次号の特集は『「脱」管理主義のリーダーシップ』です。企業は女性、若者、定年退職者に対する経営課題に取組んでいますが、本丸は中間管理職なのです。会社を支えている役割の大きさからいっても、企業が力を入れることは当然です。が、聞くところによるとうつ病が多いのが現状のようです。上司のなかには、昔のような働きぶりを再現できていない、ずいぶんひ弱になったな、と感じている人が多くいるようです。中間管理職はOJTの対象ではないと私は思っていたのですが、OJTが必要で、どのようにして能力をストレッチしていくかということが課題となっています。なかなか再教育が難しい世代です。実際、どういう形で取り組んでいるかというのは、普遍的な課題となっていくと私は感じています。
今日のブログではリーダー、なかでも権限の使い方に関することをふたつ書こうと思っています。ひとつは新任リーダーの話です。
なりたてのマネジャーに対する研修が流行っているようです。若い部下の接し方などを教えているといいます。弊誌バックナンバー2007年3月号に「新任マネジャーはなぜつまずいてしまうのか」という論稿があります。これは新任のリーダーの話で、参考になるのではないでしょうか。執筆者の主張は、権限って会社に与えられるものではなく、部下によって規定されるものであるという点が第一。リーダーは部下によってリーダーにならされるのです。環境によって、リーダーとして認められるのです。つまり、自分がリーダーだと思っているうちはリーダーではないのです。
とくに、その権限の行使の仕方を間違ってしまう例を良く目にします。リーダーになると権限が増えます。それをすぐに行使すると、アメリカでもみんなから嫌われるそうです。極端なことを言えば、権限はみんなから「使っていいよ」って言われてから使わないと駄目だということです。地位と権限を与えられると、本人はその気になってしまう。組織における温度差が上司と部下の間に生じるわけです。その温度差を縮めるように権限を使っていかなければいけない。これらのことがこの論稿に書かれています。
もうひとつは組織のフラット化の話です。フラット化をすると、部下は増えます。階層が減るので部下の数が多くなり、みなくていけない人の数が増えるのです。今まで3人だけ管理すればよかったのが9人もの人を見なければいけなくなる。フラット化を一気に実行すると失敗するといわれています。リーダーの権限が増えるので、どう使っていったらよいかわからなくなってしまうわけです。これが失敗の一因となっているといわれています。
今回はリーダーの権限の使い方に関することをふたつ書きました。特集記事では今回のこのブログとは別の視点から、リーダーシップについて斬り込んだ論稿も掲載いたします。詳細は次のブログ記事で紹介します。(岩崎 卓也)
2007/07/28
2007/07/25
すり合わせ型に適した業績評価
利益の分配および業績評価制度システムを徹底的に突き詰めると、GEのように計測の会社になるのでしょう。これはKPI (key performance indicator 重要業績評価指標)がしっかりしており、管理会計の仕組みがないとうまくいきません。GEはABC (activity-based costing 活動基準原価計算)をさまざまなところで導入しています。
そうすると、部門間でこの電気代についてどちらの部門が担うのか、という話が出てきます。例えば、水道ならば蛇口ごとに使う部署を決めて管理する、といったこともあります。ある意味、本末転倒な議論が起こるのですが、GEのすごいとこはそれを実行してしまうところにあります。
業績評価についてしっかりしていないといけないと申しましたが、敬虔な成果主義の主張はインテグラル・プロセス、すり合わせ型の製品を開発している会社には合わない、といったことが起きる可能性もあります。日本の自動車メーカーに成果主義を入れてもうまくいかないことはよくあります。
ある自動車メーカーは年俸制を導入して失敗しました。その会社はすり合わせ型のものづくりを進めていました。ワイガヤをやり、誰の手柄でもなくチームの手柄であることが優先されるような方法で製品開発をすすめていたのです。このような場合、成果給をやりすぎてしまうと、失敗する可能性が大きいのです。一人に成果を集中させないということ、分散化させるというのはそれぞれ難しいと思います。が、チームの成果をみんなで分配する、プロフィットシェアリングは意外と日本にはなじみやすい成果主義のやりだと思います。
GEのマネジメントはすばらしいことがわかると、みなこれを真似してやろう、思うわけです。ただし、どのような製品を作って、どういうふうに開発するのかによって、マネジメントスタイルは規定されます。それぞれ自社に合ったスタイルを採用することが大切です。東芝時代の西室泰三氏が経営者として優れているのは、ジャック・ウエルチと親交があったけれども、全てを真似しようとしなかった点です。GEは20何年もかけてシステムを作ったわけですから、真似をして導入するのも大変だ、ということがあったのかもしれません。ただ、ベストプラクティスは確かに学ぶことが多いのですが、うのみにしてはいけないのです。優秀な経営者はそのことを良くわきまえているのです。(岩崎 卓也)
