2007/04/27

「できない」とは言わない新連載

7月号(6月10日発売号)から新しく連載が始まります。執筆するのは弊社論説委員 湯谷昇羊、前「週刊ダイヤモンド」の編集長です。内容はオムロンの創業者、立石一真氏の評伝になります。1991年に亡くなっているので、30代の方のなかには立石氏を知らない人もいるでしょう。他方、40歳過ぎている方はほとんどご存知なのではないでしょうか。

オムロンは京都の会社です。立石電機製作所から立石電機になり、そのときの本社所在地が御室(おむろ)であったことから「オムロン」という社名になったと聞いています。京都の祇園に行くと、オムロンではなくいまだに「一真(いっしん)さん」と呼ばれているそうです。それだけ、京都という地域において、立石電機というのは大きな影響を及ぼしていると言えます。

湯谷が言うには、立石氏は50歳を過ぎてから従業員を100倍にし、売上高を1000倍にした人だそうです。立石氏を尊敬する人はとても多いです。それはなぜかというと、ただ単にベンチャー精神が旺盛だということではありません。例えば、オムロン太陽電機株式会社(現オムロン太陽株式会社)の創設があります。
この会社は重度の障害者のための企業です。左手のない人には左手がなくても右手で作業ができるようにラインに立つ人からラインを設計しているところに特徴があります。設立後、30年以上たちますが、単体決算で黒字を続けています。もちろん人件費が安いことが一因としてありますが、それでも連続して黒字になることは容易ではありません。

立石氏は「最適化社会」を掲げています。太陽の家といわれる障害者のための工場はソニーなど、ほかの会社も持っています。実は、立石電機の呼びかけで重度障害者が働く雇用の場を作っていったのです。
自らが成長をとげなければいけないと言っていた時代に、社会性の高いことを行ったという意味でも立石氏は尊敬されているのです。

立石氏はドラッカーとも交流がありました。いずれご紹介する予定でいますが、まだ若い頃のドラッカーと一緒に写っている写真があります。私は最初見たときに、ドラッカーだとわかりませんでした。体格の良い外国人といった印象でしかありません。そのくらいドラッカーが若いのです。ドラッカーはオートメーションに関する本を書いているのですが、オートメーションの分野においての先達はオムロンなのです。そのようなことでふたりは交流があったのでしょう。

最後にひとつ。立石氏には嫌いな言葉がありました。これは「できません」という言葉です。簡単にできないという人が立石氏は嫌いなのです。連載のタイトルは決まっていませんが、「できません」がキーワードになるかもしれませんね。〈岩崎 卓也〉
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2007/04/25

待てない若者

今月号の特集には『ニート』『仕事のなかの曖昧な不安』などの著者、玄田有史氏が「あいまいさを受容する力」という論文を寄せてくださいました。このなかで氏は、職場において効率化が求められ、あいまいさが排除されつつある現状について問題を指摘しています。

論文の中で、玄田氏は「今の社会が待つことをしなくなった」と言います。
〈だれでもが携帯電話を持つようになって、駅では待ちぼうけを食らうことがなくなった。カードで買えば欲しいものもすぐ手に入る。でも、その分、何かを待つことをしなくなった。したがって、未来に期待を持つこともない。〉
このように述べています。

特に、私は若者の中には待てない人が多いと感じています。待てないので、成功を早く手にしたいと考えているのです。今、日本では外資系金融、IT企業への人気があります。若者は金融やIT企業の分野で早期にサクセスすることを望んでいるのです。しかし、これは問題です。ITと金融はアメリカが勝っている分野で、日本は勝てないでいます。もちろん、車が好きだから自動車メーカーに入りたいという人がいるのも事実です。でも、給与や企業ブランド価値の高いところに多くの若者が流れているのです。

空洞化の問題が議論されていますが、私は優秀な人材、イコール、有名大学の卒業生という価値観を変えていかなければならないと思います。最近では手に職をつけた人たちに対する求人数が増えています。大工さん、料理人なども増えています。彼ら彼女らは学歴に関するしがらみもなく、冒険をしやすい、そして新しいことにチャレンジしやすいといったメリットがあります。学歴に関係なく、非常に優秀です。私はこのような人たちとコラボレートできて、新しいものを生み出していく人たちが今回特集した「クリエイディブ・クラス」なのだと思いました。(岩崎 卓也)
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2007/04/20

