています。

インドのウィプロ、IT技術者の人材プールには驚かされました。ケタ違いの規模なのです。2005年の採用者数は15,000人以上ともいわれています。しかも採用に至ったのは、0.7%、約200万人から選りすぐられたというから、規模の大きさが他とは違うことをうかがい知ることができます。このほか、中国の海信集団(ハイセンス)、メキシコのセメックス、香港のジョンソン・エレクトリックなどの企業戦略を紹介しています。この論稿を執筆したのはBCGの方、2名です。新興国企業について具体的な戦略を知る上で、優れた論稿だといえます。

論稿の本題から話はそれますが、私はこの論稿を通じて中国、ブラジル、ロシアといった国の“大陸感”といったものを強く感じました。結果的にこの原稿には載らなかったのですが、中国、ブラジル、ロシアといった国は大陸の広大な土地から出でた文化があります。そこには私達“島国”に住んでいるとわからない部分があるのです。私達は大陸、コンチネンタルな価値観を持っていません。日本人の感覚はどちらかというとイギリスのグローバリゼーションが合っているのです。これから先、多くの日本企業は今回の論稿で紹介された企業とより深くかかわっていくこともあるでしょう。そのとき、大陸感という価値観の違いを超えていくことが課題になるような気がしました。(岩崎 卓也)
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2007/10/10

曲がり角でリーバイスは

振り返ってみると、今号では改めて企業文化の重要性を知らされました。とくに強く響いたのはリーバイスの事例を知ったときです。今号ではジーンズの〈リーバイス〉を主力製品とするリーバイ・ストラウス・アンド・カンパニー(以下、リーバイス)の事例を掲載しました。
企業経営を続けていると、曲がり角に来ることはよくあります。変革が必要になっていることはわかっていても、企業文化を変えていくことは容易ではありません。ソフト面での変革を行うのには時間がかかります。オフィスのレイアウトを変えるのとはわけが違います。経営トップは頭を痛めるのです。リーバイスは現在会長職に就いているロバート・ハースが社長だった1985年、MBO(マネジメント・バイアウト)によって、株式を非公開にしています。企業が変革をするとき、privatization(プライベータゼーション)というのは一つの手法として有効なのだと思いました。

リーバイスはMBOを実施した後、「アスピレーション」の起草を行っていきます。これは経営陣と従業員が共有する価値観を定義する一大プロジェクトです。
人間としての尊厳を大切にしましょう。
多様性を尊重しましょう。
彼ら彼女らは原点に戻って、もう一度企業文化を立て直していくのです。アパレルメーカーだからできた部分もあるのでしょう。さらには、MBOを行ってプライベータゼーションを行ったことが価値観の共有といった企業文化にかかわる部分の改革を成功させた根底にあるのではないかと私は思いました。

もうひとつ、掲載されている事例を紹介します。ナイキです。もともと同社はブルー・リボン・スポーツという名前の会社でした。社員のほぼ全員が陸上競技の経験者で、各分野のトップ選手を対象に製品を作っていたのです。ところが、80年代半ば、ナイキの業績に急ブレーキがかかりました。エアロビクス市場、カジュアル・シューズ市場での失敗などの問題を抱えていたのです。ナイキは自問自答をします。そして、マーケティングを忘れていたことに気づき、舵を切っていくのです。
今号に掲載した「マーケティング・フォーカスの転換」はナイキのフィル・ナイト氏(共同創設者兼会長)のインタビューになっています。ここではナイキが企業文化を変えていく様子が明らかになっています。

2007年11月号「一流の経営」は40余社の事例を掲載しました。優れた企業がそれぞれの場面で、どのような経営を行っていったのか。資料性大ともいえる特集になったと自負しております。(岩崎 卓也)

※「DHBR」2007年11月号 10月10日発売です。
一冊からお求めになれます。
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=059691107
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2007/10/06

ベストプラクティスとハロー効果

前回お伝えしたとおり、次号は企業のベストプラクティスを紹介いたします。
「GEがやっているからウチもやろう」
このような言葉を耳にすることはよくあります。P&Gがやっているから、トヨタがやっているから、そのような理由で導入を決断する企業は少なくありません。