そうすると、部門間でこの電気代についてどちらの部門が担うのか、という話が出てきます。例えば、水道ならば蛇口ごとに使う部署を決めて管理する、といったこともあります。ある意味、本末転倒な議論が起こるのですが、GEのすごいとこはそれを実行してしまうところにあります。
業績評価についてしっかりしていないといけないと申しましたが、敬虔な成果主義の主張はインテグラル・プロセス、すり合わせ型の製品を開発している会社には合わない、といったことが起きる可能性もあります。日本の自動車メーカーに成果主義を入れてもうまくいかないことはよくあります。
ある自動車メーカーは年俸制を導入して失敗しました。その会社はすり合わせ型のものづくりを進めていました。ワイガヤをやり、誰の手柄でもなくチームの手柄であることが優先されるような方法で製品開発をすすめていたのです。このような場合、成果給をやりすぎてしまうと、失敗する可能性が大きいのです。一人に成果を集中させないということ、分散化させるというのはそれぞれ難しいと思います。が、チームの成果をみんなで分配する、プロフィットシェアリングは意外と日本にはなじみやすい成果主義のやりだと思います。
GEのマネジメントはすばらしいことがわかると、みなこれを真似してやろう、思うわけです。ただし、どのような製品を作って、どういうふうに開発するのかによって、マネジメントスタイルは規定されます。それぞれ自社に合ったスタイルを採用することが大切です。東芝時代の西室泰三氏が経営者として優れているのは、ジャック・ウエルチと親交があったけれども、全てを真似しようとしなかった点です。GEは20何年もかけてシステムを作ったわけですから、真似をして導入するのも大変だ、ということがあったのかもしれません。ただ、ベストプラクティスは確かに学ぶことが多いのですが、うのみにしてはいけないのです。優秀な経営者はそのことを良くわきまえているのです。(岩崎 卓也)
2007/07/21
豊田市というインテグリティのプロセス
記事を掲載するにあたり、編集者は関連書籍を読みます。「プロダクト・インテグリティすり合わせの製品開発力」に合わせ、私は藤本隆宏先生の書籍を全部読み、一部の本を再読しました。今、改めて読んでおいて良かったと思っています。
これから、藤本先生のご著書をお読みになろうとする方は、『日本のもの造り哲学』をおすすめいたします。英語で出された『Product Development Performance』、(製品開発力)という論文があるのですが、これは『日本のもの造り哲学』が下敷きになっているのです。そこから、10年以上が経ちますが、藤本氏は常に新しいことを行っている方で、『日本のもの造り哲学』は先生自身の考え方を集大成した一冊だといえます。
前回のブログで「製品統合性(プロダクト・インテグリティ)」について説明をしました。藤本氏のいう「インテグリティ」とは、水平統合なのですが、垂直統合的なマネージメントを加えて行うというものです。分業は水平的です。コスト競争力をあげるため、外部も含めてどうハンドリングしていくか、製品開発をするにあたり重要になります。そのようなことも含めて、製品開発に全体を見渡す人がいるかどうかというところは製品の成否を分けるポイントになります。ただし、これは難しいことです。組織図、フローでみると、水平統合になっている組織が、そこにインテグリティを持たせることは容易ではありません。
トヨタは工場、支社がある場所に、トヨタそのものがあるから強い、と言う人がいます。トヨタという会社は豊田市という組織があり、街全体がシステムになっているのです。
言い換えると、トヨタがあるところには、豊田市いうインテグリティのプロセスがあるのです。看板方式というのは、道路の導線とか、全部が揃って成り立つものです。当月号の「トヨタのものづくり哲学」(トヨタ自動車 代表取締役社長 渡辺捷昭氏インタビュー)のなかにも出てくるのですが、一種のシステム系になっています。
トヨタのグローバル生産は各国のトヨタにおいて、構造、生活の再現をしています。BCGのパートナーミーティングというのがプラハ、チェコでありました。ある人から聞いたことですが、チェコにもトヨタがあるそうです。そこには居酒屋まであり、まるで豊田市にいるようだといいます。これが強みになっているのです。
これはレッドオーシャンだからこそ生まれたシステムなのでしょう。そう考えると、レッドオーシャンはレッドオーシャンで面白いのだぁ、と私は感じました。(岩崎 卓也)
これから、藤本先生のご著書をお読みになろうとする方は、『日本のもの造り哲学』をおすすめいたします。英語で出された『Product Development Performance』、(製品開発力)という論文があるのですが、これは『日本のもの造り哲学』が下敷きになっているのです。そこから、10年以上が経ちますが、藤本氏は常に新しいことを行っている方で、『日本のもの造り哲学』は先生自身の考え方を集大成した一冊だといえます。