新しい人材論を考える

今月号の「社員力の論点」にも書いてありますが、企業の人材活用について意見が交わされていますが、いくつかの論点が抜け落ちています。東京大学の藤本隆宏先生がおっしゃるように、日本はモジュール生産のような分業型事業よりも刷り合わせ型の事業に強いのです。このような事業では、他部門との調整、社内人脈がないと大きな仕事ができないということになります。

また、自動車などの産業では安全性の重視、初期投資の金額の大きさといった点で、入社してすぐの人たちだけで開発を進めるのはリスクが大きい。その一方で、ゲームソフトの制作やIT系の事業ならば、社内人脈はさほど重要ではありません。

「googleは日本企業と違って若手が活用されている」という言葉をよく耳にします。私が思うに、これはIT事業が生まれてから月日が経っていないことをあまり考慮していない発言だと思います。事業には若い人たちに向いたものとそうでないものがあるのです。ただ単純に日米を比べるではなく、日本企業の事業の特性を加味したうえで議論をするべきだと思うのです。

必ずしも、若手を活用することだけにこだわる必要はないのではないでしょうか。マーケティングでは新規の顧客を開拓するより、既存の顧客とのリレーションシップを深めロイヤルティを向上させることの大切さを説いた論文は多数あります。この考えは人事にも応用できると思います。顧客を社員と置き換えると、ワーキング・マザーや団塊の世代を積極的に活用すること、この部分にお金をかけることの重要性が明らかになります。

ただし、人事では人口構成を考慮に入れなくてはなりません。ある意味、働いている人はすでに定年で退職した人の年金の稼ぎ手ですから、一部の年齢層ばかりに重点を置けないというのもわかります。他方、ポストの問題も存在します。年功序列を前提にしてできた制度が年金や昇進ポストなどです。年金に関しては日本版401kがより進むことで変わってくる部分もあるような気がします。
欧米の借り物にならない新しい人材論を考える上で、「社員力の論点」は参考になるでしょう。(岩崎 卓也)
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2007/04/17

新しい都市発展の要因

今月号の特集「クリエイティブ資本主義」で私が最も面白いと思ったもののひとつはリチャード・フロリダ氏の都市の成長についての論です。経済学の定説では、産業が発展するところに人が集まり、集まることで都市の成長を速め、生産性を上げていくといわれていました。これは産業誘致が都市を発展させるという考えです。

DHBRによる取材記事「『クリエイティブ・クラス』とは何か」の中で、リチャード・フロリダ氏は〈その都市のクリエイティブ経済は、アーティストやゲイなどが多いと繁栄する〉と言います。かつて、シリコンバレーに最も近い大都市、サンフランシスコは社会的、文化的なクリエイティビティ、ヒッピー、ボヘミアンなど、ほかとは違った人たちに対してオープンな場所だった。これが都市の発展に繋がったというわけです。これまでは金の木がなるところに人が集まると考えられていたわけですが、必ずしもそうではない、と言っているところに彼の主張の面白さがあると感じました。

優秀な人材は必ずしも産業が発展しているところに行きたいと感じるわけではないのです。環境、安全、気候、そして自治体の政策といったことによって住む場所を決める傾向にあるのです。フロリダ氏によると、現在、シリコンバーレーの人気はかつてあったほど高くないといいます。アメリカは入国するのが困難になり、評判を落としたのです。今はスウェーデン、フィンランドなど、クリエイティブ・クラスにとって、自分の持っている個人的な力が制約なく発揮できる土地に人気が集まっているようです。

フロリダ氏は日本には素晴らしい長所があるとしながらも、オープンさの欠如が問題。スカンジナビア諸国をモデルにすると良いとアドバイスします。「クリエイティプ・クラス」の概念には、世界的なスポーツ競技を自分の都市で行う、あるいは公共工事を行ってお金を落とすといった、従来の都市発展モデルから脱却するためのヒントがあるように私は思います。(岩崎 卓也)
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2007/04/14