GEにはお手本になることが多いのは事実ですが、GEが行っていることの中にも悪い事例はあるのです。たとえ、良い事例だとしてもGEがやっているから、P&Gがやっているからといって導入し、失敗するケースはたくさんあると思います。注意が必要なことなのです。

なぜうまく行かないのでしょうか。一つには企業文化の違いがあげられます。GEが成功したものの中にはGEの企業文化があったからこそうまくいったものもあるのです。GEは21年間かけて計測の文化というものを作り上げてしました。それはあらゆることを数値化していくという徹底した計測主義です。
それなのに、数値化されていることは一般的なことだけ、あとはだいたいカンでわかる、などといっている企業がGEの真似をしてもうまくいくとは思えません。

例えば、360度評価の導入が一つの例としてわかりやすいと思います。人事評価を上司以外にも同僚、部下、顧客など複数の人が行いフィードバックするこの制度、部下に評価の仕方を教えないで実施してしまうとどうなるでしょうか。360度評価の導入したために、従業員同士の人間関係が悪くなってしまうケースも散見されます。
でも、GEはやっています、アメリカでは当たり前です、といった意見におされてしまう。これでは失敗してしまうのです。定性的でとても定量化できないようなものでさえ、何とか定量化していく。このような文化があって初めて360度評価は成り立つと思います。

日本のエレクトロニクスメーカーを真似して失敗した事例もありました。パソコンの生産で日本企業はEMS(Electronics Manufacturing Service)、製造のアウトソーシングやモジュール生産をやるようになりました。この事例はテレビや白物家電にはあてはまらないこともあるのです。むしろ効率性を損なってしまった例もあります。製品の特性を考慮しないとベストプラクティスがワーストプラクティスに変わってしまうわけですね。いたずらに優れた企業のやり方を真似していく。生兵法というのは、こういうことだと思います。(岩崎 卓也)
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2007/10/03

「一流の経営」を特集します

次号の「DHBR」の特集は「一流の経営」です。HBRジャパンが創刊されてから、今年で31年目となります。今回の特集では現在でも通用する企業のベストプラクティスをご紹介します。この31年を振り返って、優れた企業に関する論文をサマライズし掲載しています。ゼネラル・エレクトリック(以下GE)、IBM、ネスレ、P&G 、ナイキなど、46社をご紹介する予定です。

1980年代初頭、GEのジャック・ウェルチは“Steal the best.”と言って、ビジネスやマネージメントに関する世界中の優れた慣行について勉強するように奨励しました。これがベストプラクティスに学ぶことが盛んになったひとつの要因です。その後、日本でもベンチマーキングという言葉が90年代の初め頃によく使われるようになりました。それと同じ頃、ボストンコンサルタントやマッキンゼーが欧米の事例を日本に紹介していき、80〜90年代にかけて良い事例に学ぶということが一般化していったのです。今回はその延長線上にある企画ともいえます。

良い事例に学ぶことは学習の王道だといえます。ただし、本当は失敗に学ぶことこそが役に立つのではないか、と私は個人的に思います。しかし、どの企業も失敗例というのは公にしたがらないものです。失敗した人が企業をクビにならずに働き続けているということも事情としてあるのでしょう。また、敗者復活のチャンスが違う形で与えられること、「身内の恥」はできれば隠したいという部分もあるでしょう。企業内部の事情もあり、公開できないのは仕方のないことかも知れません。でも、バッドプラクティスをもっと共有できるような世の中であれば、もっと社会は良くなるのではないかと私は思うのです。

現状はベストプラクティスに学ぶしかないわけです。でも、そのベストプラクティスを導入して失敗する企業は少なくありません。GEでは「業界を超えてベストプラクティスを探せ!」と言われていました。業界を超えて探すことについては悪くないのですが、導入するときに、他の産業と自分が属している産業の違い、その会社の風土、売っている商品などについてよく検討しなければなりません。ちょっとした違いのせいで、ベストプラクティスが自社にうまくあてはまらないことがあるのです。今回の特集を読む上での注意点は次回、このブログで紹介します。次号の発売は10月10日です。(岩崎 卓也)
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