前回のブログで「製品統合性(プロダクト・インテグリティ)」について説明をしました。藤本氏のいう「インテグリティ」とは、水平統合なのですが、垂直統合的なマネージメントを加えて行うというものです。分業は水平的です。コスト競争力をあげるため、外部も含めてどうハンドリングしていくか、製品開発をするにあたり重要になります。そのようなことも含めて、製品開発に全体を見渡す人がいるかどうかというところは製品の成否を分けるポイントになります。ただし、これは難しいことです。組織図、フローでみると、水平統合になっている組織が、そこにインテグリティを持たせることは容易ではありません。
トヨタは工場、支社がある場所に、トヨタそのものがあるから強い、と言う人がいます。トヨタという会社は豊田市という組織があり、街全体がシステムになっているのです。
言い換えると、トヨタがあるところには、豊田市いうインテグリティのプロセスがあるのです。看板方式というのは、道路の導線とか、全部が揃って成り立つものです。当月号の「トヨタのものづくり哲学」(トヨタ自動車 代表取締役社長 渡辺捷昭氏インタビュー)のなかにも出てくるのですが、一種のシステム系になっています。
トヨタのグローバル生産は各国のトヨタにおいて、構造、生活の再現をしています。BCGのパートナーミーティングというのがプラハ、チェコでありました。ある人から聞いたことですが、チェコにもトヨタがあるそうです。そこには居酒屋まであり、まるで豊田市にいるようだといいます。これが強みになっているのです。
これはレッドオーシャンだからこそ生まれたシステムなのでしょう。そう考えると、レッドオーシャンはレッドオーシャンで面白いのだぁ、と私は感じました。(岩崎 卓也)
2007/07/18
「すりあわせ型」の製品開発
「プロダクト・インテグリティすり合わせの製品開発力」は90年に弊誌に掲載したものを【名著論文再掲】として、当月2007年8月号で紹介させていただいております。今回は新たに新訳を施しました。著者の藤本隆宏氏は東京大学「ものづくり経営研究センター」のセンター長で、『日本のもの造り哲学』の著者としても知られています。
こちらの論文では、日欧米の自動車会社に対する調査結果をもとに、「製品統合性(プロダクト・インテグリティ)」「すりあわせの製品開発」について論じています。ホンダのアコードの開発を事例として紹介しております。私はこの論文を再読し、素晴らしい話だと改めて感じました。今読んでも決して古くないのです。この論文で語られる「製品統合性(プロダクト・インテグリティ)」、これこそがトヨタ、ホンダといった日本の自動車メーカーが持続的成長を実現しているカギとなっているのだとこの論文から読み取れるのです。
「すりあわせの製品開発」というのは、完全な分業ではないところに特徴があります。組織においてもマネジメントにおいても、プロセスがシームレスなのです。例えば、製品エンジニアと生産エンジニアが協力し合い金型などを共同開発する、生産エンジニアが試作初期段階で設計についてテストし問題をフィードバックするなど、このほかにもさまざまなことがあてはまります。製品開発を「すりあわせ型」方式でやっているところが、日本の自動車メーカーの強みなのではないでしょうか。
「すりあわせ型」の製品開発でポイントとなるのが「重量級プロダクト・マネジャー(Heavy weight product manager)」の存在です。設計からデザイン、製造、部品のサプライヤーまで、製品開発に携わる人を統括するような組織、人が日本にはいるのです。軽量級ではなく重量級というところも大切な点です。もちろん、自動車メーカーだけでなく、エレクトロニクスなどの分野においても、重量級プロダクト・マネジャーがいる会社は多くあると思います。雑誌の編集長の場合、文章やデザインだけでなく紙質といった細部にわたり全体をみながら雑誌を作っていきます。そういう意味では、重量級プロダクト・マネジャーに近いともいえます。
他方、外部に製造工程を出し、完全な分業を行うものを「モジュラー型製品」と呼びます。このモジュラー型の製品の開発はアメリカが強いようです。まだ、正式な論文になる前のディスカッションペーパーの段階ですが、日本はすりあわせ型の開発が向いており強いといえるようです。このことについては今後、さらに検証されていくことだと思います。少なくとも、現段階でいえることは、製品開発にはすりあわせ型とモジュラー型のふた通りあり、そのことを認識せずに進めていくと、大きなミスにつながる可能性もあるということです。もちろん、製品によってはモジュラー型のほうが合っているものもあります。とはいえ、日本企業の強みとなる「すりあわせ型」の製品開発。再度理解するにあたり、本論文は有効ではないかとも思っています。(岩崎 卓也)