ワーキング・マザーの能力を活用すること

「社員力の論点」に込められたメッセージのひとつには、定年退職者の再活用と、今まで未活用にしてきたワーキング・マザーの活用が重要だということだ。と、前回、書きました。
ワーキング・マザーの多くは妊娠出産によりおよそ3年間、充分に動けない時期があります。このことで、企業は残りの20年以上の価値を棒にふっているという見方ができるのではないでしょうか。

確かに、子供が生まれた後の数年間は前線に出られないので、ナレッジが衰退するのではないか、という向きがあるのも事実です。他方、企業は出産、子育て中でも女性が前面に出られるように、支援すれば良いという考えもあります。それには、在宅勤務を推進するなど、企業のインフラを整えることがひとつとしてあると思います。ただ、例外を嫌う日本社会において、導入をするにはいくつものハードルがあるでしょう。
今月号に掲載した「女性、そしてワーキング・マザーの能力を殺すなかれ」(執筆者は経済評論家、ムギ畑 主宰者 勝間和代氏)では、〈マイノリティを活用したほうがパフォーマンスの向上につながることは、さまざまな調査によって実証されている〉とあります。これからの企業はワーキング・マザーをどう活用していくかが重要な課題となっていくでしょう。

近年、すぐ辞めてしまう若者の勤労意識が問題視されています。私は若年層が3年で辞めてもいいと思っています。人は自分で動機付けられなかったら、変わらないのです。まわりの人間は環境を整えることはできますが、これが限界なのです。大切なのは、辞めた人を歓迎する制度を整えることなのではないでしょうか。すでに、アメリカでは制度を採用している企業があります。
若年層が3年で辞めていく会社が必ずしも悪い企業だとは思いません。辞めた若者がほかの企業で働き、数年後に成長してもとの会社に戻る。これもひとつの形として、あってよいのではないでしょうか。私は若年層が4年目も会社にいるようにする仕組みを作るよりも、老齢者とワーキング・マザーをより活用できるよう、力を注ぐべきだと思っています。(岩崎 卓也)
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2007/04/11

今まで未活用にしてきた人材層

高齢化が進む日本において、これまでとは違う人材活用の思想と実践が求められつつあります。次号では、「社員力の論点」として、8名の方に「新しい人材管理論」についておうかがいしました。東京大学 社会科学研究所 教授 玄田有史氏、慶應義塾大学 商学部 教授 樋口美雄氏、人事コンサルタント 城繁幸氏などが登場します。

新たに重要になってくるのは、これまで「非戦力」とみなされてきた人材層の活用です。具体的には、老齢者と女性の活用があります。なかでも高齢化の問題は深刻です。国立社会保障・人口問題研究所、一般人口統計によりますと、日本では2007年に65歳以上の老齢人口の総人口に占める割合が21%を超えます。総人口は2050年、1億人をきります。女性の平均寿命は90歳を超え、1世紀近く生きることになります。昨年12月、私はこのデータを見て愕然としました。

「社員力の論点」のなかで、樋口先生は70歳定年について、いずれ議論しなくてはいけないと言います。高齢化のスピードに比べ、日本企業の高齢社会に対応するスピードは明らかに遅い。ここまで来ているとなると、70歳定年の議論というのは念頭に置くべきことだという時代になったのです。

若者が戦力になるかならないかは、その会社における文化や教育のシステムなどによります。タレントを獲得するという意味では外資が圧倒的に強いわけですから、優秀な人材が最終的にふるいにかけて残るのかどうか。新卒者を採ることは、リスクが高いといえます。トヨタが新入社員を3000人採ったからといって、全員が優秀な人だとは限らないのです。このような不確実な投資をするべきかどうか、考えさせられるところです。

新卒者採用、中途採用などを考えると、やはり定年退職者の再活用と、今まで未活用にしてきたワーキングマザーの活用が重要だと気づかれるでしょう。定年退職者とワーキングマザーは会社に対するロイヤルティが高い。さらに会社の不文律もわかっているので、いちから教育する必要はありません。これは若者社員との大きな違いです。会社に対するロイヤルティの高さを若い人に多く求めるのには無理がありますから。
その一方で、定年退職者やワーキングマザーは社会人としての名刺の出し方などはわかっているので、教える必要がないのです。まずは定年退職者とワーキングマザーは活用すべき人材だということがいえます。(岩崎 卓也)
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2007/04/06

ダボス会議、世界IT報告書、そして第一位

世界経済フォーラムが主催するダボス会議には、世界各国から政治家や経営者が集います。07年版「世界IT報告書」のなかで、情報技術(IT)を経済発展や競争力強化に活用している国・地域の順位発表がありました。1位はデンマークで、米国は7位、日本は14位にランクされています。

次号では1位になったデンマークに関する論文、「デンマークのイノベーション政策」を掲載します。デンマーク政府は政策としてイノベーション戦略を採用し、取組んでいます。デンマークは他国同様、従来型の技術推進戦略を行ってきましたが、国土も資源も限られているため、これまでのやり方を断念せざるを得ませんでした。

05年、コペンハーゲン・ビジネス・スクールに開設されたデンマーク・ユーザーセンタード・イノベーション・ラボで活用されているのはMITで考案された方法です。私個人の考えとしては、MITのプログラムがそのまま日本にとって使えるものであるかは別だと思っています。具体的にどのようなプログラムを使うかはその国に適したものを選べばいい。従来型の技術推進戦略からパラダイム転換をして、新しい国家戦略を構想しているところにポイントがあるのでしょう。

「ハーバード・ビジネス・レビュー」アメリカ本誌では、毎年世界経済フォーラム(ダボス会議)と共同で、ブレークスルー・アイデア・リストを作成しています。今年も20のコンセプトが選ばれました。DHBRでは、次号から3回にわたって紹介していく予定です。次号はデンマーク政府の取り組み以外にも、「ハリー・ポッター型マーケティング」、「いまや日本は『起業家国家』でもある」、「数学でイノベーションを生み出す」など、計6本を掲載します。(岩崎 卓也)
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2007/04/04

『クリエイティブ・クラスの世紀』に込められたメッセージ

イノベーションを生み出す力がある人たち、クリエイティブ・クラスがこれからの時代、重要になってくると前回のブログで書きました。また、クリエイティブ・クラスはナレッジ・ワーカーの置き換えではないともいいました。もうひとつ、クリエイティブ・クラスについて語るのなら、このクラスは貴族のように生まれながらに与えられたものではなく、自分で勝ち取るものだということも特徴のひとつなのです。

クリエイティブ・クラスはアーティスト、建築家、デザイナー、そして編集者やライター、さらにはトヨタの生産現場にいる生産技術系の方なども含まれます。このような仕事をしている人のなかにも一流、二流とランクがあるものです。本当のクリエイティブ・クラスというのは一流の人を指すのです。属しているだけでなく創造ができなければなりません。誰でもがこれからのイノベーションの担い手であるクリエイティブ・クラスであるわけではありません。編集者だからすべてクリエイティブ・クラスではないのです。

話は変わりますが、このクラスをリチャード・フロリダが発見したということは非常にユニークなことです。アメリカは移民の国で、移民がイノベーションのダイナニズムを担ってきたのです。アメリカのIT産業では、インテルのチップをインド人が作るといったこともありました。ハリウッドのアニメ制作を中国人が担っていた部分も多くあります。

ところが、911(同時多発テロ)以降、移民のビザ発給手続きの煩雑化や制限が起こりました。その影響で、アメリカは移民のダイナニズムが細ってしまったのです。ビジネススクールを志願する留学生は減り、国内へ流入する数よりも流出する数のほうが多くなりました。これまで、イノベーション立国として生きてきたアメリカが細っていく可能性すらあるのです。
このような現状をリチャード・フロリダは『The Rise of the Creative Class』の後に発行した『The Flight of the Creative Class』で述べています。今月、この本の日本語訳を弊社より刊行いたします。『クリエイティブ・クラスの世紀』(リチャード・フロリダ著、井口 典夫翻訳)。よろしければご一読を。(岩崎 卓也)
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