こちらの論文では、日欧米の自動車会社に対する調査結果をもとに、「製品統合性(プロダクト・インテグリティ)」「すりあわせの製品開発」について論じています。ホンダのアコードの開発を事例として紹介しております。私はこの論文を再読し、素晴らしい話だと改めて感じました。今読んでも決して古くないのです。この論文で語られる「製品統合性(プロダクト・インテグリティ)」、これこそがトヨタ、ホンダといった日本の自動車メーカーが持続的成長を実現しているカギとなっているのだとこの論文から読み取れるのです。
「すりあわせの製品開発」というのは、完全な分業ではないところに特徴があります。組織においてもマネジメントにおいても、プロセスがシームレスなのです。例えば、製品エンジニアと生産エンジニアが協力し合い金型などを共同開発する、生産エンジニアが試作初期段階で設計についてテストし問題をフィードバックするなど、このほかにもさまざまなことがあてはまります。製品開発を「すりあわせ型」方式でやっているところが、日本の自動車メーカーの強みなのではないでしょうか。
「すりあわせ型」の製品開発でポイントとなるのが「重量級プロダクト・マネジャー(Heavy weight product manager)」の存在です。設計からデザイン、製造、部品のサプライヤーまで、製品開発に携わる人を統括するような組織、人が日本にはいるのです。軽量級ではなく重量級というところも大切な点です。もちろん、自動車メーカーだけでなく、エレクトロニクスなどの分野においても、重量級プロダクト・マネジャーがいる会社は多くあると思います。雑誌の編集長の場合、文章やデザインだけでなく紙質といった細部にわたり全体をみながら雑誌を作っていきます。そういう意味では、重量級プロダクト・マネジャーに近いともいえます。
他方、外部に製造工程を出し、完全な分業を行うものを「モジュラー型製品」と呼びます。このモジュラー型の製品の開発はアメリカが強いようです。まだ、正式な論文になる前のディスカッションペーパーの段階ですが、日本はすりあわせ型の開発が向いており強いといえるようです。このことについては今後、さらに検証されていくことだと思います。少なくとも、現段階でいえることは、製品開発にはすりあわせ型とモジュラー型のふた通りあり、そのことを認識せずに進めていくと、大きなミスにつながる可能性もあるということです。もちろん、製品によってはモジュラー型のほうが合っているものもあります。とはいえ、日本企業の強みとなる「すりあわせ型」の製品開発。再度理解するにあたり、本論文は有効ではないかとも思っています。(岩崎 卓也)
2007/07/14
ヒット商品は戦略ミスから生まれる
「ブルー・オーシャン戦略」の良いところは、ある意味、方法論であるところです。これまでイノベーションに関する方法論は、成功確率をあげるものしか存在しませんでした。たとえば特別プロジェクトチームを立ち上げる、クロスファンクションでいろいろな人材を集めるなど、要するに多様性がイノベーションのカギだと言われていました。成功するかもしれないし、失敗するかもしれない。そのなかで確率を上げていきましょう、といったアプローチしかイノベーションにはありませんでした。
もちろん、ツールを使えば誰でもが成功するというものではありません。ブルー・オーシャン戦略も同様、成功確率100%とはいえません。ですが、今月号に掲載した論稿、「ブルー・オーシャン戦略の方法論」の執筆者から説明を受けた限り、確かな方法論ではあると思いました。「ブルー・オーシャン戦略」を方法論として使うコツは既存のストラテジーのフレームワークを否定することがポイントだと思います。たとえば、「セグメンテーションでは需要が増えない」といった考えをするわけです。既存のやり方では、セグメンテーションを切って、細分化し、そのセグメントについて深堀りしてニーズを読んでいました。ところが、これでは、ひとつずつに関しては需要を小さくしているから需要が増えない、そのように否定的な視点で従来からあったものをみていくわけです。
話は変わりますが、ヒット商品というのは戦略のミスから生まれるともいえます。ヒット商品はセグメントを細分化するのではなく、加えることで発生するものなのです。「こんな思わぬお客さんがいたのか! 気づかなかった」という戦略をミスした結果、大ヒット商品が生まれるといえます。
実は、「ブルー・オーシャン戦略」は、そういう戦略のミスを見つけるための方法論なのです。
任天堂のWiiやプレイステーションの話は本論にも書いてあるので詳細はそちらに譲りますが、プレイステーションの設計、開発の方向性というのはセグメンテーションです。どんどんヘビーユーザー向けにスペックを高度化していったわけです。画像がきれい、処理能力が高い、ストーリーが難解というように……。一方、Wiiというのは高齢者まで楽しめるものになっています。それゆえに不要とは言わないけれども、あえてそのハイスペック仕様に背を向けたことが、成功要因になっているわけです。
そうすると、携帯電話の機能をおさえたものとどこが違うのかと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。Wiiはプレイステーションとは違うところに解がある、ということを見つける作業過程が違うのです。具体的にいえば、Wiiはノンカスタマーの声を聞きました。ここがキーになっていたと思います。
これまでは、既存のお客さんのことを知ろうとすることで、いいモノを作ろうとしていました。マーケティングというのは、そういうことだと思います。CRMはまさにそうですね。従来のマーケティングのやり方を否定するわけではないのですが、それはあくまでもレッドオーシャンでの話であって、ライバルとしのぎを削っていく市場での考え方です。
先行者利得を取って、ある一定の市場を一気にとろうとするのならば、ブルー・オーシャン戦略をおすすめしたいわけです。低価格でもいいからカバレッジを最大限に広げて、大ヒットを取りたいというような製品であるのならブルー・オーシャン戦略が向いているのではないでしょうか。
ただし、1番乗りになっても、2番手、3番手が現れ、いずれその市場はレッドオーシャンになります。この点がまた誤解されているところです。ブルー・オーシャンは永遠ではありません。これだけ市場の競争が厳しいわけですから、寿命が1年とか半年ということもあります。それゆえ、前回のブログで申し上げた通り、製品ライフサイクル、ベルカーブの山を左にもってくることが大きな魅力となるわけです。
いままでのマーケティング戦略で予想できなかったことを予想できるツールが「ブルー・オーシャン戦略」なのです。(岩崎 卓也)
もちろん、ツールを使えば誰でもが成功するというものではありません。ブルー・オーシャン戦略も同様、成功確率100%とはいえません。ですが、今月号に掲載した論稿、「ブルー・オーシャン戦略の方法論」の執筆者から説明を受けた限り、確かな方法論ではあると思いました。「ブルー・オーシャン戦略」を方法論として使うコツは既存のストラテジーのフレームワークを否定することがポイントだと思います。たとえば、「セグメンテーションでは需要が増えない」といった考えをするわけです。既存のやり方では、セグメンテーションを切って、細分化し、そのセグメントについて深堀りしてニーズを読んでいました。ところが、これでは、ひとつずつに関しては需要を小さくしているから需要が増えない、そのように否定的な視点で従来からあったものをみていくわけです。
話は変わりますが、ヒット商品というのは戦略のミスから生まれるともいえます。ヒット商品はセグメントを細分化するのではなく、加えることで発生するものなのです。「こんな思わぬお客さんがいたのか! 気づかなかった」という戦略をミスした結果、大ヒット商品が生まれるといえます。
実は、「ブルー・オーシャン戦略」は、そういう戦略のミスを見つけるための方法論なのです。
任天堂のWiiやプレイステーションの話は本論にも書いてあるので詳細はそちらに譲りますが、プレイステーションの設計、開発の方向性というのはセグメンテーションです。どんどんヘビーユーザー向けにスペックを高度化していったわけです。画像がきれい、処理能力が高い、ストーリーが難解というように……。一方、Wiiというのは高齢者まで楽しめるものになっています。それゆえに不要とは言わないけれども、あえてそのハイスペック仕様に背を向けたことが、成功要因になっているわけです。
そうすると、携帯電話の機能をおさえたものとどこが違うのかと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。Wiiはプレイステーションとは違うところに解がある、ということを見つける作業過程が違うのです。具体的にいえば、Wiiはノンカスタマーの声を聞きました。ここがキーになっていたと思います。
これまでは、既存のお客さんのことを知ろうとすることで、いいモノを作ろうとしていました。マーケティングというのは、そういうことだと思います。CRMはまさにそうですね。従来のマーケティングのやり方を否定するわけではないのですが、それはあくまでもレッドオーシャンでの話であって、ライバルとしのぎを削っていく市場での考え方です。
先行者利得を取って、ある一定の市場を一気にとろうとするのならば、ブルー・オーシャン戦略をおすすめしたいわけです。低価格でもいいからカバレッジを最大限に広げて、大ヒットを取りたいというような製品であるのならブルー・オーシャン戦略が向いているのではないでしょうか。
ただし、1番乗りになっても、2番手、3番手が現れ、いずれその市場はレッドオーシャンになります。この点がまた誤解されているところです。ブルー・オーシャンは永遠ではありません。これだけ市場の競争が厳しいわけですから、寿命が1年とか半年ということもあります。それゆえ、前回のブログで申し上げた通り、製品ライフサイクル、ベルカーブの山を左にもってくることが大きな魅力となるわけです。
いままでのマーケティング戦略で予想できなかったことを予想できるツールが「ブルー・オーシャン戦略」なのです。(岩崎 卓也)
2007/07/11
ブルー・オーシャン戦略とポーター戦略論
ブルー・オーシャン戦略について「マユツバ」「アトヅケ」といった声を耳にすることがあります。しかし、このような声が出るのはブルー・オーシャン戦略が誤解されていることのあらわれなのではないでしょうか。2007年8月号の特集は「製品開発力のプロフェッショナル」です。特集のなかでも「ブルー・オーシャン戦略の方法論」は、誤解に対して決着をつける意味でも重要な論稿として位置づけられています。
このブルー・オーシャン戦略が紹介されたのは「Harvard Business Review」アメリカ本誌です。「HBR」はポーター原理主義とでもいいましょうか、ポーターの言っていることを批判するような論文はまず通りません。実は、このブルー・オーシャン戦略というのはポーター戦略論を否定する部分を持っています。このような論文は「HBR」ではまず通りません。従って、ポーター批判の部分は論文の中には現れないのです。これがブルー・オーシャン戦略が誤解されるひとつの理由になっています。
ブルー・オーシャン戦略を理解するには、ポーターの戦略論と比較するのがいちばんわかりやすいと思います。マイケル・ポーターの戦略論の前提は差別戦略とコストリーダーシップは両立しない、トレード・オフの関係にあるということです。ところが、ブルー・オーシャン戦略はこの両者を両立させるものなのです。ここがポーター戦略論と異なる部分だといえます。
製品の時間の経過に伴う市場への浸透度はベルカーブに従います。イメージが湧かない方は、「DHBR」の論稿に図版が掲載されていますので、実物を手にとってご覧ください。新製品が発売されると、新しい物好きの人たちがまずは購入します。徐々に市場に浸透していき、キャズムをこえるところで、ベルカーブは一気に上がっていきます。もちろん、なかには右肩上がりにならずに死滅していくものもあります。このベルカーブを早い段階でいきなりあげるものがブルー・オーシャン戦略だといえます。右のほうに位置している山の頂上をぐっと左に持っていくのです。そんなことができるのか? というご意見もあるでしょう。これらは理論的にもちゃんと合っていて再現性もあります。
このようなことは、単行本の『ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する』やハーバード・ビジネス・レビューに掲載された論稿には載っていないことです。今月号の弊誌に掲載された「ブルー・オーシャン戦略の方法論」では、今まで語られなかった部分についてまで、掟破りともいえる論を展開しています。執筆者である安部義彦氏(金沢工業大学大学院 客員教授)はMBAのとき、INSEADで提唱者であるチャン・キム氏に師事していた人です。ブルー・オーシャン戦略をもっとも正しく理解している人のひとりだといえるでしょう。氏の「ブルー・オーシャン戦略の方法論」によって、今まであったブルー・オーシャン戦略の誤解を正すことができたのではないか、と私は自負しています。(岩崎 卓也)
*「DHBR」2007年8月号は7月10日に発売されました。
このブルー・オーシャン戦略が紹介されたのは「Harvard Business Review」アメリカ本誌です。「HBR」はポーター原理主義とでもいいましょうか、ポーターの言っていることを批判するような論文はまず通りません。実は、このブルー・オーシャン戦略というのはポーター戦略論を否定する部分を持っています。このような論文は「HBR」ではまず通りません。従って、ポーター批判の部分は論文の中には現れないのです。これがブルー・オーシャン戦略が誤解されるひとつの理由になっています。
ブルー・オーシャン戦略を理解するには、ポーターの戦略論と比較するのがいちばんわかりやすいと思います。マイケル・ポーターの戦略論の前提は差別戦略とコストリーダーシップは両立しない、トレード・オフの関係にあるということです。ところが、ブルー・オーシャン戦略はこの両者を両立させるものなのです。ここがポーター戦略論と異なる部分だといえます。
製品の時間の経過に伴う市場への浸透度はベルカーブに従います。イメージが湧かない方は、「DHBR」の論稿に図版が掲載されていますので、実物を手にとってご覧ください。新製品が発売されると、新しい物好きの人たちがまずは購入します。徐々に市場に浸透していき、キャズムをこえるところで、ベルカーブは一気に上がっていきます。もちろん、なかには右肩上がりにならずに死滅していくものもあります。このベルカーブを早い段階でいきなりあげるものがブルー・オーシャン戦略だといえます。右のほうに位置している山の頂上をぐっと左に持っていくのです。そんなことができるのか? というご意見もあるでしょう。これらは理論的にもちゃんと合っていて再現性もあります。
このようなことは、単行本の『ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する』やハーバード・ビジネス・レビューに掲載された論稿には載っていないことです。今月号の弊誌に掲載された「ブルー・オーシャン戦略の方法論」では、今まで語られなかった部分についてまで、掟破りともいえる論を展開しています。執筆者である安部義彦氏(金沢工業大学大学院 客員教授)はMBAのとき、INSEADで提唱者であるチャン・キム氏に師事していた人です。ブルー・オーシャン戦略をもっとも正しく理解している人のひとりだといえるでしょう。氏の「ブルー・オーシャン戦略の方法論」によって、今まであったブルー・オーシャン戦略の誤解を正すことができたのではないか、と私は自負しています。(岩崎 卓也)
*「DHBR」2007年8月号は7月10日に発売されました。
2007/07/07
トヨタ自動車の渡辺社長ロングインタビュー
次月号(2007年8月号)の特集は「製品開発力のプロフェッショナル」です。
イチオシはトヨタ自動車の渡辺社長のインタビューです。全16ページものボリュームがあります。ここまで長いものはそう多くはないでしょう。
社長の渡辺氏が自らトヨタについて語っています。
トヨタの営業利益が2兆円を超えました。また、売上でもGMを抜いたということは皆様もご存知だと思います。為替をどの時点で計算するかによって多少違いが出るようですが、名実ともにトヨタは世界一の自動車会社になったわけです。フォード、GM、ダイムラーを足して、さらに1.5倍ということが喧伝されていますが、渡辺氏は常に品質世界一ということを評価してほしい、とずっと強調されていました。そのために、継続的カイゼンをはじめとするトヨタウエイというのがあるのです。
トヨタのやり方を全世界にあるトヨタ全社に徹底するため、先生の役割を果たす人が社内にいます。そのような人を作って、その人たちがどんどん教えていくシステムがトヨタにはあるのです。これがあるから人が育つのです。しっかりと人を育てなければならない、品質は人にあるという考えが根底にあるのです。
今年創業70周年になるこの学校。対米輸出をはじめて50年になります。トヨタは70年間同じことをやってきました。
数字に結実すると、有無を言わせないすごさを感じさせられます。グローバル戦略、コスト削減のバリューイノベーションプログラムを始める、といったことがインタビューのなかで語られています。そのほか、夢の車に関する話もあります。非常におもしろいので是非本誌を手にとって読んで欲しいと思っています。今回のインタビューはアメリカ本誌、HBRの編集長がインタビューしています。
「僧侶のような謙虚さを持った人だった」
HBRの編集長は渡辺氏について、このように語っていました。(岩崎 卓也)
イチオシはトヨタ自動車の渡辺社長のインタビューです。全16ページものボリュームがあります。ここまで長いものはそう多くはないでしょう。
社長の渡辺氏が自らトヨタについて語っています。
トヨタの営業利益が2兆円を超えました。また、売上でもGMを抜いたということは皆様もご存知だと思います。為替をどの時点で計算するかによって多少違いが出るようですが、名実ともにトヨタは世界一の自動車会社になったわけです。フォード、GM、ダイムラーを足して、さらに1.5倍ということが喧伝されていますが、渡辺氏は常に品質世界一ということを評価してほしい、とずっと強調されていました。そのために、継続的カイゼンをはじめとするトヨタウエイというのがあるのです。
トヨタのやり方を全世界にあるトヨタ全社に徹底するため、先生の役割を果たす人が社内にいます。そのような人を作って、その人たちがどんどん教えていくシステムがトヨタにはあるのです。これがあるから人が育つのです。しっかりと人を育てなければならない、品質は人にあるという考えが根底にあるのです。
今年創業70周年になるこの学校。対米輸出をはじめて50年になります。トヨタは70年間同じことをやってきました。
数字に結実すると、有無を言わせないすごさを感じさせられます。グローバル戦略、コスト削減のバリューイノベーションプログラムを始める、といったことがインタビューのなかで語られています。そのほか、夢の車に関する話もあります。非常におもしろいので是非本誌を手にとって読んで欲しいと思っています。今回のインタビューはアメリカ本誌、HBRの編集長がインタビューしています。
「僧侶のような謙虚さを持った人だった」
HBRの編集長は渡辺氏について、このように語っていました。(岩崎 卓也)
2007/07/04
ワーカーズコレクティブは日本に適している
ワーカーズコレクティブという考え方があります。この組織の特徴は働く人が出資をするところにあります。成果は出資した人みんなでわけ合います。サービス産業には向きませんが、第一次産業と製造業に合います。
もちろん、リーダーもいますし、それぞれ役割がありますので、分配の多い少ないはあります。しかし、役割論的な組織なので、仕事によって給料が高くなったり低くなったりすることは少ないのです。
「この仕事はバリューを生んでいないから給料はやすくする」
といった評価は発生しません。ワーカーズコレクティブの概念はビジネスというシステムにおいて、みんなで持ち寄ったお金で運営しようというものです。私はワーカーズコレクティブは日本に合っているかたちなのではないかと思います。
巨大組織にはできないという声もありますが私はそうだとは言い切れないと思っています。巨大組織は中小企業の集まりともいえます。そもそも、カンパニー制というのも中小企業のような小回りのきく組織を作ることが目的だったのではないでしょうか。給料制度というのは、急には変えられません。チームではわけあう概念が良いと思います。内部留保するかしないかも、ワーカーズコレクティブならば、みんなで決められます。例えば、来年新しいものを買わなければいけない、といったことが発生すれば、内部留保をして、みんなへの分け前は少なくということになります。要するに、互助の考え方なのですね。仕事にどうこうといわず、みんな同じ報酬。助け合うということが前提になっているのです。
組織に関する話題をもうひとつ。それは「村」ですね。村と呼ばれているコミュニティをもう1回見直しても良いのではないかと思うときがあります。村社会はよくないという批判があります。でも、最近の私は必ずしも村が悪いとは言い切れないような気がしています。なぜなら、村社会の方が長期志向になるからです。みんなで分け合うという気持ちになります。
村なら火事があったときなど、みんなでバケツリレーをして火を消すわけです。そういった意味でもリスクに対して、強いわけです。個人主義の名のもとできることはたくさんあります。例えば、取引コストが高くならないので、分業はコストダウンになります。これは個人化が進むのは致し方ないかなという気がします。
確かに、金融業ならば向いています。なぜなら、ハンドリングするものは情報ですから。金融機関はある意味情報会社です。ITが進んで、生産性が上がったのは金融です。この世界は分業し、成果主義を採用し、個人によって淘汰されていくという市場原理が向いていると思います。他方、資本主義でありながら社会主義である村は、周囲とのすり合せを好む方に向いています。日本人に適しているのは後者です。
今、村という概念を再度考え直すのも良いのではないでしょうか。(岩崎 卓也)
もちろん、リーダーもいますし、それぞれ役割がありますので、分配の多い少ないはあります。しかし、役割論的な組織なので、仕事によって給料が高くなったり低くなったりすることは少ないのです。
「この仕事はバリューを生んでいないから給料はやすくする」
といった評価は発生しません。ワーカーズコレクティブの概念はビジネスというシステムにおいて、みんなで持ち寄ったお金で運営しようというものです。私はワーカーズコレクティブは日本に合っているかたちなのではないかと思います。
巨大組織にはできないという声もありますが私はそうだとは言い切れないと思っています。巨大組織は中小企業の集まりともいえます。そもそも、カンパニー制というのも中小企業のような小回りのきく組織を作ることが目的だったのではないでしょうか。給料制度というのは、急には変えられません。チームではわけあう概念が良いと思います。内部留保するかしないかも、ワーカーズコレクティブならば、みんなで決められます。例えば、来年新しいものを買わなければいけない、といったことが発生すれば、内部留保をして、みんなへの分け前は少なくということになります。要するに、互助の考え方なのですね。仕事にどうこうといわず、みんな同じ報酬。助け合うということが前提になっているのです。
組織に関する話題をもうひとつ。それは「村」ですね。村と呼ばれているコミュニティをもう1回見直しても良いのではないかと思うときがあります。村社会はよくないという批判があります。でも、最近の私は必ずしも村が悪いとは言い切れないような気がしています。なぜなら、村社会の方が長期志向になるからです。みんなで分け合うという気持ちになります。
村なら火事があったときなど、みんなでバケツリレーをして火を消すわけです。そういった意味でもリスクに対して、強いわけです。個人主義の名のもとできることはたくさんあります。例えば、取引コストが高くならないので、分業はコストダウンになります。これは個人化が進むのは致し方ないかなという気がします。
確かに、金融業ならば向いています。なぜなら、ハンドリングするものは情報ですから。金融機関はある意味情報会社です。ITが進んで、生産性が上がったのは金融です。この世界は分業し、成果主義を採用し、個人によって淘汰されていくという市場原理が向いていると思います。他方、資本主義でありながら社会主義である村は、周囲とのすり合せを好む方に向いています。日本人に適しているのは後者です。
今、村という概念を再度考え直すのも良いのではないでしょうか。(岩崎 卓也)
